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まきわ
2024-11-15 15:39:40
2224文字
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手紙
クロリン書いてみよう!って決めて10年ぶりに書いたのがこれ
創後で旅先の先輩からの手紙をリィンくんが読んでるだけの話
寮に戻って習慣通り郵便受けを開くと、シンプルだが造作にセンスの感じられる封筒がぽつんと入っていて思わず頬を緩ませた。
差出人を確認するまでもなくなんとなくわかってしまう、そのことにもどこか喜びを感じながらいそいそと封筒を取り出した。
「
…
やっぱり」
名前と、投函した国、街の名だけが記された裏書きを見て目を細める。
すぐにでも開いてしまいたい気持ちになったがどうせならゆっくりと堪能したい。
逸る気持ちを宥めて自室に戻ろうと振り返ると食堂から出てきた生徒達と目が合った。
「あ、リィン教官お疲れ様です。
…
それ、クロウさんからの手紙ですか?」
担当しているⅦ組のユウナ、クルト、アルティナの三人がそれぞれに会釈して、その内ユウナが目ざとくリィンの手元の封筒に気付く。
「うん、そうなんだ。今はオレドの方にいるみたいだな」
「意外とマメですよね。ちょくちょく手紙が届いているような」
言葉は褒めているのにアルティナのアルティナの表情はどこか不満げにも見える。
どうにもリィンのパートナーを自負するアルティナにとってクロウはライバルのように思えるらしい。
「決まったタイミングってこともないんだが
…
書きたいことがある程度たまったり、旅先で撮った写真がある程度の量になったら送ってくれてるみたいだ」
「
…
むむ」
トイカメラでの写真を最近の趣味にしているアルティナは更にライバル心を燃やしたようだ。
リィンからしてみれば二人ともそれぞれ性格に合ったそれぞれの魅力のある写真を撮ると思うのだが。
「けど古風ですね。Ⅶの輪があるから通信もいつでもできると思うのですが」
クルトの言葉にリィンは屈託ない笑顔を向ける。
「通信?してるぞ」
「え」
「通信もちょくちょくしてるし、あぁ絵葉書が届くこともあるな。そろそろ部屋を圧迫してきてるからもう大丈夫だと言ってるんだが、小包で土産ものが届くこともあるし」
年齢の割に、そして結構したたかなところがある割に無邪気な笑顔で言われて三人は思わず揃って呆れた表情を浮かべた。
「
…
まぁ、その、仲良しですごくいいと思います」
総評、といった感じでユウナがなんとかまとめるとリィンは気恥ずかしそうに頬をかいた。
「ありがとう。じゃあ俺は部屋に戻るから。三人も夜更かししないようにな」
「はぁい。おやすみなさーい」
階段を上がっていく担当教官の背を見送って、クルトが溜息をついた。
「
…
なんというか、クロウさんって結構」
「まーリィン教官が嬉しそうなんだしいいんじゃない?今までが今までだったんだろうしね」
「
…
ふう。リィン教官を寂しがらせるよりはいいですが」
微笑ましいような、呆れてしまうような、それでもなんだか穏やかな気持ちで三人は改めて階上を見上げた。
部屋に戻ってコートを架けるとリィンは座る間も惜しんで手紙を開封した。
中からは数枚の便せんと写真がいくつか。
写真を机の上に並べてから、リィンは便せんを開いて目を落とした。
彼が旅に出てから何度か受け取った手紙で見慣れた筆跡でクロウの近況が綴られている。
経験した出来事が面白おかしく描かれていて、自然と頬が緩んでしまう。
離れているから、クロウが何を考えているか、感じているか、常には知ることができない。
それでもこうやってできる限り自分のことを伝えようとしてくれるのが嬉しい。
『同封した写真はオレドの名高い麦畑ってやつだ。中心部のあたりは結構開けてたがやっぱ総じて田舎って感じるとこが多いな。
ま、帝国も端の方行きゃそんなもんだけどな』
写真に目を向けると実りの時期だからか見事な金色の絨毯が風に揺れている様子が表現されている。
ケルディックのあたりも穀倉地帯として有名だが、規模がまるで違うように見える。
(ここで、どんな風を、匂いを感じたんだろう。
…
本当なら、一緒に並んで見られれば
…
)
それでもリィンには教官の仕事を投げて彼に同行することはできない。
少し切なく想いながら手紙に目を戻す。
『麦畑は本当に見事だったから、お前と一緒に見られたらいいのにって思わず思っちまった。いつか行けたらいいよな』
続いた文面に目を瞠る。
同じように思ってくれていたのだ。
胸を衝かれたような気がして目頭が温かくなる。
(
…
離れていても、ちゃんと繋がっている)
お互いを思いあうこと。そしてお互いの存在を生きていくための糧にすること。
それがきっと、本当の意味で共に在るということなんだろう。
「
…
ふふ」
どうしようもなく嬉しくなって笑みが零れる。
その時、身に着けたままだったARCUSが鳴動するのを感じた。
「
……
あ」
予感がして慌てて取り出すと、果たして予想通りの名前がそこに表示されている。
誕生日に欲しかったおもちゃをプレゼントを開ける子供のような顔で通信を繋げた。
「クロウ!」
『よお、お疲れさん。もう戻ってるか?』
「あぁ、ちょうど今クロウから届いた手紙を読んでいたところだった」
応えると通信の向こうで身を寛げる気配がした。
『そりゃちょうどよかったんだか悪かったんだかだな。どーよ、なかなかいい写真だろ?』
「あぁ、見事だった。そういえば手紙に書いてあった事って
―
………
」
生徒達には聞かせない、どこか稚さすら感じさせる弾んだ声が部屋を満たしていく。
そうして結局夜更かしするな、と言っておきながら日付が変わるまで話し込んでしまったのだった。
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