嘘つき、或いは懐疑者

※pixiv再掲
ブラコン兄弟を見守る友人ハーマン兄さん。
…いやハーマンの方が多分にシュバルツよりは年下だろうけど。

 見慣れた立ち姿に反射的に背筋が伸びた。一直線に一目散に駆け出す己の足も、上げる声も最早条件反射の様なものなのだろうとトーマは己でそう認識している。
 「兄さん!」
 以前までであれば、直ぐに振り向き柔い笑みの一つでも寄越してくれた兄は然し、トーマが軍職に就いてからと言うもの、溜息をつかんばかりの渋い表情をまず浮かべる様になった。
 「……シュバルツ中尉」
 それが今日はいつもより渋味が強い。溜息の気配も。はて、と一旦立ち止まったトーマは、兄の佇む柱の、丁度こちらからはまだ陰になっている位置に長身の偉丈夫が立っている事に気付く。
 「ハーマン少佐?あ、失礼しました、シュバルツ大佐」
 こちらもよく見知った共和国軍佐官の顔だ。思わずどうもと会釈をしてから、渋い侭の兄の表情に気付いたトーマは慌てて敬礼と共に訂正する。
 「申し訳ない。粗忽者で」
 兄はやれやれと、苦味と渋味とを目一杯に詰め込んだ様な表情で言うが、対するロブ・ハーマンは、気にするなとそれを軽く笑い飛ばし、トーマの方へと向き直った。
 「どうだ、ガーディアンフォースの任務は順調か?中尉」
 「ええと、はい。至って順調であります」
 ハーマンは共和国軍の佐官であってガーディアンフォースの上層部ではない。顔見知りである事は間違いないが、直接に命令を受けた事はまだ無い立場だ。果たして何と答えたものか少し悩みつつも在り来りに肯定を示せば、ハーマンは「そうか、これからも順調に頑張ってくれ」と笑った。
 かなりの高身長から見下される格好だが、気さくな気配と人好きのする笑顔とがそこから感じる威圧感を不思議と和らげている。見た目こそ軍人然とした無骨な佇まいだが、その内面は全く異なっている。不思議な男だ。
 「お二人は……一体どの様な状況で」
 帝国軍の基地の、ゾイド格納庫の中で立ち話。見た侭を言うならばそんな所だが、そもそもにして二国の佐官同士で階級も異なる。デスザウラーの撃破時に場当たり的に共に戦った仲と聞いてはいるが、逆に言えばそれ以外の接点は無い筈の二人だ。
 余り人好きのする方とは言えない兄と、私的なのだろう立ち話が出来ているだけでも、正直意外性を隠せない。こう言っては何だが、兄との言葉の遣り取りと言うのは慣れないとなかなかに神経を使うらしいとはトーマも知っている。
 不思議な男、と言うトーマなりのハーマンの評価に更に疑問が付与される。鈍いか辛抱強いか流すか、何れも兄との気長な対話には必要なスキルだ。果たしてその何れなのか。
 己とハーマンとを見比べて言うトーマの疑問を正しく解したらしい。兄は親指をくいと横に向けると言うなかなかに行儀の悪い仕草でハーマンの事を「これとは」示した。
 「戦後のやり取りの中で何となく馬が合ったんだ。で、以来偶に会うとこうして世間話に興じたりもする」
 「随分と客観的な物言いじゃないか。俺とお前の仲だろう」
 兄に『これ』と言わしめられたハーマンは然しそこは特に気にはならなかった様だが、説明調子の言い種そのものは気に召さなかったらしい。余り面白く無さそうに肩をすくめてみせるその様子に兄はふんと鼻を鳴らす。
 「公私は混同しない主義なんだ。知っているだろうに」
 「まぁなぁ。弟君を見ているとよく解る」
 苦労するな?と同意を求めんばかりの目で見られ、トーマは曖昧に目を游がせ兄の方を見た。すると、弟をダシにした当てつけめいた言われ様にてっきり顔でも顰めているかと思いきや、兄は別に気を悪くした風でもなく僅かにだが笑んでいた。
 「……
