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AmexAmexxx
2018-02-14 07:01:26
2852文字
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bkyi
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とろけるキャット
放課後、化学準備室。
こんこん、と扉をノックすると、はいー、とめんどくさそうな返事が返ってきた。来訪者がいるなんてきっと思ってなかった声。
……
サボってるな?ダメ教師。
まあでも、こちらは遠慮なく。失礼しまーす、と声をかけてから扉を開ける。椅子に腰掛けたまんま、めんどくさそうにこっちを見る目。せんせー、生徒にそういう対応はどうかと思いますよー。ていうかふんわり煙草のニオイする。こんなところで吸ってないよねまさか。バレたら大目玉だよせんせー。
「
……
あれ?今日呼び出ししたっけ」
「りゅーどーせんせーは記憶喪失ですかそれともアルツハイマーですかー。今日会うの初めてでしょ」
「そうだっけ。
……
ああ、君のクラスの授業昨日か」
「
……
いや化龍、マジでボケるには早いと思うの」
「ボケてるつもりはないよ」
ちょっとした記憶の齟齬、なんて嘯いて、ようやっと体ごとこっちを向いてくれる。ま、受験シーズンだしクラス受け持ってないとはいえ化龍にもやりことはそれなりにあるんだろう。お疲れ様です。
さて、来たからには目的を果たさなくっちゃ。スクールバックの中をごそごそ漁れば、すぐに出てくるそれ。を、迷いなく化龍の前に差し出す。
「
……
何」
「バレンタインのチョコ」
「
……
学校に持ってくるの一応禁止ってことになってるよね?」
「大友のチョコレートは龍堂先生が見つけて没収してしまいました」
「君ね、」
「ーーってテイで、チョコくらい受け取ってよ、センセ」
本命なんだけど。と付け加えれば、大袈裟なくらいに大きな溜め息。
何回も言ってるのに、まだ冗談だと思ってるの?このひと。何回言っても適当に流されるだけなんだけど。のれんに腕押しとはまさにこのこと。
まあそりゃあ、教師が生徒に告白されてはいそうですかって訳にはいかないのは分かってるけど。フラれたことはないから、案外脈はあるんじゃないかー、なんて思っている。こういう時はポジティブシンキング。
「捨ててもいいから受け取ってくれない?」
「
……
君は何でそんなに僕に好き好き言ってるんだい、本当に」
「え?好きだから」
「勘違いだよ、お子ちゃま」
「大人ぶらないでよ、そこまで大して歳変わんないでしょ」
「君高校生、僕社会人」
「ねえ、本気で言ってるんだけど」
「
……
、近い」
ぐ、と顔を近付けたら、化龍の口から零れる本気の困った声。知らない。引いてあげない。
ラッピングの中身はただの市販のチョコだ。手作りもアリかなと思ったけど、それは多分間違いなく捨てるでしょ、先生。市販のあんまり高くないチョコは、パッと見重さがなくていい。高級チョコとか手作りチョコとか、重たいでしょ。見るからに。
この男、絶対そういうの嫌がるタイプだ、ってのは何となく把握してる。誰にも深入りしない、させない、本性見せない、そういう男。ねえ、そうでしょ?
何で好きなの、って聞かれても困る。だって好きなんだもん。一目見て先生しかいない、って思ってしまった。運命感じちゃったー、とか言えばこの男は絶対に馬鹿じゃないの、って言うだろう。そういうとこが好きなんだけど、分かんないかなあ。分かんないか。
今はじっくり、オトすタイミングを考える時期。とりあえず好きだってちゃんとアピールして、ホントに先生が好きだって信じてもらわないことには次に進めない。
そもそも教師と生徒って時点で難易度高いんだけど、まあ、どうにかなるでしょう。どうにかするし。
「仕事の最中の息抜きに甘味は如何?先生」
「
……
甘ったるいものは別に」
「って言うと思ったからダークのチョコにした」
「
……
ねえ顔近い」
「受け取ってくれなきゃこのままキスするよ?」
「
……
君馬鹿なの?優等生だと思ってたんだけど」
「そして先生に襲われたって職員室に走ってく」
「策士だった」
まあ、そんなことはしないんだけどね?そんなことしたら会えなくなるでしょ、そこまで馬鹿なことしたりしないよ。
こっちが引かないと分かれば、めんどくさくなる。から、渋々でも受け取る。案の定、諦めたように溜め息を吐いて化龍はチョコを手に取った。
「
……
分かった分かった、『没収』ね」
「ふふ、ありがと先生」
「はいもう仕事の邪魔だから帰りなさい」
「煙草吸いながらサボるのって先生の仕事だったんだ」
「ぐ」
あれ図星?まあそんなことだろうとは思ってたけどね。
受け取ってくれたから、離れてあげる。またおっきい溜め息吐かれた。でも今度はどっちかと言えば安心した感じ。
用意したチョコは捨てられるかもしれないけど、受け取って貰えただけ万々歳だ。今日のところはそれでいい。
……
そのうち目の前で食べさせてやるんだから。
「先生好きだよ」
「
……
馬鹿言ってないで帰った帰った」
「はーい。じゃあまたね、先生」
+++
「ーーってことあったの覚えてる?」
「忘れた」
しれっと嘘吐くな。
時は過ぎて1年後。バレンタイン当日ーーはド平日だったのでその前の週末。持ってきたチョコを齧りながらそんな話をしているなんて、去年は考えもしなかったよね、みたいな。
「ていうか僕にチョコ持ってきたんじゃないのかい君。何で姫が食べてるの」
「ここのチョコ食べてみたかったんだよねえ」
「自分で買いなよ」
「いやだから自分で買ったよ?てか化龍去年あげたチョコって結局どうしたの、捨てた?」
「
……
何だかんだつまんだ、確か」
「あれ、そうなんだ」
てっきり捨てられたと思ってた。食べたんだ。
あの頃は全然口説けてなかったからなあ。あの半年後にはこんな関係になってるなんて、本当に世の中何が起きるか分からない。まああの手この手使ったのこっちか。
ミルクチョコをもうひとくち。えー、というブーイングが聞こえる。何、欲しいの?去年はチョコをどうやって受け取って貰うかだったのに。面白い。
チョコを咥えてん、と指差すと盛大に溜め息吐かれた。えー、なに、だめ?ひょい、と身体を起こして顔を近づければ、冷めた目でチョコに食いつかれた。
ーーけち。チョコだけあげる訳ないでしょ。そのままがぶりと噛みつくようにキスをすれば、ちょっといらっとしたんだろう、頭を抱き寄せられてがっつり頂かれる。んん、あまい。口の中のチョコの甘さが、舌に全部拭われて持っていかれる感じ。
「
……
っ、ん、」
「
……
あっま
……
」
「はっ
……
当たり前でしょ、ミルクチョコだもん」
「ダークないの」
「いやその前に化龍用に別にちゃんと持ってきてるんだけど」
「それ先言って!?」
がっついたのはそっちですー。あはは、可愛い。
ーーしあわせだなあ、なんて。ふと思って、笑ってしまう。来年もチョコあげられるように頑張らないとね。出来れば、その先も。
でもまあ、今はとりあえず。この甘い幸せを甘受するの、許して欲しい。
……
たまには、悪くないでしょ?
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