はるお
2024-11-14 00:24:25
1707文字
Public 小説
 

心はここに

ラザハンのポートレート素材がとても良かったので、それにまつわるお話
ヴリ光♀

 最近、冒険者の間で「アドベンチャラープレート」というものが流行っているらしい。

 「アドベンチャラープレート」とは様々なプレートや装飾、シールを組み合わせて作る名札や表札のようなものである。自分のゆかりのある土地のものや、好きなもの、好きな色、様々な様式があり、冒険者それぞれの個性を垣間見ることができる。それをお互い見せ合ってみたり、大量に作って交換したり、そういった楽しみ方をしている者もいるらしい。

 ハルは自室のテーブルの上に広げられた、様々な素材とにらめっこをしていた。冒険者仲間から「作ってみたら?」と勧められ、自分なりにあれこれ素材を集め、またその冒険者仲間からもシールなど装飾に使うものをもらったりして、今まさに製作に挑もうとしていた。
(でもこういうの、向いてないからなぁ)
 と、腕を組んで天を仰ぐ。
 とりあえず土台になるプレートを選んで……、と教えてもらった基本の作り方を思い返しながら、素材をぼんやりと見つめる。
 ふと目に飛び込んできたのは鮮やかな布たち。話を聞いたルヴェーダ製糸局の人たちが「これも使いますか?」と差し入れてくれた端切れだ。赤や青、緑の色とりどりの布たちは、捨ててしまうのが勿体無い美しさがある。
(あ、これ使ってみよう)
 ハサミや接着剤を使い、不器用ながらも形にしていく。
 そうやって格闘すること数時間。なんとなくそれらしい形が出来上がる。
「できた!」
 両手に掲げて、出来上がりを確認する。傾けてみたり、近づけてみたり離してみたり。不得意ながらも、なかなかに上手にできたと頷いてみせる。
 そして、道具や端材を片付けようとした時、一つの小箱が指先にぶつかる。
(あ、忘れてた)
 手に取り、蓋を開ければ中にはたくさんのシールが入っていた。国旗やなにかしらのマーク、また可愛らしいミニオンたちのものまである。冒険者仲間からもらったものだ。
 何か今から貼れるだろうか?と一枚一枚確認する。やがて、一枚のシールで手が止まる。
(っ………これは……
 頬を染めてじっと見つめ、箱に戻そうとしても手放せず、またチラリと見る。うーん、とひとしきり唸ったかと思うと、意を決したように剥離紙を剥ぐ。
 ペタリ、と勢いに任せて自分の絵姿の横に貼り付け、改めて完成されたそれをまじまじと見つめ、思わずふにゃり、と笑ってみせた。




 コンコン
「ハル、いるか?」
 ノックをして扉の向こう側の返事を待つ。しかし返ってくる声は無い。しばらく待ってみたものの、いつまで経っても静まり返っている。「いないのか?」と声をかけながら扉を開く。鍵はかかっていない。
 ヴァルシャンは中の気配を伺いながら、ゆっくりと室内に足を踏み入れた。
 小さなハルの部屋。すぐにその人の姿は見つかった。部屋の真ん中のテーブルで、つっぷして眠っている。その姿に思わず頬を緩めながら、寝顔を覗き込む。なんとも無防備で幸せそうな表情に、これが国を、世界を救った英雄なのだろうか、と疑いたくなる。あまりにも可愛らしいその寝顔にキスを……と思った瞬間、彼女の腕の下に置かれた見慣れぬプレートが目に入る。
(これは……?)
 ハルを起こさないように、ゆっくりとそれを引き出す。彼女の名前、絵姿、自己紹介のような文章。そして色鮮やかな飾り付け。以前彼女が話してくれた『アドベンチャラープレート』というものだとすぐにわかった。
 不器用な彼女なりに頑張った様子が見て取れる。何より、飾りに使われているものや色合いが、このラザハンの色彩やモチーフが使われており、なんとも言えない喜びが湧き上がってくる。そして……
 彼女の絵姿の横。小さなマメットのシール。それは紛れもなく、竜の姿の自分のものだった。それを見た瞬間、ヴァルシャンの口元が甘く綻んでいく。
(ありがとう、ハル)
 胸の奥から湧き上がる、なんとも温かく、甘いもの。プレートを見れば見るほどに、彼女の心は、確かにラザハンに、そしてここにあるのだと教えてくれた。
 手を伸ばしハルの濃い紫の髪をかき分けると、そっとその額に口付けを落とした。