 正直を言えば意外な光景だった。そりゃあ、兄とて人なのだから、佐官の軍服を纏っていたからと言って常に仏頂面で軍務に就いていると言う訳ではないだろう。部下や知己と談笑の一つぐらいする事もある筈だ。
 トーマの知る限りの兄は別段無口で無愛想な性格ではない。それこそ当人が口にした様に、公私は混同しないと言うだけで、基本的には社交的──定義的には──だ。だから別段、共和国の軍人と談笑していたとて、おかしな事など何もない、筈なのだが。
 何か摘み取って仕舞った違和感の様なものを手の裡で持て余すトーマを余所に、共和国と帝国の軍人二人は互いに軽口の様なものを投げ合っている。
 (何と言うか、楽しそうだなぁ
 たのしい、と漸く見つけた言葉が腑に落ちて、然し納得やすっきりした感じはしない侭、トーマは何処か途方に暮れた心地を抱えて二国の上官を見ていた。
 トーマのその視線に気付いたのか、ふとハーマンが居住まいを正した。兄の背をその大きな手のひらでどんと押してトーマの方へと向ける。
 「すまんな、中尉。何か兄弟で話したい事でもあったんだろう?」
 「ああ、いえ、そう言う訳では」
 単なる条件反射で、まるで砂漠で水を見つけた様な心地で声を掛けて仕舞っただけだ。最初から、兄が誰かと立ち話をしていると知っていたら、もう少し声の掛け方は選んだ。粗忽と言われようがトーマにもその程度の分別ぐらいはちゃんとあるのだ。そうすればあんなに渋い溜息はつかれなかっただろうに。
 「そうだな。お前の事だから、姿を見かけたから矢も楯もたまらず飛んで来たとか、そんな所だろう」
 当然の様に兄はトーマの行動を正しく理解していたらしい。若干呆れた様な溜息と共に言われ、おまけにそれが叱ったり咎めたりする調子でもないので、何だかトーマは気恥ずかしくなって両肩を落とした。
 「そんな言い方は無いだろう。折角兄弟が久々に会えたと言うのに」
 助け舟のつもりなのか同乗して舟を沈めるつもりなのか定かではないそんな言い種を寄越すハーマンは、果たして何を以てそう思うのか、微笑ましい光景でも見ている時そのものの様な穏やかな微笑など浮かべている。
 そこに悪い感情は無い筈なのだが、兄弟二人以外に客観的にそんな事を言われて仕舞えば、己がどれだけ子供じみた行動をして仕舞っていたのかと思い知らされる気がして、トーマは居心地の悪さに益々両肩を縮めた。
 「中尉。今晩の予定は?何か任務は出ているのか?」
 「え、いえ、特には。暫く任務の無い待機時間ですので、この基地で休息とディバイソンのメンテナンスを行いつつ滞在する予定であります」
 突然軍人然とした口調になった兄にそう振られて、トーマは反射的に背筋を正して答える。すると兄は「そうか」と頷いてから、堅苦しい面相をふっと和ませた。シュバルツ大佐ではなく兄さんの顔だ、とそう思った。
 「今晩街に食事に行こうと思っているのだが、予定が合うならばお前も一緒にどうだ?」
 「喜んでご一緒させていただきます!」
 語尾の疑問符が出るより先に勢い込んで言うトーマの姿を見て、ハーマンが堪えきれずぷっと噴き出す。兄はその姿をちらと横目で見ながら「アレも一緒だが、構わないか?」と笑っていない眼で付け足した。冷めた様なその調子を向けたのが、前のめりな弟に対してなのか、そんな弟を笑った友人に対してなのかはよく判らなかったが、トーマは構わず頷いた。湧き上がる歓びの感情の侭に自然と笑みが浮かんで仕舞う。
 「久しぶりだからお話したい事が沢山あります」
 自分ながら現金なものだとは思うが、嬉しさが全身から勝手に溢れ出して仕舞うのは堪え難い。兄は何かを言いたげにしたものの、小さく肩を竦めるだけに留めた。
 「そうか。では夕刻に正門の駐車場で落ち合おう。街までは近いが、車輌を出さねばならない立場なんだ。ハーマン少佐もそれで?」
