海星✴︎memories 4 > 最終章(全4話) <

海星(実装時から一年経った18歳)の未来にに繋がる物語。

※第一話に🚨首を○める表現があります。

⚠️無断転載を行うこと、AI学習に使用は禁止です。理性ある行動でよろしくお願い致します。


3月1日
異変はいつから起こっていたのかすら気づけなかった。なんでこんな状況になってるのかすら当事者にならなければ理解などできなかったと思う。
扉を開けた先で自分の主が、海星が家族と呼ぶ彼女に首を絞められてるなんて誰が考えられた?
ーーーー数時間前に遡る。

pm.19:23
春先でまだ寒い時期海星と晩御飯を食べ終わった後の頃だった。ロザリーが突然訪ねて来た。海星と決め事にしている“休日のヘアケアの日“ではなく平日に突然……何かあったのかと思い良明くんが声をかけると『海星に用事がある』とだけ言われずかずかと家の中へと入って行かれた。
海星はというと呑気に茶菓子を食べており突然現れたロザリーの姿に「あれ?ロザリーどうしたの〜」とのほほんと話しかけている。そんな海星を見つめながらロザリーは一言「海星、貴女とした“あの日の約束“果たしに来たわ」と言った。
海星とロザリーが階段を登ってゆくのを見送りしぃと静まり返ったリビングでひとまずお茶でも飲むかと普段通りの行動を取る良明くん。休日のヘアケアの日ではよくある事で別段なんとも思わなかったがロザリーが海星へ放った言葉、“約束“……実はその内容を良明くんは知っていた。前に海星からチラッと聞いてしまったのだ。2人が言うその約束とやらは【ピアスを開けること】らしい。その内容を話す時の海星はとても嬉しそうでその時の笑顔をふと思い出しそれが叶う日が今日か〜なんて考えつつ開けた後の処理大事だよな氷とか用意するか?とぼんやり考えていた……そう、それまでは良かった。

ーーーーー『異変』はその20分ぐらいしてから起こった。

やたらと海星の部屋が騒がしいと思った。初めはどしん!と何かが床に落ちる様な鈍い音から始まり、そこからどっしんばったんと下の階にいても分かる程の音の鳴り様。流石に良明くんも不信がらずには居られなかった。まぁ、よくて虫が出たとかでロザリーさんが対処するなかで海星が大袈裟に暴れてるのか?なんて……そんな予想をしながも心配な心と共に何か手伝えないかと海星の部屋へと良明くんは向かった。
ドアの前まで来てノブに手をかけようとした時、海星の部屋のドアへばちん!!!!と何か強く当たる音がする。そして苦しそうな呻き声。直感的に嫌な予感がした。冷や汗と共に何かが身体を伝う様な感覚を押し退け慌ててドアを開けるとそこには……目を疑う光景が広がっている。ロザリーが海星に馬乗りになって首を絞めているからだ。頭が真っ白になる、何が起こってるのか分からない。でも身体は勝手に動いていた。一目散に海星達の元へ飛び入る良明くん。まずロザリーの肩を力いっぱい押し海星から引き離す。しかしロザリーも負けじと良明くんへ反抗をする。2人は取っ組み合いの形となるが力で負けるわけにはっ!!と良明くんは手にありったけの力を込める。その後ろでは海星が首から手を離された事により息ができるようになったのか「げほ、げほぐぅ」と咳き込んでいた。そんな海星の苦しそうな状況を横目に捉えつつ、すぐにでも背中をさすってあげたいが目の前のロザリーは敵意を剥き出しで良明くんに罵倒を始める「お前が、お前なんかが海の前に現れたから!!!消えろ!私達の前から消えうせろ」と「はぁ?海?それって海星の母親でしょ……てかロザリーさん現実と過去がごっちゃに」と反論する良明くんを遮るようにロザリーは言葉を放つ「煩い、黙れ!お前なんかと心中などしてほしくなかった!!!!海を返せ!!返せ!!!返しなさいよ!!」
そのロザリーが放った言葉に更に理解が追いつかない。顔を伏せているロザリーの表情は伺えず少しばかり力が緩むのを感じるながらも放たれた言葉に場が凍りつく……心中?は?と良明くんは心の中でクエッションマークが何度も浮かぶ。しかしこの場を収めなければならないと冷静にならなければと脳に命令をしながら「あのロザリーさん?」と良明くんは声を絞り出す。するとその横から良明くんの言葉でハッとしたのか海星が共に声を出して来た。「海ちゃんと天ちゃんは事故って言ってたじゃないロ、ごほ……ロザリーどう言うこと?!!ねぇ、ロザリー」とそれは聞いてる側にも伝わる程の不安な声。ロザリーは海星の声に少し肩をピクリと揺らしたと思えば良明くんに取っ組みかかろうと力を再度入れ始める。正直押される。それはきっともっと前から生きて来た上での経験の差もあるのかもしれない。しかしこちら側としても譲れない、自分の主を傷つけられているのだから負けじと渾身の力を込め良明くんはロザリーの足掻きに耐え凌ぐ。そんな状況にただあたふたしていた海星だったが、止めに入ろうと両者の腕を掴む。だがロザリーに振り払われ海星はペシャンと呆気なく尻もちをついてしまった。だがこれがチャンスとなる。その一瞬の隙に良明くんはロザリーを蹴り飛ばした。ロザリーはぐらりとバランスを崩し海星の部屋のクローゼットに大きな音を立ててぶつかっている。すかさず尻餅をついている海星の手を引き良明くんは向かいの部屋……夫婦の部屋へと飛び込み素早く鍵をかけた。そして近くにある家具でドア付近を固める。海星はその姿をただ驚いた顔で固まっていた。


