はるの
2024-11-14 17:50:57
6162文字
Public 感想文
 

ベスト・オブ・エネミーズ

ネタバレ感想

鏡なんだ僕ら互いに
それぞれのカルマを映すための

というクライマックスで何もかも虚像であることに気づいて崩壊を見る構成を作った人〜!!グレアム〜〜〜〜〜!!!!!なあ最高じゃないか、自分こそが前線に立っていると思っていたら、かけらも当事者ではないことに気づいたユージーン・ルーサー・ゴア・ヴィダルの空漠。主張を疑う前に主張に疑われてる。

わたしがこういうくそどうしようもないやつ好きなことわかってて配役をザックに頼みましたか?製作陣全員月見マフィン奢るから朝8時に映画館集合な。

めーちゃめちゃ良かったです!うわ〜〜!!!声の使い方がすごくいい。人にどう見られるかを見極めて振る舞い方変えてない?でも全部ガワでしかない喋り方する。討論会でのあのくそうるっせえ肩のすくめ方と表情、からの、ボビーを殺した弾丸に触れたADへの内面がこぼれるようなどうしようもない振る舞い、まるでひとりぼっちのユージーンだった。も〜〜ザック〜!!朝マック行く?!!

最初、えっ歌い出した?って動揺したくらい、朗々とした強弱でわざとらしすぎるほど劇場的に話すヴィダルが最高だし、言葉の途中で反論に割り込まれてもそのまま喋り続ける/一旦待つの選択が俊敏かつ正解すぎて、このひと人生において反論され慣れてるそしてカウンターし慣れてるってなりました。人生。まあ彼が調子こいて人を挑発しがちなせいでもあるんですけどね。ろくでもね〜〜〜〜〜SUKI

私生活でも常に周りに人がいて、大袈裟な振る舞いで皮肉で猥雑なことをベルベットにハミングするだけで周りがきゃあきゃあする感じ、良い。そんな周りを御しやすい雑魚だと思ってそうなのも好き。パーティ会場での目立ち方も計算し尽くしたポーズそう。
ザックの冷属性知的キャラ、別にすごく頭いいエピソードがあるわけじゃないけど、絶対こいつは頭いいだろみたいな振る舞いが完成されてるの素晴らしいことないです??大好き。わたしはインテリキャラが概して好きなのですが、頭が良さそうに見える角度をとっても心得てらっしゃると思う。好き〜〜〜〜!人生にいいことばかり起こってほし〜〜〜〜!

ヴィダルは性格が用意周到なのも好きです。パーティに来たかわいい男の子とは気軽に関係を持つけど、きちんと愛情を返すより仕事と自分の勝利を優先してるのいいですね。知的で過激でユーモアがあって、ソクラテスみたいに若者に好かれそうなんだよな。けどマットとしては"はっきりした言葉"がほしくて、ヴィダル自身も彼を嫌いじゃないんだろうけど、何もはっきりさせたくなくてずるい立ち位置を守ってるから、結局有象無象のひとりにすぎなさそうなのと、その"御しやすい雑魚"に最後派手に噛まれてるの最高でした。ざまあ〜!そんな君をあいしてる。
そしてこのインテリ強者ろくでもなぶりに、属したい場所に属せない憤怒とか、永遠に手が届かないものに対する悲愴とか、あの空よりも果てしない孤独が、誰にも知られず秘匿されているんですね。ボビーへのあの愛憎を見ましたか?離反したのは君なのに、剥がれた跡をいつまでも気にするのも君なんだろう。シカゴ暴動で怪我ひとつ負わないことに対する不安を見ましたか?バックリーは当然と思うことを、この人は損なったと過敏になるんですね。討論会でどれだけ罵倒されても平然と同じだけやり返すくせに、立ちたい場所に立っている者を見ると簡単に傷つくのでは?世界パーソナリティデコレーション選手権優勝候補か??本当にありがとうございます大好き。よっ過積載!

これらはわたしの勝手な見解ですが、こういう見解に至るだけの些細な振る舞いや、大袈裟な表情の動き、何気ない冷たい顔も、あからさまな呆然も、全部よかったです。ザック〜!何食べたい??来世で知り合いになったらなんでも奢りますね!
それから、落ち着いた濃紺?黒?のダブルスーツ、眼鏡と併せて素敵でした。魅せ方わかってる。

ちなみにヴィダルが最後に激白する一生にひとりだけ愛した人は、19歳のときに硫黄島で亡くなった同級生なのだそうです。ヴィダルは生涯ただひとり、彼だけを愛したと回想録に書きました。
このヴィダルよ〜〜〜お前をサスーンクオリティにしてやろうか髪サラッサラにしてやんよも〜〜〜!すべての孤独に意味を持たせちゃいそうじゃんこの過積載!!死が永遠を作るやつじゃん!詩も永遠を作るから覚えといて〜!!