 「解った。然しそうか、車を出して貰えるんなら酒も入れられるな。弟君はいける口か?」
 「えぇまぁ、ほどほどには」
 「潰すのは止めて貰おうか。ガーディアンフォースの任務は計画的な軍務と異なって、いつ指令が来るか解らないんだぞ」
 盃を傾ける様な仕草と共に向けられた問いに、渋い顔をしたのは話を振られたトーマよりも兄の方だった。だが、ハーマンを肘で小突く様な仕草をしつつも口の端では矢張りほんの少しだけ笑んでいる。
 まただ。心の裡で酷く後ろ向きになりそうな、あの途方に暮れた様な心地を思い出しそうになったトーマはふるふるとかぶりを振ってそれを振り切ると、
 「それでは今の内にディバイソンのメンテ依頼を出して来て仕舞います。それでは兄さん、ハーマン少佐も、また後で」
 元よりその用事で格納庫に向かっていたのだ。兄の口からいつもの、呼び名についての訂正を促す声が出るよりも先に、トーマは二人の上官に一礼すると足早に格納庫の中へと向かって行った。
 勢いの侭に早足で歩きながら、これは寂しさと、子供っぽい嫉妬心だ、と漸く飲み込む事が出来た。
 
 *
 
 トーマの背中が見えなくなってから、自らの顎に手をやったハーマンはにやにやと笑ってシュバルツを見下ろして来る。
 「微笑ましい限りじゃないか。なぁ?」
 その言う口調から浮かべる表情と感情の想像は容易くつく。だから敢えて見上げてやったりはせずに、シュバルツは腕を組むと逆に俯いてやった。ハーマンの眼の高さからでは軍帽の鍔もあってシュバルツの表情は覗き込みでもしない限りは伺えない。
 「私は良いが、トーマを余りからかわないでやってくれないか。あれでも大事な弟なんだ」
 態とらしくハーマンが食いついてからかって来そうな物言いをしてやるが、豪快そうな見た目の割に存外に紳士的な共和国軍人は礼儀正しくも野暮な真似はしなかった。
 「お前の方が余程弟君を転がしている様に見えるがなぁ。もっとこう、兄弟らしいコミュニケーションの取り方から学び直すと良い」
 からかわせて蹴り飛ばしてやろうと思っていた所に、責める響きのないやんわりと宥める様な物言いをされて仕舞えば、まるで自分の方が一方的に悪い様な心地になる。
 シュバルツは別段トーマをからかっていると言う訳ではないのだが、ああして幼い頃と余り変わらない様な態度や感情表現を兄弟以外の人間の居る場面でも出されると、ついつい窘める調子が強くなって仕舞う。これは果たして親の様な或いは教師の様な心理なのか。
 「……そうは言ってもな。八つも離れていれば感覚などあってない様なものだろう。大人と子供の狭間の距離の埋め方は人や家庭それぞれだと思うが。それで、少佐には兄弟らしさとやらについて具体的に示せる啓蒙でもあるのか?」
 兄弟らしいコミュニケーション、などと言うものにぴんと来そうな答えはシュバルツの裡には無い。干渉は好まない質だが、親子関係については事情はあれど円満に思えるハーマンの指摘ならば聞く価値はまぁあるかも知れないと思い、シュバルツは柱に背をとんと預けて耳を傾ける体勢に入る。
 「あれだけ無条件に懐かれ続けて来たんなら、幾らお前でも可愛くて仕方がないのは解るが、それをその侭コミュニケーションとして使うのは止めてみたらどうだ」
 「……どうしてそうなる」
 然し第一声からいきなり梯子を外され、シュバルツは皺の寄った眉間を指の背で揉むが、「間違ってはいないだろう?」と追い打ちの様にハーマンに続けられ、二の句が継げずに黙り込む。
 思い当たりがある上に、真っ向から何の不思議も無い様に言われては、最早返す皮肉も出て来やしない。
 ち、と気取られない程度に舌を打って、シュバルツは軍帽の鍔を少し傾けた。アドバイスなど求めて仕舞ったからか、珍しくこちらの方が形勢が不利になっている。