もうかれこれ数十分はたったと思う。ひたすら開けろ、連れてくな、返せとドアノブやドアが壊れるてもおかしくない勢いでロザリーは中へ入ろうと試みている。しかし良明くんが咄嗟に行った行動によってドアの前に置かれている家具のバリケードと絶対に入れるものかとその後ろで押し続けてる良明くんの力によって、ロザリーは未だに部屋の前で暴れるしかない状況だった。ここからどうしたものかロザリーさんが諦めるまでの戦いになる。朝まで続くようだったら?と色々な考えがぐるぐると巡る良明くん。しかしそんな現状を打ち破ったのは海星の悲鳴にも似た叫びの様な荒い声「もうやめて!!家族が争うのは良くないよ!!!」と……今の今まで聞いたことのないものでロザリーも驚いたのか一旦声が止んだがすかさず「どうして……どうしてなの?!なんであいつの味方をするの?」とまるで大切なものを奪われた子どものような悲痛な声で問いかけて来た。部屋は電気をつけていなかったのもあり暗く海星の顔が見えなかったが「味方とかそんな話じゃないよ!家族が争うのはおかしいの!!もう帰って!!!」と海星が放つ言葉から彼女が悲しんでいると言うのが痛い程伝わってくる。今この場にいる自分が何を言ってもロザリーには届かないことを良明くんは感じているのもあり、どうしても言葉が出なかった海星の言葉でロザリーの怒りが止むのを祈るしかなかった。耳をしっかり澄ませロザリーの動きをそして声を聞き漏らさんとする良明くんは「そう、もういいわ」と静かにそして苦しそうな声を残してロザリーが階段を下る音を逃さなかった。暗闇の中、突如やってきた静寂不安そうに胸へ手を当てている海星に向かって「ロザリーさん、もしかしたら帰ろうとしてるかもそっと窓から確認してくれる?」と小声で良明くんは伝える。もしものことを考え自分はここで待機しつつ海星の返答を待つ。海星はそろそろと窓に近づき暫く外を伺いながら「あ……ロザリーもう門の前だ」と言葉を漏らした。この瞬間やっと嵐が去ったのかと安堵がどっと押し寄せてきたが気は緩められない。一度一階へ降りるべきだろうなと思いを巡らしつつ良明くんはバリケードに使っていた家具をどかし始める。すると後ろから「良明くん、私も降りる。お願い、置いていかないで!!」と海星の声が聞こえた。立て続けに起こったことに海星もいっぱいいっぱいの中怖かったと思う。少し考えたがあんなことの後だ「………分かった、んじぁ一緒に降りよう」と良明くんは答えた。

