ギャビィ
2018-11-05 23:36:14
1924文字
Public クロセル
 

無題

クロ♂セル♀ SFRJでやや成長期きてたら可愛い

 そろそろ起きないと。
 頭を重くする眠さをなんとか押さえつけて、ベッドサイドのアラームのボタンを乱暴に殴りつけた。そのついでに隣の毛布の山に拳を1つ落とす。イアッと、ちっとも可愛くない声がひとつしたので、とりあえずそれで放って置いた。うにゃむにゃと言葉になってない呻き声を聞きながら、服を着る。なかなか起き上がらないそいつに向かって、今度は床に転がっていたクッションを投げつけた。何でこんな所にクッションが有るんだろうか、と考えかけてすぐに止めた。もっと強く投げれば良かった。それから、洗面所にいって顔を洗って歯を磨いてヒゲを剃って、それなりに時間が経ったはずなのに、メインルームに戻るとまだセルビアはベッドの上に座っていた。しかも尚悪いことに、未だに服すらまともに着ていない。
「おい、チェックアウトの時間!」
 さっさと動けよ!というつもりで声をかけたが、何を思っているのかセルビアは首を捻って自分の胸をぺたぺたと触っている。
「セルビア!」
 名前を呼んでジッと睨むと漸くこちらに目を向けたが、口から出てきたのは「ねえ、私胸大きくなってない」という巫山戯た科白だったので、もうそれから無視することにした。もう此処に置いていこう、そうしよう。
「ねーフルバツカー」
……
「フルバツカさァ、胸大きい女の子好きだよねえ」
……お前いい加減殴るぞ」
「そう言えばさァ、フルバツカもまた少し背伸びたよねえ」
 寝惚けてんのか本気なのか、セルビアがうーんと唸りながら意味のわからない事をつらつらと喋っている。喋りながら詰まらなさそうに、セルビアが自分の胸を軽く持ち上げてみたり揉んでみたりする度に、それが揺れるのが視界の端に入った。丁度床に落ちていたセルビアの下着をベッドの方に適当に投げつけた。わっ、と軽く驚いた声が上がるのを無視して背を向ける。さっさと荷物まとめてチェックアウトだ。
それから暫く一向に動く気のなさそうな彼奴に苛々としながら黙って荷造りをしていたけれど、「ねえねえ、私たち今何歳くらいに見えるのかな」という声が聞こえて思わず手を止めた。振り返るとセルビアは相変わらずまだベッドの上に座ってによによと笑っている。因みにさっき投げてやった下着はまだ着けてない。
「でも多分私のほうがーー」
「絶対俺のほうが年上に見えるだろ」
 予想通りにセルビアが言いかけた言葉を遮って、先手を取った。此奴より年下に見られるなんてあり得ない。俺のほうが遥かにしっかりしてるし、頭も良いし、頼りになるし、格好良い。けれども納得してないらしいセルビアは途端にえーっ、と大きな不満の声を上げて、ワァワァ喚き始めた。絶対私のほうが年上だよ!だって私のほうがちゃんとしてるし、お姉さんだし、可愛いし、胸大きいし!とか何とか。まるで話にならない。大体未だに服もまともに着てない奴にそんなこと言われても説得力に欠ける。さあ、無視無視、無視だ。俺はまた荷物を詰め始めた。
「ねえ、聞いてるのフルバツカ!」
「あーもう煩い!くっ付いてくんな!」
 食い下がるのを止めずに首に腕を掛けてきたセルビアの、煩い声が聞こえる右肩辺りを目掛けて裏拳を入れると、良い具合にぎゃんっと悲鳴が聞こえたので鼻で笑ってやった。さあて、この隙に部屋を出るぞ。行きはいつの間にか無理やり俺のスーツケースに入れられていたセルビアの服を、嫌味たっぷりにきっちり畳んだまま床に出しておいた。じゃあなセルビア!と明るく言って振り返ると、早くも復活していたらしい彼奴がひとの顔目掛けて右の手をグーにして出してくる。予想済みなんだよ、わっかりやすいんだよお前。その拳を易々左の手の平で受け止めると、瞬間腹にボディーブローを入れられた。くっそ、
「てっめ、この野郎!」
「私のこと置いてったらどうなるか分かんないの?スロベニアに1人分の飛行機代無駄にしたって怒られる上に、無人島で4泊5日の友愛と統一研修になっちゃうよ?それ位も分かんないの?フルバツカ馬鹿なの?」
「その場合はお前も一緒に島送りだし俺はちゃんとチェックアウトに間に合わせようとしてたし足を引っ張ったのは全部お前だセルビア!そうバラせば情状酌量が認められるんだよ!馬鹿はお前だこの野郎!」
「野郎じゃない!」
「煩いさっさと服着ろ馬鹿!20分しか待たねーぞ!」
「分かった!」
 セルビアがやっと慌ただしく動きはじめるのに、舌打ちをして腕時計に目を遣った。チェックアウトの予定時刻まで20分ジャストだった。やっぱり15分で何とかしろ、と言おうとして顔を上げると、まだ下着姿のセルビアの胸が目の前で揺れて、危うく死ぬかと思った。