 「その感想は小動物を見る感覚だろう、どちらかと言うと」
 「違うとでも?」
 「………違う」
 またしてもさくりと刺し返されたのでむすりと言い返す。
 「ある程度は客観的に事実かも知れないが、少なくとも当事者の意識としては的外れと言わざるを得ないと言っておこう」
 「傍目そう見える事はまぁ認めると」
 「そう取る無礼な輩はいるかも知れない、程度にはな」
 投げる球を次々打ち返され、辛うじて刺し返すが、シュバルツの常に比べれば柔らかい棘は残念ながらハーマンの分厚い皮膚や神経には刺さらなかったらしい。大柄な男は目深になったシュバルツの軍帽の鍔をぴんと指で弾いて上げ、顕になった目に無理矢理に視線を合わせて来る。
 「まぁあれだ。可愛い弟が他人に粗相をやらかしはしないかとか、必要以上に過保護になっているんだろう。お前の場合はその思いやりの部分が弟君に伝わっていないのがある意味では救いなのかも知れんが」
 「……こう言うのは伝わらない方が良い事もある」
 目を覗き込む様にして言われた指摘はこれもまた的確で正しかった。なかなかに恥ずかしくも正確な分析をされた形になったシュバルツはばつの悪さに苦し紛れに言うが、最早この観察についてはこちらの完敗の様だ。
 全く、体のでかい軍人然とした見てくれを裏切って、ロブ・ハーマンと言う男は本当になかなかよく人を見ているものだと舌を巻く。
 「お前の愛情表現は重度にひねくれているからな。心配せずとも弟君の様なタイプには伝わるまいよ」
 「褒め言葉と受け取ろう」
 言動こそ大人しいものだったが、笑って見下ろして来るハーマンの顔をやや斜めに見上げるシュバルツの表情はと言えば、今にも舌打ちせんばかりの形相であった。
 然しハーマンはそれに怖じけるどころか、鍔に手を掛けてシュバルツの帽子をひょいと取った。翳りの無くなる視界に大きな手が伸びて来たかと思えば、わしわしと乱暴な手つきで頭を撫でられる。
 「ロブ・ハーマン少佐」
 宥めているつもりなのか、頭を揺すられながら、シュバルツは思い切りハーマンを睨み上げる。誰の目もないと確信してやっている事なのは間違いないだろうが(その程度には信頼している)、何の脈絡もなくやられて気分の良いものでもない。
 「ま。その『愛情表現』を前面に押し出して小言を言うばかりではなく、偶には素直に褒めてやると良い。実際、ガーディアンフォースでの活躍と同時に、弟君の名前も信頼と共に伝わっているんだ。その事実に関しては、立派なものだとお前も認めてるんだろう?」
 「…………
 諭しでもする様に言って寄越すハーマンを揺れる視界の中に見上げている内、シュバルツは何だか段々と馬鹿馬鹿しくなって投げやりな溜息をついた。
 「そうだな。兄弟の欲目を除いて見ても、あいつは天才で、それでいて努力家だと思うよ」
 「唐突に素直になるな?」
 「正直を言うと誇らしい。危なっかしいと感じるのは年長者の悪癖だ」
 本音を何の躊躇いもなく吐き出し始めたシュバルツに向けて、はは、とハーマンの笑い声が降って来て益々頭をぐしゃぐしゃにされる。もうどうでもいいかと、されるが侭になりながらシュバルツは淡々と続ける。どうせ向けるべき当人へと吐き出せない言葉ならば何の意味もない戯言と変わらないのだ。
 元々に解っている事だ。シュバルツはトーマを未熟と評すが、言う言葉程には厳しい意味での評価ではない。肝心のトーマが既に自分に自信を持って行動しながらも、『兄に認められている』筈の事を、まだ足りないとばかりに求めるものだから、つい言い方も厳しくなって仕舞うだけだ。
 自立出来ていない訳では無いのだが、トーマの内では兄からの言葉や評価は他の何者からのそれより比重が大きいらしい。或いは、それだけ滅多にない事、と言う証左なのやも知れないが。
