こゆ
2024-11-14 15:30:07
1609文字
Public
 

その印に嫉妬する

シャチが刺青入れてすぐくらいの時間軸。
いつかペンシャチになる両片思いってほど重くもない、ペンシャチ未満のふたりの話。
たぶん好き同士なんだけど付き合ってない。

※SSの取り扱いについて試行錯誤中ですが複数のSNSで上げてる場合リアクションはお気になさらずに!ベッター内での読んだよのリアクションは貰えたらうれしいです💕
※今までどおり、ひとつの話が短文なのでpixivにはまとめて載せる感じになると思います



※ この作品は無断転載禁止AI学習禁止です(こゆ)






その印に嫉妬する


ペンギンの指が意思を持って皮膚の上を滑っていく。どくどくと音を立てて流れる血流の上をくすぐるように撫でられて、誇張なしに息が止まりそうだ。
「ペン、ギン……?」
返事はない。手袋をしたままの指の腹が、手首の少し上に刻まれた紋様をなぞって腕の反対側までするすると皮膚を撫でながら移動する。そのまま二の腕の皮膚の柔らかい部分に到達した。思わず生理的に身震いすると、目の前の酔っ払いは楽しそうに笑った。
「もう、ペンギンってばくすぐったい」
「んー」
んー、じゃない。こちとら素面なんだぞ。
先程、食堂で酔っ払ったペンギンを回収したときに、シャチも飲むか?なんて渡された酒を断ったのが今更悔やまれた。
しかし、早くペンギンを部屋に連れて行ってくれと、その場の無言の圧を感じた。確かに、意識のない成人男性は重い。移動は意識のあるうちに、がウチの鉄則でもある。酔っ払いはまだ飲み足りないと駄々を捏ねるかと思いきや存外に素直に手を引かれてついてきた。
自分たちの部屋のベッドに酔っ払いを転がせば、何やらにこにこと俺の手首を掴んで離さない。
……あ、ふふふっ、もうかさぶたはだいぶ取れたな」
二の腕まで到着した不埒な指は、また刺青タトゥーまで戻ってきてくるくると楽しそうに撫でた。そして手首は離してもらえないまま、俺の手はペンギンの顔まで持ち上げられて、べろりと指を舐められた。
「ン」
思わず声が出て慌てて口を押さえると、酒気を帯びた赤い顔がニヤリと笑った。不埒な舌は人差し指を飲み込むとじゅるっと音を立てて吸い付いた。
……ッ、ふっ」
「ははっ、シャチのエッチ」
「どっちが!もう、ペンギン飲み過ぎ!」
エッチなのはペンギンだよ!と叫びたいのを、グッと堪える。
手首はいまだに掴まれている。
ちゅっちゅっと、刺青タトゥーを避けるように肌を吸われて、ざらついた舌で手の甲を舐められるたびに、ひっ、と息が詰まった。
まだうっすらと肌の赤みが残る箇所を指で弾かれて、痛痒いそこは素直にピクんと反応してしまう。
「そんなに敏感で、よくタトゥーなんて入れようと思ったな」
「び、敏感じゃねェし……ぜんっぜん痛くなかったって言ったろ」
手首を握る力が強くなって、びくりと肩が震えた。
「シャチ」
名前を呼ぶから、そちらを見ればペンギンにサングラスを外された。そのまま輪郭をなぞり顎を撫でて、指は頸動脈の下まで進み、少し窪んだそこでピタっと止まった。
「ちょっとは痛かっただろ」
からかうような諭すようなそんな顔。
でも、刺青タトゥーの様子を俺以上に観察していることを知っている。最近ずっとだ。気がつけば視線はそちらに落ちていて。こんなふうに目が合わない。
うっすら笑う妖艶とも言える瞳が薄く細められて、ペンギンの日中の清廉な雰囲気と全く違う、淫靡な雰囲気に息を呑む。
ベッドの上に座って手首を掴まれて、急所に指を置かれているだけ。このまま力を込められても、きっと何も出来ない。でも、何もされない。あたりまえの時間にふぅっと、思わず目を閉じた瞬間、パッと熱源が離れていった。
「もう、寝よ。流石に飲み過ぎた。頭ん中ぐるぐるする」
パチリと目を開けると、一瞬にしてただの自堕落な酔っ払いに戻ったペンギンがツナギのまま、シーツにごろんと身体を投げた。
湧いてくるのはからかわれた怒りなのか、肩透かしを食らった切なさなのか、それとも変わらない日常への安堵なのか。わからない。
解放された手首はずっと熱く、施術当日のジクジクとした痛みが蘇ってきたようだった。この熱が引かないのも、ペンギンがやたらと手首ばかり構うのも、まだ刺青タトゥーが安定していながらだと言い聞かせて。
「おやすみ、ペンギン」
そう言って、ペンギンの隣で目を閉じた。




【了】