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AmexAmexxx
2015-03-16 23:36:05
2131文字
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50:50
人生というものは幸福と不幸が大体フィフティ・フィフティだという論がある。
1%でも幸福が不幸を追い越せば人生勝ち組、とか。
そういうのは幸福だからこそ言えることで
―――
だからと言って俺は不幸だと悲劇ぶるつもりなど微塵もないけれど
―――
悪いことが続いた時に「その分いいこともあるよ」、なんて気休めの慰めを口にされるのが俺は死ぬ程嫌いだ。
幸福と不幸は釣り合わない。
幸福というものは軽く、あっという間に忘れ去られていくもので。
不幸というものは重く、いつまでも錘のようにのしかかってなかなか減らない。
フィフティ・フィフティ。
それが本当だとするのなら、その天秤を釣り合わせる為に、ひとつの不幸にどれだけの幸福が必要なのだろう。
―――
…
くだらない。
まったくもってくだらない。
最後に笑って死ねたらそれでいいじゃないか。
フィフティ・フィフティである必要が何処に在る?
今の俺には、そんな未来も見えないけれど。
+++
「上がったよ、渚くん」
「
…
あー」
ラブホテルの一室。
情事の後の気怠い雰囲気に身を任せつつ毒のような煙を吸い込んで、俺は適当に返事を返す。
めんどくさいながらもシャワーは浴びて帰っておけば後が楽だ。
ただちょうどさっき煙草に火を点けたところだ、っていうのが。
…
タイミングの悪い女だな。
「入らないの?」
「
…
もうちょいしてから」
「そっか」
うるせえ。
俺の機嫌がそれほど良くないことは察したのだろう、それきり女は黙った。
ぎし、とベッドの軋む音。
少しだけ、マットレスが沈んだのが分かる。
…
この女と付き合い始めたのは何時だったか。
そろそろ一ヶ月くらいは経ったのだろうか。
酒の席で適当な返事を返していたらいつの間にか付き合っていることになっていた。
まあそれ自体は別に構わない。
俺の彼女になりたいなら勝手になっていればいい。女は『彼氏』というアクセサリーが欲しがる生き物だ。
彼女にとって俺は道具でしかない。
なら俺も彼女を道具として扱うだけだ。
愛とか恋とか好きとか嫌いとか。
めんどくせえ。
何をしたって手に入らない苦しさも知らない癖に、俺が好きだとか愛されたいとか宣う女は本当にめんどくさくて、そういう奴はあんまり相手にしたくない。
アクセサリー感覚で一緒に居るくらいでちょうどいい。
軽いだの酷い男だの影で散々言われていることは知っているけれど、俺からすればお前らの方がよっぽど軽いしよっぽど酷い女だっつーの。
「
…
ねえ」
「
…
なに」
「もっかいしてく?」
「
…
お前シャワー浴びたんじゃねえの」
「渚くんまだじゃない。
…
気晴らしになると思うけど」
この女は、聡い。
今までの他の女と違って、少しくらいは長続きするんじゃないだろうか、と思う。
そこに余計な感情がないからだ。
彼女はきっと『次』を見つければ、俺から離れていくだろうし。それまでの『繋ぎ』だ。
「
…
好きにすれば」
「んじゃ、好きにする」
触れる唇。
折角履いたジーンズにかけられる、綺麗にネイルを施した手を眺めながら、ふと考えてしまう。
…
アイツも。
こうやって女になっているのだろうか。
俺の知らないところで。
誰かに触れて、誰かに触れられて、大人になっていくのだろうか。
大人に
―――
なったのだろうか。
『あの事件』からアイツは変わった。
子供っぽさは鳴りを潜めて、『女の子』から『女』へと変わっていった。
俺は眺めていることしか出来ない。
いつの間にかアイツから俺は必要なくなって、切り捨てられて。
いつか他の人のモノになって、他の人の腕の中で笑うアイツを、俺は見ることになるのだろう。
…
あまり考えたくはない未来図だけれど。
それでもアイツが幸せならば別にいい。
笑っていてくれるならそれでいい。
フィフティ・フィフティ。
アイツの幸福と不幸が釣り合う為なら、俺は自分の幸福をアイツに投げ出しても構わない。
笑って死ねなくても構わない。
…
アイツの悲しそうな泣き顔を見ずに済むのなら、それで充分だ。
不幸が幸福を凌駕しようと、不幸しかなかろうと、別に構わない。
俺に与えられる幸福は、全部アイツのものでいい。
「渚くん、」
艶っぽい女の声が俺を現実に引き戻す。
身体にかかる重みを受け止めて、無造作にその身体を抱き寄せれば、女がくすくすと笑う。
「
…
ンだよ」
「なんでもない」
「
…
ゴムまだ着けてねーぞ」
「着けてあげよっか」
「
…
その爪でつけんな」
破れんだろどう考えても。
溜め息を吐いて、煙草を灰皿に置いて、代わりにアルミの袋に手を伸ばす。
ああ、きっと。
アイツもこんな風に誰かに抱かれているんだろうな、と。
一瞬だけそう考えて、振り払う。
―――
苛々する。
「無茶苦茶にしていいよ?」
「
…
して欲しいのかよ」
俺の質問に、女は笑う。
艶やかに。
―――
…
ったく。
俺の上に乗った体重をそのままベッドへと沈めて。
触れた唇は、冷たかった。
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