萩月
2024-11-14 21:36:10
1250文字
Public
 

推しは触れずに星でいて

両思えてない、ちょっと苦めな感じ


「ブロッケン、付き合おうか」

アタルのその言葉に、ブロッケンは顔を赤らめる。

ブロッケンJr.は自分を好きなのだろう、そう確信めいたものがあった。

王族として生まれ育った幼少期は、己への好意と悪意を見極めなければ命に直結する。
家を飛び出してから過ごす中でも、その癖は抜けず、人間関係も後腐れないよう選んで生きてきた。彼の根本は自由を愛するのだ。

それがかの激戦を経て、新たな仲間や家族と再認識した絆に、今までにない温かみを得たことは事実ではある。

しかし、それを踏み越えてきた、しかもひと回り年下の純粋な恋心といったら、アタルにとっては少々厄介なものであった。
バレバレな熱い視線も、体を近づければ不自然に震え、触れようものならいちいち顔を朱に染めて。
最初は面白みもあったが、段々と煩わしく感じるようになってきた。

というのも、以前にも「じゃあ付き合おうか」と言ってみた所、「それならおすすめの店あるんだー!」と買い物に連れ立たれた時は頭痛がした。

勇気が出ないのか、こちらから言わせたいのか、本当に鈍いのかわからない。わからないからもやもやする。

かと言って、ドイツに留まり続ける言い訳も尽きそうで。
このまま無視して出立してもいいが、自分が去った後に孤独に泣く所を想像すると目覚めが悪い。

嫌いではない、そう、嫌いではない。だから悲しませることを躊躇うのは至極真っ当。

ならば、少しくらい相手をしてやってもいいかもしれない。人生の中で、人を好いて恋人になり、やがて別れることがあっても、それはひとつの経験なのだ。
自分がどれくらい相手をしてやれるかはわからないが、まぁ、別に見た目も悪くないし?男相手なら万が一の責任を迫られることもない分、気楽かもしれない。

そう思い至ると、さっさとプレイボールを投げてしまおうと。
今度は変な空振りにならないよう、ちゃんとそういう意味だと伝えた上で。

……それって、恋人になる、って意味?」

おずおずと、上目遣いで尋ねるブロッケン。

──わざとでもそんな表情かお ができるなら、好感度稼ぎはなかなかだな、と。

密かに上がりかけた口元は見えないことをいいことに、努めて冷静な声で答える。

「あぁ」
「隊長も、俺のこと、好き──?」

恋人イコール両思い。
いつでも現実は甘くきらめく世界ばかりではない、と言ってやりたくもなったが、今の状況を拗らせるのは面倒なので止めておいた。

さて、喜びのあまり抱きついてくるだろうか、
その赤い顔のまま立ち尽くすだろうか。

アタルがもう何でも来い、内心身構えた所、ブロッケンは、すっと真剣な眼差しを向けた。
お前はそんな目の色をしていたな、とアタルが思っているのも知らないブロッケンは、はにかみながら、まるで唄うように紡ぐ。

「ありがとう、気ぃ遣ってくれてでも、大丈夫なんだ」

にっこりと屈託のない笑顔を浮かべた。


「そんなのは俺の隊長じゃないから」