AmexAmexxx
2020-04-09 18:40:21
1647文字
Public bkyi
 

Scandalogers!

現実設定のセフレバケユイ

「そう!誕生日ー、あはは、ありがとうねー。……ん、ケーキ作ったの?すげー!食べたいなー、あーんしたら食べさせてくれる?なんちゃって。いいなー、嬉しい!写真アップしてよ、後でエゴサしちゃう」
 にこにこしながらスマホに喋りかけている男――唯の声を聴きながら換気扇の下で一服。喉がやられたら困るからという理由でベランダか換気扇の下でしか煙草が吸えない。これなら今日は来なかった方が良かったのではないだろうかと思いつつ、化龍は虚空を見上げた。暇だ。
「俺?ケーキ?食べるよー、友達がコンビニでケーキ買ってくれたから。え?亮じゃないよ、うちの相方冷たいんでー、とか言ったらまた不仲説!とか言われちゃう?ないよ俺亮のこと愛してるもん」
 コンビニでケーキを買ってきた――もとい買わされたのは化龍だ。誕生日なんだからケーキくらい買ってくれても良くない?と言われて買わされた。値段の割に微妙な味のショートケーキは冷蔵庫に眠っている。果たして本当に食べるのだろうか。謎だ。
 三本目の煙草の火を消したところで、唯がばいばーい!とスマホに手を振った。そのまま操作、スマホの画面が暗くなった瞬間に大きな溜め息。
「よっしゃ終わったー」
……ねえ何で僕を連れ込んだ上でインスタライブ始めたの君……
「誕生日にインスタライブしますって告知したもんは仕方なくね?」
「男連れ込んでインスタライブするアイドル」
「女の子連れ込んでる訳じゃないから良くない?」
 けろっとした顔で宣う唯の姿をファンに見せたらどんな顔をするのだろうか、とぼんやり考える。世の女の子たちを独り占めする勢いのあるアイドルが言って良いことではない。それでもひとたびカメラを向ければ、彼は「アイドル」だ。アイドルである自分とプライベートは別、とはっきりと言う割に浮いた噂ひとつ出さずにノースキャンダルを貫いているところはプロ意識の高さなのだろう。
 ――そのノースキャンダルの為に、利用されているようなものだが。
「ていうかもうそっち行っていいの」
「いいよー。てか入れば良かったのに、友達って紹介すんのにー」
「『友達』ねえ」
「間違っちゃいないっしょ?」
「君の何万人居るともしれないフォロワーに顔晒す程馬鹿じゃないよ、ネットニュースで全世界にばら撒かれる」
「あっは」
 溜め息を吐く化龍に、唯は可笑しそうに笑う。ベッドに腰を下ろせば当たり前のように膝の上に乗った唯は、そのままぺろりと舌舐めずり。
 『友達』は『友達』でも、ふたりの関係は所謂『セフレ』だ。お互いの欲求不満や利害関係がたまたま一致して体の関係を持ったのはいつだったか。それからずるずると今の関係が続いている。お互いの性的欲求を満たす為の関係だから、恋愛感情は持たない。それが暗黙のルール。
……ケーキ食べないの?」
「化龍は俺よりケーキが食べたいの?」
「君人に買わせといて……
「あはは。後で一緒に食べよ、今俺が我慢出来ない」
 ほら、と腰を押しつけられて、甘く脳が痺れる感覚がする。片手で抱き寄せて口付ければ、呼吸ごと貪り合って。
――さっきまでインスタ見てた人、まさか君がインスタライブ終わってすぐこんなことしてるなんて思わないだろうね」
「はっ……わっかんないよ、今頃俺は亮に抱かれてるんだ!って妄想してる女子はいるでしょ」
「君を抱いてるのは名も知れぬモブとも知らず?」
「モブっつーか俺と亮を引き裂くわるーい間男」
「じゃあ悪い間男に抱かれて白目剥いてダブピでもして」
「お前ぜってー萎えるだろんなことしたら」
 楽しそうに笑いながら、シャツに手をかけて。ちらりと覗く健康的でよく引き締まった肢体に、喉が鳴る。そう言えば彼は抱かれたい男ランキングとやらにもランクインしているのではなかったか。そんな男が男に抱かれているのだから、世の中は滑稽だ。
……いっぱい抱いてくれんでしょ?」
 そう言って悪戯に笑う唯の表情に、『アイドル』は存在しなかった。