ぽふむん
2024-11-15 09:58:02
2474文字
Public
 

白か黒か

アプリのメモに放置していた黒鳴(戦国兄嫁も)です

戦国期はどう考えても政略結婚でしょうね。愛は……どうだったのかな‪🤔‬
二人いるし側室は居ないみたい(かなりの貧乏浪人でもなきゃいて当たり前の時代)だしな

でもあの性格……兄嫁とは嫌な言い方ですが「お務め」だったのかな?

400年も経って黒死牟的には吹っ切りたい想い……顔すら思い出せないけど心のどこかに引っかかる小骨のような存在が兄嫁かな
この場では明言していませんが、黒死牟も無自覚にずるい男として書いています。
鳴女ちゃんに白黒選ばせてますが……ね

琵琶を奏でながら、烏玉のごとき黒髪の女が物思いに沈んでいる。
目の前には、主人鬼舞辻と、その右腕とも言うべき男が碁を打つ。

白が勝つか
黒が勝つか

わざと負けるなんてことは、この主人は好まない
だから、右腕は本気で挑むだろう。



数刻前、この主人の右腕
黒死牟に言われたことを、鳴女は思い起こす。

───白か黒か……決めよ───

なんの事か
いや、分かっている。


あの男のことだ。

酒を飲んでは騒ぎ立て、暴れ、酒の為に……我が商いの衣装を……
我が芸を披露する為の一張羅を売りし男。

こんな者がいたのでは足でまといと、生後間もない我が子を捨てた時ですら、ここまで心が動かなかった。
それは……
あの時は……それでも、頼りになるであろう大人の手に預けたから。
だから、我が子ですら心が動かなかった。
生きて行くため
仕方ないことだったから。

きっと、あの子はここに居るよりは、幾分マシな生活をおくれるはず。
捨てることがお互いの幸せだった。

はず

生きて行くため
生かすため
真っ当な判断だ。

そのはずだった。

ここまでして来たのに

あの男

私の稼ぎで飲んだくれていたくせに。

私の腕を認めないばかりか……
世の人が認めないのは仕方ない。
我が腕が足りぬだけの事。
でも、あの男にだけは認めて欲しかった。
片目とはいえ、盲た身の私が日銭を稼ぐ術はこれしかないから。
盲たのが両目ならともかく……片目だから。
見目に難があるから、容色で商売は出来ない。
この方法しかない。
どうせあの男は働かぬのだから

私ができる方法はこれしかない。
それで身を立てたのに。支えてきたのに。

それなのに……あぁ
よりにもよって、金を稼ぐ為の衣装まであの男は酒の為に……

私は夫をなじった。

生きるための道具を売るとはなんと言うこと。
栄養にすらならぬもののために……


だが、あの男
開き直った。
居直った。
お前の芸など大したことは無い。
琵琶など糸を撥で弾いて音を出すだけ。
ボロ着で十分と……

私の中で何かが弾けた。

思わず私は思い切りあの男の後頭部に槌を振り落としていた。

私が

この手で殺した憎い男。

憎い
私はあいつの為に精一杯……
それしか生きていく術がなかったから。
それでも生きていかねばならないから……

あれから、何人もの男を殺した。
いい音が出せるから
そんな気がしたから。
今思えば、最も上質な音が出せたのは一度だけ……
あの時の音は最高だった。
胸が震えた。

いや、もういい……
もう済んだこと


そう、済んだはずのことなのに。
一人に決めよ?




🌙🌙🌙🌙🌙🌙🌙🌙🌙🌙

俺が生を受けたのは遙か昔。
戦国の世のこと
ひとたび戦がおこれば戦地は酷いものだった。

乱取りは当たり前
焼け野原。死体の山
そこから金目のものを奪っていく者たちが居た。
最初鎧を着ていたはずの首なし、耳なしの死体の山が、裸になっていく。
売るために、死体から鎧を剥ぎ取る物。得物を奪っていくもの。
女は泣き叫びながら、諦め、絶望しながら犯され
子どもは売られ

地獄絵図だ。

だが、それも普通のこと。
一度戦が起これば当たり前。
世の常だ。

そんな世の中だった。
俺はある大名の元に仕える国人衆のひとりだった。
同盟の為。国人同士のよしみの為、隣国の娘を娶った。
いわゆる政略結婚と言うやつだ。
この時代の、ごく普通の、当たり前のこと。


あの娘は、領主の妻の務めをよく果たしてくれた。
妻として当然の務め。

子を成すこと。
二人産んだ。
本当はもっといた方が安心かもしれんかった。
すぐ死ぬことも 凡庸な事も、病弱な事も有り得たから。

我が父の判断
今思えば国人衆として当たり前の判断だった。

俺も父として
当たり前の生活を過ごしていた。
ある時までは。

弟に
双子の弟に再び合間見えなければ、当たり前の生涯を送っていたのだろう。

弟に出会ってしまい……俺は全てを捨てた。
家も、妻も子も……

あの後、継国家がどうなったのかは知らぬ。
妻は出来た女だった。
もし攻められたのであれば、薙刀を手に取り、男勝りに戦うような剛の者だ。
時にはその首ねじ切ったりもしただろう。
俺が出奔した後、女当主として……継国の家を盛り立ててくれただろう。
いや、実家のものとして乗っ取ったかもしれん。

あれから、主家が代替わりし、当主が凡庸……いや 攻め手が怪物すぎたのか
主家は滅びたと聞いた。
あるいはその時主を変え、怪物に恭順したか、主家に殉じたか……知らぬ。

過去の……
置き土産だ。
400年……過去のことだ。
興味もない。
未練は無い
あれから四百有余年の時が過ぎ……何故だろう
妻にはついぞ感じたこともない感情を抱かせる女と出会った。
弟とも当然違う……


この女を……隣に置きたい。
かつて妻だった女と違う。
何が違うのか分からないが……
何かが決定的に違う。

ああ、そうだ。
剣と芸道は違えど、ひとつの事に邁進するその姿勢だ。

だがあの女の心には、あの男が居る。
自ら手をかけたはずのあの男が……
お前の琵琶の腕を認めなかったあの男。
ただ、酒のため、己の快楽の為の資金源としか見なさなかったあの男。
それでも、何かしらの情があったから共に居たのだろう。
でなければ
俺とは生きた時代も、倫理観も違う。立場も違うから求められるものも違う。

働きもしない男と、我が子を捨ててまで共に居たのはそういうことだろう。
人として生きた時代が違う。
殺しの意味が違う。


鳴女は否定するだろうが……
憎い……憎いけど
それでも捨てられぬ想いがあったのだろう。
それくらい、朴念仁の俺にもわかる。
鬼と成り下がった後もお前の心のどこかにいるのだろう。


白か黒か
気持ちを定めてくれ

どちらを選んでも、俺の気持ちは変わらない。
俺の胸の中にあるのだから。