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九条空
2024-11-14 13:39:51
2466文字
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jojo
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【サンプル】灰をはらうマーメイド・ヒーロー
よろず同人誌に収録予定の短編サンプル
ジョジョ
既知転生/辻彩妹
「あなたって人魚姫なの?」
クラスメイトの女の子に興奮気味に聞かれ、私は首を横に振った。
「声が出ないし、美人だし、足は綺麗だし
……
この学校に王子様を捜しに来た人魚なんじゃない!?」
乙女チックな想像を否定するようで悪いが、私は尚も首を横に振った。
ノートに「褒めてくれてありがとう。でも人魚じゃない」と書いて見せる。しかし彼女はそれでも引き下がらなかった。
「あなたが生物室にあるメダカの水槽をずっと眺めてるの見ちゃったのよ。お魚とお話ししていたんじゃなくって?」
それは本当にただの趣味だ。
水槽内のメダカは、自分たちのタマゴであっても食べてしまうことがあると本で読んだから、水槽内にタマゴがないかと確認を
――
知的好奇心に由来するが、聞く人が聞けば悪趣味と言われるような内容であったので、曖昧な笑みを浮かべるにとどめた。
自分に悪印象を持たれるのは構わないが、私がひょいと吹き込んだ知識でメダカを嫌いになられては、メダカが可哀想だ。
さて、私が人魚姫の疑いをかけられても尚、声を発さないのには理由がある。それを説明するには、私の生い立ちから話さなければなるまい。
……
「私の持論だが。魔法が必要なのは、奇跡が起きねば幸せになれないほど追い詰められている物語の主人公くらいだ」
再び人の子に生まれ変わって数年。私は子供のふりをしようといった努力を放棄していたので、今よりもずっと固い口調で話していた。同世代の小学生とは会話を成り立たせられないことが多く、こんな口調を真似するくらいなら、鬼子だのチェンジリングだのと罵倒されても構わないと開き直っていたのだ。
「楽を求めて魔法に頼るといい目を見ない。人には努力が必要だ。努力が報われるため、ときに魔法が必要な人がいるというのには同意するけれどね」
両親との仲は良いとはけして言えないものだったが、子供が私だけであれば、私はもっと酷い目にあっていたに違いない。そう思うのは、私には歳の離れた姉がいたからだ。
私の奇行、不可解な言動を両親がある程度スルーできたのは、姉を育てた経験があったからと邪推する。姉はときに、人には見えないものが見えると言い、同世代の子たちから、霊感アピールをしたい構ってちゃんだと揶揄されていた。
しかし私は姉のそれを虚言、あるいはイマジナリーフレンドといった、現代で説明できるものではないと確信していた。タネも仕掛けもない状態で遠くのものを持ち上げたり、人の顔から運勢といったものを理解したりするのを見て、私は姉に助言したものだ。
姉さんは特別な力を持っているが、それを多くの人に知られてしまうと、危険な目に遭うよと。
理解したのかしていないのか、姉は魔法使いを自認するようになった。
私にはわからない範囲で『魔法』を成長させたのか、できることが多くなっていた。女子からの恋愛相談に長けていたのは昔からのことだが、今はそれに加え、美容の専門家にもなっていた。
「私の人生には、飛び抜けた力がなければ脱却できないほどの苦難は必要ない。だから私の前であなたは魔法使いでなく、ただのお姉さんだよ」
普段から低血圧っぽい喋り方をする姉は、いつものように吐息を漏らした。
「フー
……
こういうのはあまりガラじゃないけれど
……
あなたがわたしの妹で、誇らしいわ」
天才エステティシャン、辻彩。それが私の姉の名前だった。
「杜王町という街で、独立して店を出すつもりなの
……
フゥ。あなたも一緒に来る? この家、居心地が良くはないでしょう」
「今更私のアイデンティティに干渉できるほどの何かができる父母ではない。居心地の悪い家で育っても私は私のままだろうが、私を変えられるとしたら姉さんだけだから」
私は言った。
「あなたと一緒に居たい」
回りくどすぎるアイラブユーだったが、生まれた時から私を知っている姉は、正しくそれを受け取った。
私は姉とともに杜王町に引っ越し、姉が立ち上げたエステサロンの看板にシンデレラと書かれているのを見て、それでようやく
――
ここがジョジョの奇妙な冒険の世界であることに気がついたのだ。
……
私は、辻彩というキャラクターが死亡することを覚えていた。
なにしろ、前世の私はジョジョの漫画を第四部から読んだのである。友人がそれを勧めた理由はこうだ。四部は死ぬキャラクタが少ないよと。私はそれを信じてジョジョ四部を読み「
……
死んでるじゃないか!」と強く思ったのである。
主人公・仗助の父親、億泰の兄である形兆、仗助たちの友達重ちー
……
それから辻彩。他にもスタンドを発現してとり殺された男などもいたはずだ。ラスボスである吉良吉影が死ぬのはまあ見逃せたとしても、「死ぬ人間が少ないよ」と言うにはあまりにも死に過ぎである。私はそれを少々恨みに思っていたため、次の人生でも覚えていることができた。
吉良吉影は殺人鬼だ。
そして私の姉はエステティシャンだ。他人の美容はもちろん、自分の美も大切にしている。
原作の流れでなくとも殺される可能性は十分にある。
東方仗助がぶどうヶ丘高校に入学したその年のこと。対策のために、私は姉に『魔法』をかけてくれと頼んだ。
「私がこの人だ、と思ったら、周囲が全くみえなくなるほど、相手を私に熱中させられるような魔法をかけてほしい」
「フー
……
それほど強い魅了となると、効果はとっても短時間になるわよ」
「構わない。いつでも、私の思った時に、目の前のその人を魅了させられるのならば」
姉は私の希望通りに『魔法』をかけた。ただし、条件は魔法使いが設定する。
「あなたの声を聞いた人は、一瞬、あなたしか見えないほど夢中になる。発動するきっかけはあなたの声。だから力を使いたいと思ったその時まで、あなたは声を出してはならない」
わかった、と口にすることはもうできなかった。
私は一つ頷いて、それから2か月、タンスに小指をぶつけた時でさえ、うめき声ひとつあげていない。
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