………あの、近い時代のfactionは発言スタンスが難しいですねサスーンクオリティにしたいのはザックのヴィダルであって、ご本人のことではないし。いわゆる歴史創作的な発言です。

バックリー、普通にいい人でしたね。実家が太そう。普通にいい人で、普通に失礼で、普通に差別的で、普通に世の中を良くしようとしてる人だった。
この"普通"、よくある保守的な像を指して普通、なのかなあと思うけど、どうだろうな。家庭を持っていて敬虔、というのは、でも、やっぱりマジョリティなのかな。
はじめてテレビに出る前の化粧シーン、妻にやってもらうから、というバックリーに対して、妻は?と訊かれたヴィダルが「ノ゛ォ゛ォ゛オ゛オ゛??????」ってすっげえ声出してくるとこちょっと笑いました。ヒュウ煽りよる。でもそれ完全に煽り待ちでしたよね。このふたりは鏡なんだ僕らなので、"それ"を普通に見せるのは、きっと意図してのことだろうな。
ヴィダルの煽りは「law and god damm order」も好きです。言われてんぞニクソン(笑)シカゴ市長がこれを言い出すとかほんと、やべえの一言だしな。

金に目がくらんでやべー山にうかうか手を出してしまったせいで、普通に生きてたら遭難しなかっただろうな、みたいな事態に陥ってるバックリーは、なんだかかわゆさとおかしみがあって好きです。金の交渉のとき、右上でABCが人差し指と親指擦ってたの面白かった。
マイラ読んでもんもんとしてるのもアホキュートでした。絶対勝てないよこんなふわふわのおじさん結果、よぉし個人攻撃しちゃうぞ!ってなっちゃうテンションはもうどうかしてるそれなので、1週間くらい休暇取ってくださいね。個人攻撃、ダメ、絶対。

この勝てなさそうなふわふわおじさんが、結局論客としては大失言をして、けどどんなに大炎上しても、生活の上では特にゆらぎもしてなさそうなところ、ずるいし、わかるわ〜ってなりました。基盤がでかそう。人生は不平等だな。
まあヴィダルも、ナチだとかカナダさんを51州目扱いする失言しながら、いえ何にもしてません、みたいな顔してましたけど。質の違う揺るぎなさがあるよね。反省しやしねえこいつが好き。でもガワなんだろそれもヴィダルよ〜〜〜〜〜〜
バックリーの朴訥としょうもなさと真面目とアッパーを混ぜて落ち着いた何かに見せるのは、ヘアウッドさんの貫禄なのかなあと思います。面白い人だな。よかった。

討論会の後、疲れ果ててるふたりに対して、最高!視聴率爆上がり!とうっきうきでやってくるABC、救われた世界に狂喜乱舞する民衆と、戦いのさなか家族を失って悲嘆に暮れるRPG主人公みたいなおもむきがあって、無慈悲でグッときました。すべての本質がここにある気がしてしまう。
このお祭り騒ぎのマスメディア、最高に皮肉でよかったです。無邪気なんだよな〜あと「論客は難しい言葉を使うので何を言ってるかわからない」が真実すぎて。罵り合いってわかりやすいから、広い範囲でウケるんだろうな。劇中にも「正しいかどうかじゃなくて好きかどうか」みたいな言葉があったけど、現実は無慈悲だよな。それはそう。
最後にヴィダルから番組全否定されてて笑いました。ざまあ〜!彼らは彼らの仕事をしただけとも言えるし功罪に自覚はなさそうだが。わたしが今軽々しくざまあと言ってるのも一種の馬鹿な罵りだしな。そういうこと引っくるめて面白い。紆余曲折を経て名声に対する認識をちょっと改めるヴィダル、よかったです。人の意見って変わるものだし。まあ反省はしないし振る舞いも変えないようですがね。いとおしいかよ。

他のキャラクターも面白かったです。突然すべてを知る男みたいな雰囲気で出てきたヴィダルのパートナーに誰よその男?!?!ってなったこと含めて楽しかった。
いちばん心に残ったのはボールドウィンです。彼がいちばん「なまみ」だった気がする。彼の本音と、彼の言葉にヴィダルがたじろいでしまうのが、最高に最高でした。ヴィダルのあのただじっと見てるだけの横顔があからさまに傷ついていて好き。人権を訴える演説のことを「楽しかった?」と聞かれて激怒したことと、結局俺たちはそれと同じ安全圏で好き勝手言ってるだけの"楽しんでるやつ"にすぎないってやつ、キッツイけどなまみだ。
ゆるふわボーダー銀髪、発言は一部やべーけど、なんかかわいいな、ヴィダルがあっさり気味に気に入ってるのも面白いし、こういう人好き…………撃たれた?!あっまさかアンディって?!など、60〜70年代アメリカ情勢を知っていると、ちょっとわかりやすくなるところはある気がします。何も知らなくても面白いけど、詳しい人はもっと面白いんだろうな。わたしもそう詳しくはないけど、えくすめんにじそうさくをするために少しだけ調べたことがあったので、ちょっとだけなら雰囲気はわかると思う。ベトナム戦争とか、公民権運動とか。同性愛に対する世論とか。ありがとうえくすめん、人生の糧になっているよ。突然違う映画に感謝を捧げるな。

