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砂塵
2017-01-15 00:27:42
2213文字
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温度
第六回文アルワンライに参加させていただきました!!お題は【風呂】。性的な描写はありませんが腐注意です。織田徳。
『はあー・・・・・・』
湯船に二人で浸かり、揃いも揃って深い息を吐くのだった。
【温度】
「なんで風呂ってこんなに癒やされるんやろなあ・・・・・・」
織田は壁に後頭部をもたれさせながら呟いた。僕は首まで沈み、その意見に賛同する。
「全くもってそのとおりだよ・・・・・・」
「せやなあ・・・・・・ってしゅーせー!? 沈みすぎや!」
全身から疲労がごっそりと削げ落ち、反対に重力に逆えなくなった僕は沈んでいくばかりであった。じわりと体にぬくもりが広がっていく。その心地よさに意識を持って行かれそうになった僕は、気がつけば織田に腕を支えられていた。
「寝るのはええけど、溺れるのはあかんで?」
「んー・・・・・・」
「本当に分かってるんかいな」
支えがなければ沈んでいってしまうため、織田の肩に頭を置いた。織田は少しだけ体を強ばらせたが、僕は気にしないふりをした。そんなに僕と接触するのが嫌なのだろうか。
そんなことはないと思うが
――
、念のため織田の顔色を下から伺うと、平然とした態度で見返してきた。
「どないした?」
「別に・・・・・・」
白い肌に浮かんだ牡丹の色がやけに艶めかしく、僕は再び見ていないふりを決め込むのだった。
「寝てしまうのは仕方ないだろ・・・・・・ここ最近でずっぱりなんだから」
「せやなあ・・・・・・ずっと潜っとるもんなあ・・・・・・」
はは、と織田の乾いた笑いをどこか遠くのことのように思いながら、織田の肩に額をぐりぐりと押しつけた。
「もうしんどいよ・・・・・・」
「今日は偉いあまえたやなあ。そういうのは恋人にするもんやで」
それを聞いた瞬間、僕の体はぎくりと硬直した。そういうものなのかもしれない。確かに最近の織田と僕は異様に距離が近い気がした。本当はその理由も分かってはいたのだが、僕はいまいち踏み切れないでいた。
だってそんな、僕が織田を好きだなんて。
織田は確かに顔が整っていて、性格も僕と違って明るい。気が配れる性質で、仲間との掛け合いもうまくやってくれている。最初の頃からの仲間であり、最前線に立って共に闘ってきた。
でもそれだけだ。
それだけしか、僕と織田の間にはないのだ。
他の人より多くの時間を共有している分仲はいいだろう。しかし他の文豪が来たらそう言えるのか? 以前彼と親しかった文豪が来たらどうなるのか。それを考えると胸が苦しかった。
「いいじゃないか。・・・・・・今くらい」
だから今この時くらい彼の近くにいたっていいじゃないか。
自分でも過ぎた理論だということは分かっていた。湯に顔を沈めたくなるが、いかんせん行儀が悪すぎる。火照った顔が更に熱くなる気がした。
「しゅーせー・・・・・・」
するりと。
行き場のない僕の手に、織田の指が絡まった。
水中で手を繋がれたため、ひどくふわふわしている。僕は手でなく、思わず織田の顔を見た。
やけに色のある繋がれかたをされてしまった。ただでさえうるさい心臓が、更に加速する。血がぐるぐると巡っているのを感じた。
「今だけやない・・・・・・これからもしてほしい」
織田はもう片方の手で僕の濡れた髪を払う。高い体温の瞳は、僕にどう言おうか揺らいでいるようだった。
「秋声、いつも思いつめた顔してん・・・・・・。ちょっとぐらいわしに甘えてほしいわ」
具合が悪いときは青ざめ、冷たい皮膚が、血色の良い状態で僕に触れてくる。頬を撫でた織田の手は、震えていた。寒いわけではないだろう。ならばなぜ震えているのか。僕には分からなかった。
甘く濡れた瞳が近づいてくる。僕はのぼせた視界で、彼の色づいた唇が動くのを見ていた。
「わしがいつも秋声をどんな目で見てるか、分からんやろ」
「・・・・・・それって、」
「秋声、オダサク、先に入ってたん・・・・・・だ」
そのとき、重治が堂々と銭湯に入ってきた。がらりと躊躇のない開閉の音が聞こえる。僕と織田は反射的に手を離したが、目聡い重治は何かを察知したようだった。
「・・・・・・えっ、あっ、ごめん」
重治は顔色一つ変えなかったが、言葉が出ないところを見るとかなり動揺しているようだった。しかし重治が何に動揺しているのか僕には分からない。先ほどの織田とのやりとりは・・・・・・確かに人目につくと困るが。
「おい中野。いつまでそこに突っ立ってんだよ」
重治の背後から声が聞こえる。中原だ。重治の後ろに立ち、眉間に皺を寄せていた。重治は動揺を隠しもせず、中原を入らせまいとした。
「駄目だよ中原・・・・・・! 今お取り込み中だから・・・・・・!」
「ちょ、ちょい待ちい!! シゲちゃん、なんか誤解して・・・・・・!」
「なんだよしゃらくせーな。そういうことなら先に言えよ」
「中也もそこはツッコんでえ・・・・・・!」
織田は慌てて立ち上がり、弁明しようとしているが、なにやら楽しそうにしている重治と中原には聞こえていないようだった。
・・・・・・そんなに弁明するべきことだっただろうか。
複雑な気持ちでいると、弁明を諦めた織田はため息をついて、振り向いた。
「しゃーないな・・・・・・。しゅーせーも行こ。長風呂はよくないで」
「・・・・・・うん」
脳天気に笑う織田につられ、差し伸べられた手をつかんだ。
のぼせた頭で、まあいいかと思いながら。
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