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ギャビィ
2024-07-29 19:04:41
2146文字
Public
その他
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無題
クロアチアとラグーザ モハーチの戦いの後 書きかけ
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2
「いってえ
……
」
ベッドで寝ていた少年は目を覚ますと同時に身体の痛みに顔を歪めた。無理やり身体を起こすのと同時に被っていた布がずり落ちて胸元に巻かれた包帯が顕になる。ベッドの上で座り込んだまま、昨日と大して変わらない自分の身体の様子に少年は大きな溜息を吐いた。石造りの家の窓からは眩しい外の光と水の音が漏れ落ちてくる。自分の土地とは違うその情景は、少年に彼が相棒と別れた夜の草原の匂いを懐かしく思い出させた。
「おはようラグーザ」
石造りの冷たい壁をつたいながら階段を降りると、この部屋の主が呆れた顔で少年を出迎えた。
「やっと起きたんだおにいちゃん。もう昼前だよ」
「悪い、何か食べ物もらえるか」
「はあ、この穀潰し
……
なんてね! 可哀想なおにいちゃんのためにテーブルの上にパンがあるよ」
「少しは本音を隠してくれよ」
「だっておにいちゃん最初は3日だけ匿ってくれって話だったじゃないか。それがもう2週間だよ」
帳簿が狂っちゃうよ。かわいらしい顔で冷たく言い放つラグーザに、少年はまたため息を吐いて、瞬間胸の傷が痛んで顔を歪めた。ラグーザが目敏くそれに気づいて「まだ治らないんだ」と、淡々としながらも少しだけ心配そうに呟いた。
「珍しいねえ。ボクたち、そんなに怪我が長引くことないと思ってたけど。まあボクは怪我なんてヘマしないけど」
「お前は外に出ないだけだろ」
「そうさ、おにいちゃんたちのような目に遭うのはごめんだからね」
こっちきて傷見せなよ。そう言って少年を椅子に座らせたラグーザは、棚の上から木彫りの箱を持ってきてすぐ横に置いて、少年の胸の包帯を外していく。胸の痛々しい傷が顕になるとそれをジッと見た。傷はかろうじて塞がって血は出ていないけれど、まだ熱を持って膿んでいる。
「薬塗って包帯替えとくね」
「いッ!その薬すげー染みる」
「情けないなあ。セルビアなんて傷だらけになってもけろっとしてるのに」
「そりゃあいつがおかしいんだよ」
「それもそうだけど
……
はい終わり!」
包帯を巻き上げて仕上げとばかり軽く叩かれて少年がうっと声を詰まらせた。ラグーザは何も言わずにパンの入った皿を差し出した。少年は俯いたままだ。
「食べないの、おにいちゃん」
「俺はもう、このまま死ぬのかも」
少年が暗い声でそう呟いて、ラグーザはかわいらしくぱちりと睫毛を瞬かせた。そうして大袈裟にはーっとため息をつく。
「これくらいじゃボクら死なないよ!」
「じゃあなんで治らない」
「さあ、栄養たりてないんじゃない? ほら、パン食べなよ」
「足りてないのは栄養じゃない。お前だって知ってるだろ。俺はどんどん小さくなってもうほとんど残っちゃいないんだ。巷じゃクロアチア王国の残部の残部、なんて呼ばれてるんだぞ!」
「王国が残ってなくともすぐに何だって消えちゃうわけじゃないよ。セルビアもボスナもピンピンしてるよ」
「じゃあ何が足りないんだ」
「おにいちゃん潮風が合わないのかもねえ」
「暢気なもんだなお前は」
ラグーザはへらっと笑って、それからベーっと舌を出した。そんな仕草さえかわいらしく見えるのだから、このラグーザという国は末恐ろしい。身内ながら少年は薄ら寒くなって背筋をぶるりと震わせた。
(次ページに小ネタ)
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