この大激動の政治を制したのが結局ニクソンであるところ、ほんとなんていうかものすごいですよね。なんというサイレントマジョリティ。まあゆうて他人事、という事実のこびりつくような強さ。
この話、ほんと、当事者、ということをすごく考えます。
論客たちは椅子にいて、活動家たちは屋外にいて、政治家たちは官邸にいて、たいていの民衆は家にいる。どこかでパレードが起こっても、それを伝えたい誰かは同じ場所にいない。なんだろうな、これは、となってしまう気持ちは、なんとなくわかる気がします。リビングでこのテレビ番組を見て手を叩いて笑ってる人がいちばん多いんだろうな。

当事者といえば、バックリー役の方が黒人で、黒人の権力回復に否定的な立場を取るというの、NTLサイトのトークイベントページにも書いてあったけど、めちゃ違和感ありますね。君がそれ言うぅ?てなった。ヴィダルはオープンリーゲイのザックがやってるのにな。うーん。たとえば女性の権利回復で足を引っ張った人たちの中に保守派の家庭を持つ女性たちがいる、というのを聞いたことがありますが、立場上のイデオロギーは、個人の持つ属性に依存しない、ということを差し込みたかったのかな。あからさますぎるので何か理由はあるんだろうけど、ちょっとわたしにはわからないです。どういうことか教えてグレアム!エッグマックマフィンも奢るから!

それはドナ○ドト〇ンプのことを言っているのか?
みたいな皮肉な笑いどころがときどきあって、何度かふふってなりました。ロンドンの劇場も\ドッ/てなってたけど、ご当地BBCジョークとかね。Bells, bellsと大袈裟に言うことでノートルダムの鐘の意味になるのも面白かった。あとABCのみなさんの口の悪さ、口が悪いと面白がるロンドンのみなさん、全体的に英国みがしたたかで、そういうのも面白かったです。グレアムもまた英国面を司るマスターだったんだな
当時はくそ侮蔑用語だったクィアを使って他人を中傷したときの、oh、と全員が息を呑むところ、声を出したのは俳優さんかもしれないけど、もはや観客が視聴者みたいになっていて、なんか謎の一体感が生まれてた気がする。画面越しだと定かじゃないけど、舞台のいいところのひとつはこういうところだと思います。

観客=視聴者の構図、舞台装置でそう見せるのがうまいなって思います。ステージという大きな虚構があって、我々がそれを見ている。美術とてもよかったです。2階のスタジオ、バクステ、テレビ画面の3窓構成、討論中はテレビ関係者とそれぞれの支持者がいるのよかった。
マイアミのホテルのシーン、めちゃめちゃよかったことないです??面白かった!同じ場所で違う場面を同時に進行するの興奮した。バックリーとヴィダルの動作がふっと揃うのにっこにこしちゃいました。鏡なんーだー僕ら互いに〜♪
みんなの公的映像がスポットライトの下で差し挟まる演出もとてもよかったです。雰囲気がガラッと変わるボールドウィンよ。

カメラなしの本音を語り合うシーンで
いつも左にバックリー、右にヴィダルがいたところで
このときだけ、立ち位置が逆になるの、好きなやつすぎないですか
ほらお前らの好きなやつだぞって言われてる気がする。グレアムこら!!!最高だぞ
先に譲歩するのがバックリーなのと、酒を交わして語る彼らのトーンダウンした素の声と、けれどそのうち声の調子が戻ってきて(ヴィダルはユージーンではなくヴィダルの作った声になって)、座る椅子は今までどおりに戻るというの良い。君たちの座る場所はそこで、そこに座るというのはそういうことなんだ。The whole world is watching. 汚れた手と手で触り合って形がわかるんだろ知ってるよもう。
そうして意見の一致に至るのは、落ち着いた"会話"でそうなるのは、それはもう。ここにmeaning of birth置いておきますね。

討論番組が終わったあと、本人も交えた本人たちのその後が語られるの、すごくすごく好きです。このターンでちょっと愉快に、けれど淡々と語られるものたちは、彼らだけのもので、視聴者たるわたしにはもはや遠いものだなって思ったし、その上で、この歴史上の人物たちが、そのように生きてそのように死んだのだと知ることが面白い。
対立によるヒートアップ論争を見世物にする風潮が加速した描写は、SNSででかい主語や過剰な表現がはやるのと同じことなんだろうなあと思ってしみじみしました。わたしは"テレビのコメンテーター"なんてよく知らないし、ネットでは見たいものしか見ないから、本当に視野は狭いんだろうな。
ヴィダルはたぶん、バックリーのことは本当にだいっっきらいだと思いますが、死ぬまでだいっっきらいでいてほしいです。かわいいなヴィダルは。バックリーにはなんにも気にせず健やかに過ごしてほしい。噛むハンカチならここにあるぞヴィダル。

ほんとにいろんなことを考える、いい舞台でした。字幕をつけてくれて本当にありがとうございます。

幕間のインタ、ザックの「それで終わり?」に爆笑するヘアウッドさんとつられて笑うザック、かわいかったです。一緒に笑っちゃった。
どうしたらザックに毎日うれしいことが起こるかについて討論する番組があったら参加します。