AmexAmexxx
2017-11-29 16:49:22
2954文字
Public bkyi
 

寂しんぼキャット


 つまんない。

……だからって人の家に押し掛けるな」
「いーじゃん瀧もヒマでしょー、スイとデートの予定もないでしょー」
「それとこれとは話が別だろう」
「つれない男だな」

 冷たいなあ、というブーイングに目の前の男に思い切り溜め息を吐かれる。ハイハイごめんね、お前はひとりで過ごすのが好きな男だよ分かってるよ。でもこうやって急に甘えても怒らないから好き。
 今週末は化龍に会えない。何ならテスト期間に入るので来週も会えない。つまらない。仕事と私どっちが大事なの、なんて言う馬鹿な女ではないから、素直にわかったー、って言ったけど。……言ったけど。
 さみしいなあ。分かってる、毎週末会えるとは限らない。懇親会とかテストの用意とか勉強会とかあと大人の付き合いとか何もかも全部なくなってしまえ。

「カフェオレでいいか」
「やだブラックコーヒーがいい瀧のカフェオレ甘過ぎ」
「そうか?」
「そうだよ」
「スイは普通に飲むぞ」
「あの子瀧が好きなもの何でも好きでしょうが」

 瀧のこと大好きなんだから。好きな人に好み合わせたい気持ちも分かる。かわいー。
 ていうか今軽いノロケだったよね何なの喧嘩売られてんの。こっちは彼氏に会えなくてさみしいってごねてるのにー。でも瀧が幸せそうだとこっちまであったかい気持ちになる。やっぱ嬉しい。

「ほんとスイは瀧のどこが良くて……
……その台詞、スイはお前にだけは言われたくないと思うぞ」
「えー、まあね瀧はね顔は良いしかっこいいし分かんなくもないけどね、懐に入れてくれた人間には優しいしね。でも瀧って社会的にはダメな人間だよね」
「俺に八つ当たりするな」
「八つ当たりくらいさせろー。ああもうほんとは浮気してたらどうしよう殺しちゃう」
「それは俺も協力する」
「持つべきものは最高の幼馴染み」
「態度を急変するな」

 呆れられた。でも何だかんだ瀧は味方で居てくれるから、嬉しい。
 先生を好きになったって言った時、瀧にすごい怒られたし。やめとけって言われたし。またそれが従姉のおねーちゃんの親友の親戚で、それでもってつまりは瀧の恋人であるところのスイの親戚であることが発覚した時にはふたりして止められた。
 特にスイの方にはすごい言われたのだ。あの男だけはやめておいた方がいいとかあの男に唯さんは勿体ないとかあの男は人間として駄目だとかすごい言われようだった。そもそもどんな理由があったって生徒に手を出す先生の時点でほんと駄目だよね。好き。ふふ。
 まあでも倫理的な話をするなら瀧とスイは弱い。なんせ大学生と中学生のカップルだから。その上男同士だったりするからマイノリティで肩身が狭い。こっちとしてはそういうのに偏見とか全然ないしふたりが仲良しなの可愛いし幸せで居て欲しいと思ってるから、……いいじゃん好きになった男が先生でダメなオトコでも。
 好きになっちゃったものは仕方ない。馬鹿な女じゃないけど、駄目な女なのかもしれないなあ。

「最近スイとどーなのー?」
「別に」
「いつも通り仲良しなようで何より」
……お前の方がどうなんだ」
「ん?まあ何だかんだ上手くいってるとは思うんだよね」

 多分ね。化龍は学校ではボロ出さないように頑張ってるし。それはこれからも頑張ってもらおう。
 週末会うのもちゃんと変装して行くし、カノジョとして会う時は姫、って呼ばれてるし。今んとこ周りには疑われてないし。うん、大丈夫大丈夫。誰にも何も言われてない。

「どうせ週末会ったらセックスしかしてないんじゃないのか」
「げほっ」
「図星か」
「瀧さんさあデリカシーっていう日本語知ってます……?」
「知るか」
「てめえ」

 こういうことを涼しい顔で平然と言うから人間性に問題あるって言われるんだよお前?男前だから許されてるんだよ分かってる?
 ……まあ実際そうなんだけどさ。だってガマン出来ない。平日ガマンしてるんだからいいじゃん。キスしたら最後、もっともっと、ってなってしまう。
 そもそもどこかに出掛けたりとか、そういうの出来ない。変装してても、誰かに見抜かれてバレちゃうかもしれない。そしたら化龍は絶対教師やめなきゃいけないし。
 迷惑掛けたくて好きになった訳じゃない。ていうかそれこそ、口説き落としはしたけど、誰にも渡したくないけど、迷惑になるんだったら最終的に身を引く覚悟くらいは出来てる。
 いいよ別に身を引いても。今のうちにいっぱい好きになってもらっておけば、卒業した後もっかい口説き落とせばいい。その時は絶対ガマンする。……、うん、する。

……どこにも出掛けられなくて猿みたいにひたすらセックスして、それでいいのかお前は」
「心配してくれてるのすっごい分かるけど他に言い方ないのかなこのひと」
「事実を述べてる」
「まあね。……いいんだよ全部覚悟の上だからー」

 先生好きになった時から、色んなことはいっぱい覚悟したから。
 そりゃ普通の恋人みたいにデートしてー、みたいなの、やってはみたいけど。そうそう簡単じゃない。世の中どこで誰が見てるか分かんないんだし。
 いや正直、一緒にいれるならそれが1番いいから、どこでもいいんだよね。やってみたいのとやりたいのはまた違う。
 ……しまったなあ、と思うのは。手に入れたら、さみしくなってしまったことだ。手に入らない時は会えないのも当たり前だったけど。……さみしい。会いたい。困らせるのもやだし調子に乗ったらやだから言わないけど。

「いいこともあるんだよ。週末会う為に平日遅くまで頑張って仕事片付けてるんだってー。最近勤務態度良くなったって言われてるの聞いた」
「寧ろ前はどれだけ酷かったんだそっちの方が気になる」
「あはは」
……今のところは大丈夫なんだな?」
「大丈夫。てか、好きなんだもん、仕方なくない?」

 じっと瀧を見る。お前だってそうでしょ。相手が中学生だろうが男だろうが、好きになったから一緒にいるんでしょ。
 同じように見返されて。目を逸らしたりはしない。逸らしたら負け。相手が瀧だから、余計。全部見抜かれるから。
 心配してくれてる。分かってる。しあわせでいて欲しいのは、お互い様だよね。

……まあ暫くは静観してやる」
「わあ上から」
「週末会えないからって学校で馬鹿やるなよ」
「分かってますー」
「あとお前はいい加減俺に化学と物理の家庭教師をやらせるのをやめろ」
「いや本当に頭の良いひとが傍に居るの助かる」

 出来る努力はしてる。化学と物理、ほんとに苦手。それでも物理は授業聞いて頑張れるけど、化学は全然だめ。授業聞けない。声だけ聞いてて何言ってるか全然理解出来ない。45分、どれだけ幸せだと思ってんの。
 でも、赤点だけは取らないようにしないと。それなりに成績取らないと。優等生やってる分、いっこだけ成績悪い、なんてホントに怒られる。

「ところで瀧、この間美味しそうなイチゴのスイーツあるお店見つけたんだけどー」
「どこだ」
「食いつき早過ぎだろお前。連れてったげるからカテキョよろしくね?」
……そうなるのか」
「勿論」
……全く」

 釣れた。