スサ
2024-11-15 19:08:31
1535文字
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【ゲ】みかんウォーズ

幽霊族父子+水の蜜柑をめぐるほのぼの小話です
カプではないけど距離は近いです

 冬の定番といったら炬燵に蜜柑だ。
 水木は適当な蜜柑をひとつ手にとると、男らしい頓着のなさで皮をむいていく。対面では白髪の大男が興味深そうにそれを見ていた。普段を考えれば一緒にむき出しそうなものだが、大男、ゲゲ郎は黙って水木が皮を剥くのを待っている。
 そして水木の膝にはちんまりと幼子がおさまり、その子もまた水木の手元を見ている。卓の端に両手をつけて。
ン」
 白い筋もほとんど取らず、適当にひょいと口に放り込むと、水木はムゥと眉をひそめた。そしておもむろに、皮をむいた蜜柑を対面のゲゲ郎の前に押し出す。
「やる。栄養があるぞ」
「うむ。ありがとうの」
 ゲゲ郎は澄ました顔で礼を言うが、その間に水木はまた別の蜜柑を剥き始めた。今度は当たりだといいんじゃが、とすっぱい蜜柑を口に放り込みながらゲゲ郎は考える。
 野生の柑橘より、それでも甘くやわらかく、種もない。
!」
 先ほどと同じように一房、水木は口に蜜柑を放り込んで、今度は眉がぱっと輝いた。わかりやすい。ゲゲ郎は微笑んだ。
「鬼太郎、お口、あーん」
 自分のためにはついぞしなかったのに、丁寧に筋から何から取ってやり、何なら薄皮まで破いて、水木は鬼太郎の口に蜜柑をもっていく。幼い鬼太郎は目をパチパチした後、あーん、と言って口をあけた。おりこうさんだ。
 水木は目をとろけんばかりにたわめて、そっと蜜柑を小さな口に放り込む。もちゃもちゃと咀嚼した後幼子がにへっと笑うのを見れば、さらにその顔は輝いた。
 そうしてせっせと皮を剥いてやる水木を見ながら、ゲゲ郎は何やらにわかに甘くなったような気がするすっぱい蜜柑を食べ続けた。

 冬になると、必ず一度はその話になるのだが。
「もう、蜜柑の皮くらい剥けます、自分で」
「知ってるけど俺がやりたいんだよ」
 さすがに膝にのせられるのは拒否したが、水木は昔のようにせっせと蜜柑の皮を剥き、鬼太郎の口に放り込む。熱心な親鳥のように。
 取引先からもらったんだ、すごい甘い蜜柑らしいぞ、と今も働く水木はウキウキしている。すっぱい蜜柑は昔に比べて格段に減り、今日などは特別に良い蜜柑なので余計にそうだったから、ゲゲ郎も甘い蜜柑を先ほどから既に二つばかりは頂戴している。
「ほら、鬼太郎。あーん」
……………
 鬼太郎は羞恥心を堪え、逆らわず口をぱかっと開く。そうすると水木が嬉しそうに目を細め、甘いぞーと言いながら蜜柑を押し込むのだ。
 なんじゃ?これ。
 ゲゲ郎は微笑ましいような、何とも言えないような気持ちで友と息子の様子を見守る。しかし、手持ち無沙汰を紛らわすように3個目の蜜柑に手を伸ばした時、こちらを見ている様子のなかった水木がパチンと手をはたいて止めてきた。
 これには父子共に驚いた。何ならゲゲ郎は少しショックだった。が。
「夕飯はいらなくなるだろう。2個までにしておけ」
…………う、うむ」
「それに蜜柑食べ過ぎると黄疸になるぞ」
「ならんわ」
 親のように真面目な顔で諭してくる友に、ゲゲ郎は思わず口を尖らせた。その様子に鬼太郎が吹き出したのがわかって、むう、と父は腕組みする。
 しかし水木は譲らなかった。
「お前、ゲゲ郎、忘れたのか?今夜は焼肉なんだぞ」
「やきにく」
「腹減らしとけよ。いい肉いっぱい食わせてやるんだから」
 わかったか、と言い放つ水木は輝いていた。
「みじゅき〜〜!」
「バタバタするな、埃がたつだろ! 鬼太郎はこれ食べていいからな」
 再び蜜柑剥きを再開した水木に、鬼太郎の「えっ?」という戸惑った声と、ゲゲ郎の「わしには?!」という抗議が寄せられたが、男水木の決意はけして揺らがないのであった。