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溶けかけ。
2024-11-13 20:52:20
849文字
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ほぼ日刊
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夜闇に紛れる
五百年の舞台の上で、たった一度だけ間違ってしまった二人のお話。
人の気配を感じて、ヌヴィレットは目を覚ました。深い眠りというものは彼にはなく、いつも通り夢と現の境を彷徨う意識が現に寄った、というだけなのだが。
「わあ!? 起きていたのかい
……
」
そのまま、寝ていた方が良かったのに、ヌヴィレットの上に跨っていた侵入者はくすくすと笑った。
「こんな夜更けに何の用だ、フリーナ殿。神と云えど、許される行いでは
……
」
ヌヴィレットが身動げば、膝の上のフリーナがころん、と転がった。彼女は何事もなかったかのように立ち上がるとヌヴィレットの髪を束ねるリボンを取り払う。
「ちょっと借りるよ
……
っと、うん。似合う、似合う」
フリーナはヌヴィレットの両腕をリボンで結ぶと満足そうに頷いて、彼の膝の上に乗り直す。
「フリーナ殿、答えたま
……
」
「しーっ
……
あんまり大きな声を出すと誰か来ちゃうかもよ? 僕はそれでもいいけど」
「
…………
」
「うん
……
。キミはそれでいいんだ
……
ヌヴィレット」
賢く口を閉ざしたヌヴィレットの頭を一撫ですると前髪をかき混ぜた。
「フリーナ
……
?」
「
…………………
今だけはキミの恋人に
……
なんてね。僕のことは情婦とでも思うと良い」
フリーナはジャボを外すとヌヴィレットの目を隠す。隠した拍子に柔らかな感触が顔に触れ、ゆっくりと離れて行った。
「今から始まるのは、一方的な暴力だ
……
キミは僕に憤らなければならない
……
ああ、見てはいけないよ」
フリーナの歌うような声が夜の静寂に紡がれては消えていった。
「これでよし
……
」
ヌヴィレットの視界が不意に暗くなる。たおやかな布が取り払われた先に彼女の姿はなかった。
「フリー
……
」
「見るな
……
僕の愚かな姿を
……
」
ヌヴィレットの顔に影がかかる。それがフリーナの腕であると気付くのにわずかな時間を要した。
「ごめん
……
今日のことは忘れて、なんて身勝手なことは言わないから
……
」
弱々しい声にヌヴィレットの時が止まる。彼の中の時計が再び動き始めたとき、既にフリーナの姿はなかった。
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