まきわ
2024-11-15 15:51:01
1705文字
Public
 

繋ぐもの

創後クロリン
リィンくんの部屋にある50ミラの話です

クロウが帰郷し、久々に一緒に過ごす時間を持てた二人はとりあえずということでリィンの寮の部屋に戻ることにした。
招き入れられた部屋を見回してクロウは懐かしげに笑った。
「なんか学生時代と雰囲気そんなに変わらねーな」
クロウの荷物を受け取って端に据えつつ、リィンも微笑んで返す。
「まぁさほど趣味なんかも変わってないしな。そんなに俺自身変わってないつもりだし。成長はしてると思いたいけど」
「それについてはオレがお墨付きをくれてやるよ。ん?」
話しながらリィンの机に視線を向けたクロウの眉が寄せられる。
何かと思って目線の先を追うと、並べられた写真立て、そしてその前にそっと置かれた二つの硬貨が目に入る。
不審なものは、ないはずだ。
「どうかしたか?」
「いや……
怪訝そうに眉を寄せながらクロウは並べられた二つの硬貨に手を伸ばす。
「なんだこれ」
「50ミラ硬貨だぞ」
「そりゃわかるっつの!そうじゃなくいや、百歩譲って一つはわかる。なんで二つあんだよ」
両手に一枚ずつ持ってリィンの眼前につきつけると当のリィンは不思議そうにきょとんと首を傾げた。
「後夜祭に返してもらっただろ。あれと、あと黒の工房で俺がまだ暴走してる時にくれたやつだな。なくすなって言ってただろ?」
「いや言った、言ったけどもよ……いやこれ悪いのオレか?」
頭を抱えるクロウに苦笑して、リィンはコインを持ったままの彼の手を自身の手で包んだ。
どこで途切れてもおかしくなかった俺達の繋がりを間違いなくあの時の、50ミラに纏わる約束が留めてくれてたと思ってる。正直、素直に気持ちを伝えられなかった間は利子って言葉を言い訳にしてたと思うしな」
「それはまぁ、そうだけどな」
握った大切な人の手をリィンはそっと自分の胸元へ引き寄せた。
「今は利子なんて言葉を使わなくても俺はちゃんとクロウにわがままが言えるし、クロウも俺を助けてくれる。だけど俺にとってはすごく大切な、クロウがくれた、クロウとの繋がりを示すものなんだ。だから関係が変わろうとなくすつもりも使うつもりもないよ」
穏やかにほほ笑むリィンとは対照的にクロウはまだ複雑そうな顔でぐう、と呻いた。
「けどよただの普通のコインだぞ!それならネックレスでも指輪でも首輪でも下着でもなんでも欲しいものをやるって!」
「後半のは絶対いらない」
呆れを含んだ半眼で睨まれてクロウは口笛を吹くしぐさとともに目をそらした。
「首輪と下着はともかくもらえたらそれはそれで嬉しいけど、それとこれとは話が別だ。クロウからもらったものは全部俺にとっては大切なものだし、新しくもらったからって前のものを捨てる理由にはならない。それともクロウは俺が何かあげたら前にあげたものは処分するのか?」
「するわけねーじゃん」
「お前な
まったく悪びれずに返されて溜息をつく。
その様子にクロウは笑みを漏らしてリィンの手を握り返した。
二人の両方の手の中に一枚ずつ50ミラコインがあって、そこに二人分のぬくもりが移っているのを感じる。
「わかったよ。別に俺にとってもあの時の50ミラのやり取りは大切なものってのに変わりはねーしな。何より確かに利子って言葉を言い訳に使わせてもらってたのも事実だしな」
うん」
理解を示されて、嬉しそうにリィンははにかんだ。
それを確認して、クロウはリィンの手に硬貨を乗せて手を離した。
「よし、んじゃせっかくだしそのコイン二つが入るような飾り箱でも見繕うか。せっかくだしオーダーメイドでもいいな」
「え、ええ!?何もそこまでしなくても
「クク、いいじゃん、利子として受け取っとけよ」
ずるいぞ」
拗ねたように見上げると悪戯っぽい顔でクロウが笑う。
「いやーこれからも利子って言葉は便利に使えそうだぜ」
「俺がこれで完済だなって言えば使えないぞ?」
挑む目つきで返すと、同じく不敵な笑みが返ってくる。
「言う気、あるのか?」
「いや、全く無い」
一瞬の沈黙のあと、同時に吹き出して笑いあう。
しばらくの間、そのまま密やかな二人だけの笑い声が部屋に響いていた。