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AmexAmexxx
2020-01-02 16:13:06
2522文字
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tksi
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StrawberryMilk
「
……
何が一体どうなってこうなった?」
「す、いません
……
」
「いや、怒ってる訳じゃないんだが」
前日
――
数時間前、疲労困憊の状態でベッドに入ったのは覚えている。何せ疲れきっていて、スイが戻ってきたことには気付いたが身体を起こすだけの元気もなく、おかえり、と言えたかどうかも覚えていない状態で再度意識を手放した。そして今。ふと違和感を覚えた瀧の手首にあったのは、手錠だった。
手錠をかけた当の本人
――
スイはベッドの上に正座しておろおろと視線をさ迷わせている。両手が不自由な状態でとりあえず身体を起こし、座って向かい合いはしたものの、目が合わない。
ちらりと手錠に視線を落とす。ご丁寧に様々な魔術を掛け合わせて施錠されたそれを外すのはそこまで難易度が高いことではないが、寝起きであまり頭の動いていない瀧としてはめんどくさい、という気持ちの方が強い。何より、スイが何を思ってこんな行動に出たのかが分からない。
「
……
ええと、その」
「何だ」
「おやすみ
……
を、して
……
頂こうと思って
……
その」
「
……
休み?」
「近頃、随分お疲れのように見えたので
……
」
「
……
それと手錠とどういう関係がある?」
「
……
いや、あのえっと、手が使えなければ、仕事をせずに済むのではと
……
?」
「俺に聞くな」
――
そんなに仕事をしていただろうか。
考えてはみるものの、分からない。いつも通り、いつものようにやるべきことをやっていただけだ。指揮官を退いてからというものあれだこれだと別の仕事が増えて、結局のところ昔と仕事量は変わっていない。あちこちに顔を出さずに良くなっただけ気楽なもので、あまり意識はしていなかった。疲労が溜まって動けなくなるまで仕事をするのも別段いつものことだ。
心配を掛けているのであればそれは申し訳ないことで、反省しなければいけないのだろうとは思うけれど。その為の手段に手錠を選ぶズレた感覚が、スイらしいと言えばスイらしい。
「
……
まあならこのままでも俺は構わないが」
「えっ」
「掛けた当人が驚くな」
「いいんですか」
「その代わり、お前が面倒を見てくれるんだろう?何をしてくれる?」
何も出来ない、と示すように両手を軽く上げて振れば、かちゃかちゃと鎖の音が鳴る。まじまじと瀧を見るスイの表情は少しだけ嬉しそうで、けれどやはり困惑の色が残っている。
――
これだから。
「えっと
……
ええと、何か欲しいものはありますか」
「喉が渇いた」
「はいっ」
ぱっと立ち上がって、ばたばたと部屋を出ていく後ろ姿を眺める。
――
しかし、何を思い立って急にこんなことをされているのだろう。まだ頭がぼうっとしていて上手く働かない。
考えている間にまたぱたぱたとスイが戻ってきて、どうぞ、と手に持ったカップを差し出される。動くことなくじっとそれを見つめれば、あ、と小さな声。
「すいません手が使えませんよね、ストロー
……
」
「何だ、口移しで飲ませてくれるんじゃないのか?」
「え」
「俺はそのカップも持てないんだが」
持とうと思えば持てないこともないけれど、慌てふためくスイの様子は見ていて面白い。おろおろとカップと瀧の顔を見比べて、恐る恐るベッドの上に乗って近寄ってくる顔を見返す。う、と一瞬たじろいだスイがそのまま動きを止めて。
「
……
フリーズするな」
「え、えと
……
」
「喉が渇いた。飲ませてくれるんだろう?」
「っ
……
」
意地悪は承知の上だ。何とか意を決したのだろう、ようやっと飲み物を口に含んで、その唇が合わさる。そのまま動かないので、飲みようがない。内心苦笑しつつ舌先で唇を舐め上げれば、慣れた甘い味が舌を擽る。
――
イチゴミルクの味がする。
いつもこんな時に入れてくれるのは、甘いカフェオレであることが圧倒的だ。にも関わらずイチゴミルクを入れてきたということは、やはり今日はスイの中で何かあるのだろう。そこまで頻繁には飲まないものの、イチゴミルクが瀧の好物であることはスイも承知のことだ。唇を舐められたことで驚いたらしい、離れたスイの顔を見て、瀧はゆっくりと息を吐いて。
「
……
スイ、何がしたいんだ?」
「あの、本当に、すいません
……
休んで頂きたくて
……
」
「何で」
「
……
だって、その、今日は、瀧さんお誕生日でしょう?」
「
……
?」
言われた言葉に、自分が首を傾げてしまった。誕生日。
――
誕生日?
今日の日付を考える。何日だ。いや、そもそも何月だ?そこから分からない。唯が居なくなってからというものいちいち誕生日だ何だということを祝ってくれる人が居ないので
――
というよりも誰も知らないので、意識から完全に抜け落ちている。スイの誕生日に関しては祝ってあげたくて、時期が近くなると意識するように心掛けているけれど。
「
……
ああ
……
」
「ご、ご迷惑ですよね
……
」
「いや、全然」
人の誕生日など、スイは祝ったことはないだろう。だからどうすれば良いのか分からずに、明後日の方向に行動してしまっているだけだ。これを可愛いと思ってしまうのだから、余程自分の頭はおかしいらしい。
少しずつ覚えていけば良いのだ。こんなささやかなことでさえ。何より、休んで欲しいと思ってくれたその気持ちに嘘はないのだから。瀧自身、誰かを祝ったりするのが得意な訳では無い。
――
だから、これはこれで。
「スイ、俺に手錠を掛ける前に言うことがあるだろう」
「え、
……
あ、お誕生日おめでとうございます
……
」
「ああ。ありがとう」
「
……
ええと、その」
「お前が俺に誕生日くらいゆっくり休んで欲しいというなら、そう言ってくれればそうするし、プレゼントに何かしたいと言うならお前が居てくれればそれで良い」
「でも、いつも俺ばかりで」
「ああ、まあだから今日はこんなものを掛けられたことだし
――
」
手錠を掛けられていても、手は動く。襟元を掴んで引き寄せれば、驚いた顔のスイと目が合って。緩く口元が笑んだのは、無意識だ。
「
――
一日俺の面倒を見てくれるんだろう?」
開いた唇に反駁させずに、そのまま塞いで。甘いイチゴミルクの味がふわりと広がって、心が満たされていく。
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