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AmexAmexxx
2018-06-12 23:00:41
2454文字
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忘れ去られた日々のこと 08
「俺は死んでも構わないから、お前が持ってる情報を俺にくれ」」
開口一番そう言った俺に、永瀬はぽかんとした表情になった。それからきょとんと首を傾げて、少し考え込む。
「
……
いや、ええと、俺
……
貴方じゃ、対価が払えないって
……
話しましたよね
……
?」
「された」
「
……
『憑かれてる』間に
……
頭
……
おかしくなりました
……
?」
「
……
永瀬って割とハッキリそういうこと言うんだな」
ぼそぼそ喋るのに。内気とかそういうのじゃないんだろうなというのが透けて見える。まあ初対面で俺に死ぬだの何だの言うくらいだから、言いたいことはハッキリ言ってくるタイプなんだろう。
払えるだけの対価が、俺にはない。逆を言えばそれほど貴重な情報を、永瀬は持っているということだ。今の俺はそれが欲しい。どうしても。他に知る方法が今の俺にはない。大体若宮のせいだ、アイツに『憑依』なんてされなきゃあ俺にはまだ2ヶ月の猶予があった筈だ
――
まあその2ヶ月で俺が何を出来たかなんて今更分からないし、若宮に『憑依』されたからこそ見えたこともあるし、一概には言えないだろうけれども。
「どうにかして俺にも払える方法って、ないのか」
「
……
ううーん
……
」
「記憶が対価だっていうなら、俺の記憶丸々対価にするとかそういう方法取るのも駄目なのか?」
「
……
それは、面白い
……
提案ですけど
……
道徳的に、どうかと
……
」
「どうせ俺死ぬんだろ、それなら俺がいいっつってんならいいんじゃねえの」
「
……
投げやりは、どうかと?」
「いや、真面目に。正直目の前に情報持ってる奴が居るのに引き下がれるような状況でもねえんだよ」
俺は既に巻き込まれている。後戻りの出来ないところにいる。
……
そう、だからきっと、俺は死ぬんだろう。何となくぼんやりと、その事実を受け入れ始めている自分がいる。いや多分、違う。そうじゃない。このまま事態が進んでいくのなら
――
俺は多分、死ぬのが一番楽な道だ。死んだ方がマシ、とはよく言ったもので。
柳川が何かに巻き込まれている。きっと憂凛はそれを知るだろう。大体憂凛は俺が2ヶ月も行方不明なのを放っておくような奴ではなく、そして柳川はあの碓氷のような何かと行動を共にして俺を探している。どこかで絶対に鉢合わせする。
……
憂凛のことを忘れてしまっている柳川と会った時の憂凛のことなんて、あんまり考えたくない。また、アイツが泣いて傷つくのを見なきゃいけない。勘弁してくれ。憂凛と柳川のことに関しては、もう、本当に
――
しんどい。嫌だ。
「
……
うーん。しかし
……
貴方の人生丸々、となると
……
今度は、貰い過ぎですね
……
」
「じゃあオーバーした分でアイツらの手助けでもしてやってくれ。それでいいよ」
「
……
貴方、死ななかったら
……
どうするんですか
……
」
「そん時のことはそん時考える」
――
何にしろ、生き残れる気はしない。
不思議とそんな気がしているのは、どうしてなのだろう。ここで終わりか、という実感もないけれど、死ぬのだろうな、という思いだけはある。
……
別に構わない。俺が死んだって悲しむ人間なんかいない
――
とは流石に言わないけれど、誰よりも先に死ねるなら、それがいい。誰かが死んでそれを見送るのは、しんどい。
死んだ方がマシだ、なんて思うのはきっと何より無責任で、自分のことしか考えていない最低なことで、きっと他人がそんなことを考えていたら俺は本気で怒るのだろうけれど、どうにもこうにもすんなり死ぬことを受け入れてしまっていて、自分でもよく分からない。ああ、でも多分、俺は思ったよりショックを受けているのかもしれなかった。碓氷が死んでいるであろう、その現実に。
――
しかも、俺とあんなことがあった後に。
俺のせいで死んだだなんて烏滸がましいことを考えてはいないけれど、責任の一端はきっと俺にもあるのだろう。そして大学4年間で得たものを自分の手でぶっ壊して、そして本当にもう二度と碓氷と前のように軽口を叩く日々が戻ってこないことが、
……
考えたくない。
前に進むタイミングを失って。全てをどうにかする方法もなくて。投げやりだと言われれば確かにその通りだ、これを投げやりと呼ばずして何と呼ぶ?いっそ殺して欲しいくらいだ。
ああ
――
駄目だな。頭の中がごちゃごちゃしている。結局のところ多分、俺は、めんどくさいだけだ。もうめんどくさい。何もかも捨ててしまいたいから、死ぬならそれもいいと思ってしまうだけで、多分本当は死ぬ覚悟なんて格好いいものは出来ていない。思うだけなら誰にだって出来る。残念ながら、俺はそういう人間だ。茅嶋さんや、或いは柳川のようにはなれない。どう足掻いたって命を懸けられるようなもののない、ただの怠惰に生きているだけの人間だ。
「
……
貴方、俺に、生き恥全部
……
晒すって言ってるの、
……
分かってますよね」
「ああ」
「
……
いいんですか」
「いいっつってんだろ。目の前の情報が欲しいんだからなりふり構ってられっか」
「まあ
……
貴方がいいなら
……
俺はいいですけど
……
」
後で後悔するかもしれない
――
というか、するだろう。確実に。いつもそうだ。俺はいつも選択肢を間違えて、後悔して、八つ当たりして、そのまま怠惰に生きていく。今回の選択肢もきっと間違えている。だからと言って正解の選択肢なんて分からない俺は、このまま進んでいくことしか出来ない。
正しい生き方が出来る人間なんて、一握りの強い人間だけだ。俺みたいな弱小の人間には、あんな生き方は出来ない。しようともしていない、という事実からは目を逸らす。
……
出来るか普通あんな生き方。真似出来ねえっつの。
「
……
わかりました、では
……
、お話、します
……
」
「
……
いいのか」
「引かないでしょう、どうせ
……
」
呆れきった口調で呟く永瀬は、果たして俺に対して何を思っただろうか。あまり知りたくはないな、とぼんやりと思う。知ったところで、いいことはなさそうだった。
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