最後にステレオタイプアジア人がヒョイっと出てきて、白人男性にしれっと嫌なことされて、スッと退場させられるところ、ほんとこの映画隙がないなと思った。黒人と白人がやりあってる世界にアジア人は存在しない。
とっても面白かったです!差別と偏見に対する強いメッセージと、テンポ良く笑えるコメディって両立するんだ…モンクが一生懸命"らしい黒人"を演じながらアーサーとごちゃごちゃしてんの笑ったし、出版社たちによる派手な景気のよさとの不協和音は手を叩きました。なんなんだこのツッコミ待ちは、どうしてそうなってしまうんだ。
もちろんしんどい気持ちになるときもあるんですが、しんど…ってなると必ずちょっといいことが起こるので、そのへんもすごくバランスが良かったです。
あと再生するとき、レーティングがR18+でびっくりしたけど、この納得のF率である。
黒人らしさのエンタメ消費って題材聞いたとき、すっごい観たいと思ったし、観てよかった。白人たちは免罪されたいだけなんだ。この…それを言わしめるほどのどんなことが普段…この現実で…
モンクがクリフを叱るときに"civilized"と言うんだけど
出てくる好意的な白人たち、基本的に黒人を"文明化"されていないものだと認識してるのが、えっ訛らないんですか?横柄ではない?犯罪歴ないんですか?って反応でわかるのがすごくえぐくてよくできてる
"文明人が未開の蛮族を文明化する"文脈は、歴史にはたくさんあって、たいがいしてあげてるってでかい態度なので、それを思い出しました。
ほら…ポリコレだし…ね?もやばかったね。なんで「君だから頼みたい」と言えないんだ。個人の存在しなさがものすごい。
攻撃者が無自覚の話、もちろん黒人への偏見がメインの話ではあるんだけど、なんか類例の見本市みたいになってたの面白かったです
男性同士が勝手に下ネタで盛り上がるのをぶち切る女性にはヒュウってなったし
親のケアを娘に任せて自分たちは何もしない息子たちとか
ゲイの息子にあなたはゲイじゃないと言う母親とか
モンクは自分以外の人間をだいたい馬鹿だと思ってる節があるし
そもそもエリソン家はロレインを雇えるくらい裕福な家庭で、たぶん経済的な底辺を実際のところはよく知らない
シンタラが「調査して書いた」ものが、「それっぽく書いたもの」と見分けがつかないの
わたしもね、別に何もしとらん黒人が、なんでか射殺されるの、まじで意味がわからんので、嘘じゃんと思うんだけど
その嘘みたいなことは実際に起こっていて
モンクが黒人仕草とばかにする暮らしって、たぶん実際にあるんだってことを彼も無自覚なんだと思う
なんかこういう、ちょっとずつろくでもないベン図がたくさん重なってあるようなところ、それが2時間未満のコメディに詰まっているところ、好きです
モンクがまたすげーーーーーめんどくさいやつで良い。父子たち全員医者なので、ひとり博士号とって作家やってる彼にもいろいろあったんじゃないかと思うんだけど、ケアを女性に丸投げする姿勢とか、不機嫌を振り撒く態度とか、露骨にしょうもないところはあるし、ばか高いプライドを持て余して泥濘を這い回るようなしょうもないところもあるし。
親の介護で悲しい思いをしたり、なんか素敵な恋をしたり、仕事がうまくいかなくて悩んだり、友人の結婚で喜んだり、そういうありふれた生活と並行して描いてるのもいいなって思います。
シンタラが「エンタメ消費しちゃうのは消費する側の責任」みたいなことを言うときに、まあ確かに、と思うんだけど、じゃあこの映画は何?ってなるのも好きです。
この映画は人間をテンプレ化して消費することについて、テンプレ化した人間を用いて表現してるのが好きなんだけど
黒人が警官に射殺されるフィクションを、それすっごいリアル!気に入った!とか言うじゃん?現実に起こったことなのに。いや現実に起こったから?それはそんなに楽しいか?と簡単にひっくり返る、表裏一体な作りが好きです。
このあらゆるすべてが作り話ならよかったのにね、みたいな終わり方も好き。なるほどアメリカン・フィクション、と思いました。全部嘘ならよかったよね
ものを作ることの話
審査員の白人女性、すごく真面目で、『ファック』をすごくよかったと言ってるの、たぶん本当にすごくよかったんだろうな、と思った。
こういう「その人が抱く感想」はその人だけのものだから、干渉する権利はない、と思うんだけど
そういう読者の感情と、それが偏見かどうかを分けて考えるのは難しい、というか…うまく言えないんだけど
なんかたぶん、モンクは普通に書くのがうまい人なので、普通に『ファック』が面白い説あると思うんですよね
モンクは空港ペーパーバックを馬鹿にするし(書いてるやつはみんな偉いんだよ)、読んでもないシンタラの本を馬鹿にするし(お前は何と戦ってるんだ)、金のために本を書くことを馬鹿にするし(金のために書いて何が悪い)、なんか高尚で綺麗な自分とは違う汚泥の大衆娯楽、って思ってる節があるから、そのへんまともに評価できないんじゃないかと思う
もちろん、楽しく消費されたくないという彼の強い動機はまさにそうだし、見たいものだけを見る人間たちの視界には常に外部から目が必要だけど
売れてないのは流行の作風じゃないからで、たぶん普通に面白いんじゃないのか、この人の作る話。
でも、その面白い話も、読者の偏見を助長するならやっぱり問題はあって
書く側、表現する側、クリエイター側が負う責任って、やっぱりあると思う
その上で、読者がどう受け止めるかは、読者に委ねられていて
すべてがうまくいくためには、やっぱり世界がたくさんやさしくあることが、必要なんじゃないかなあ…と、なんかものすごく漠然としてしまいましたが、そんなことを思いました
殺人が禁忌とされていない世界で殺人をエンタメ消費はできないので
ものを作ることってそれが必要で、社会に無関心ではいられないよなって
この映画は偏見の話だけど、ものを作ることの話でもあるよな〜と思いました。
あと全然関係ないけど、モンクの書き方が映像型なの面白かったし、『マイパフォロジー』完成まであまりに秒で書くの早!!!ってなりました。早くない?すごすぎる。手癖が一切出ない文章を書き分けられるのも純粋に賢すぎる。なっちゃうじゃん、いつもの言い回しにさあ。
最後に曲!とても!よかった!
わたしは楽器を嗜んでいるので、よく知ってるジャズが流れてくるとうれしくなっちゃう。ともすると落ち込んでしまうストーリーの中で、やさしく流れるジャズ、とてもよかったです。
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