 「実際よくやっているよ。バンにはまだ及ばないが、着実に力を付けているし、精神的にも成長している。現場に易々立てない俺よりも余程にあいつの方が立派だ」
 そう。元より解っている。素直じゃないのは己だけだ。
 「それ、弟君に言ってやったらどうだ?」
 「年齢もあるのかも知れないが、少々お調子者なのがあいつの難点だ。愛嬌とも言えるが。何でもポジティブに捉えられるのは美点だが、それで直ぐに調子に乗って仕舞うんだ」
 己とよく似た、自信に満ちた性格が若い様に、悪い様に出た結果なのだろうとは何となく解る。あの粗忽で自信過剰過ぎる所さえ弁えてくれれば、とは兄としても度々思う所ではあるが、そんな欠点がトーマの人間くさい愛嬌を作っているのも事実だ。
 「……結局褒めてる様にしか聞こえんなぁ」
 く、と笑いの残滓を残してハーマンの手が漸くシュバルツの頭から離れていった。散々に乱された髪を手櫛で直していると、軍帽が最後にぽんと置かれた。
 「今じゃなくて良い、その内ちゃんと言ってやるんだな」
 「……少佐の深い洞察に免じて考えておこう」
 頭部に適当に置かれた軍帽を被り直して、背を預けていた柱から身を起こす。格納庫の奥に向かったトーマが戻ってくる気配はまだ無いが、戻ってこない内にここを離れておいた方が良いだろう。今の調子だとまたトーマが話しかけて来た時にどう口が滑ってくれるか解ったものではない。
 「鼻っ柱が伸びちまうのを危惧するのはまあ解るが、余り餌を与えないと不安がられるだけだぞ?」
 「不安」
 そこに飛んで来た唐突な言葉を思わず鸚鵡返しにすると、ハーマンは大仰な仕草で頷いてみせた。何やら勿体ぶる調子だ。
 「さっきの弟君なぁ、お前が自分を見てくれないで友人と語らっているのを優先していると勘違いして、えらく寂しそうな面してたぞ」
 「……………そうなのか?」
 呻いて首を傾げるシュバルツに、自信満々に頷いてみせるハーマンを懐疑的な表情で見上げる。
 「トーマが妙な様子をしている事には気付いていたが、てっきりそれはお前にからかう調子があったからだろうと、そう思っていたのだが?」
 「いやいや。あれは見覚えがある。子供が自分より仕事を優先する親を、他の大人に取られたと思って不貞腐れている時のやつだ」
 そんな風に妙にしみじみと言うハーマンに、もしやと思い当たって訊いてみる。
 「……まさかとは思うが、実体験か?」
 「想像に任せよう。さて、それでは俺もそろそろ準備に入るかな。楽しい食事会に仕事の気懸かりを抱えた侭で居たくはないからな」
 シュバルツの問いを最低限の言葉だけで躱すと、ハーマンは伸びをする様な仕草をして、それから「また後でな」と手を振って元来た方へと戻って行った。一応は帝国基地なので、共和国の軍人は許可がなければ自由に歩き回れる範囲は広くないのだ。
 「……随分と色々、好き勝手言って呉れたものだ」
 先にアドバイスを求めて仕舞った手前そうとは言い辛いが、本来ならば余り好ましいとは言えない部分にまで踏み込まれた気がする。
 然しそこまで悪い気や不快感がしないのは、己の側にある思い当たりを正しく拾ってくれやがった友人殿に対する敬意の様なものだろう。
 食事の時に近況報告があるだろうから、友人殿のアドバイスを参考に、さりげなく節度を守って褒めてやろうか。
 兄がそうした時の弟の反応は今からでも想像に易くて、シュバルツは僅かに微笑んで歩き出した。


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ハーマン存外に下士官や部下に対する気遣いがあると言うか理想の上司感あるので(被撃墜運と遠泳は除く)、人のことよっく見てると良いなとか。