pm.20:15
初めてだった、碧家の階段をこんなにも静かにそして確実に一段一段を丁寧に降ったのは。もしかしたらロザリーが帰ったフリをして戻って来てるかもしれない……大丈夫と言い切れない不安、だからこその緊張感。いつもなら騒いで降りてくる海星すらも良明くんの様子を察したのか静かにそして足元をしっかと確かめながら着いて降りてきた。リビングはガランと静まりかえっており自分がさっきまで用意してたお茶はとっくに冷めきっていた。暫く周りを見渡しつつ一階を丁寧に確認したが普段と変わらない。恐らく本当にロザリーさんは帰ったと確信してもいいと判断した良明くんはやっと張ってた糸が切れたようにだらんと肩が下がった。ここまで息苦しいのは今まで経験がなく……正直少し疲れたと言っても過言ではなかった。ふぅと息をつき海星の首を確認すべくリビングへと戻る。すると海星が何やら真剣な眼差しでそして真面目な声でこう呟いてきた。



……正直、海星の言葉にどう返していいのやら出かけてる言葉はあれど、それを濁すのではなくちゃんと伝えなければならないことは自分でも分かる。ここまで誰かに歩み寄ろうと、理解しようとする海星なりに考えたことだからこそだからこそなんだと思った。「ごめん、それはおれには出来ないよ」と良明くんはきっぱりと海星の青い瞳を見つめながら答えた。海星は徐々に表情を曇らせつつある。「おれはさ、海星がおしゃれで開けたいって望んでいたのなら喜んで協力するよ。でも今は違うでしょ?それは違うんだよ」と続けて言葉にした。きっと今が海星にとって大切でも今ここでおれが開けてしまったらそれは今晩あったロザリーさんとの出来事を何度も思い出すものとなってしまうそれは良くないと思うからこその良明くんの言葉だった。……しかし海星は首を横に振り再度ピアスを開けてほしいと話し始める。キリのない、終わりのない話し合いは気づけば約1時間半ぐらい続いた。

既に夜の10時過ぎ話の傍海星の首に保冷剤をつけたりしつつも首に残った指の後は痛々しいかった。何故首を絞められるようなことになったのか、話の延長で聞くことができた。
海星によると、ロザリーさんはずっと自室に入ってからは相変わらず無言で淡々と作業をされたらしい。海星からしたらピアスを開けてもらえることで頭がいっぱいになりつつも最近あった学校の話を一方的にしていたとか。その後片耳が開いた付近からロザリーさんの様子が一変した……口を開いたと思えば「海……」としか言わなくなり流石に浮かれていた気持ちもなんだかしょげてしまった海星は、ついロザリーさんが返ってくる呪文『海ちゃんじゃないよ、私は海星だよ』と言ってみたがそこから一向に返答がなかったという。海星はしびれを切らして「ロザリー!あんまり海ちゃんと私を間違えたまんまでこれ続けるならもう片方は良明くんに頼むからいい」と言い放った瞬間だったという……ロザリーさんが海星の首を首を締め出したのは



突然の出来事に身動きも取れずどうしていいか分からなかったと話す海星は少し手が震えている。その後、咄嗟に近くにあったまだ開封してないピアッサーを投げたと海星は教えてくれた頃にはずぅぅんと顔を伏せていた。状況把握の為とはいえ海星にとってもかなりショックな出来事だったのは間違いない。良明くんは海星の心中を察しそっと「お風呂まだだったでしょ?あったまっておいで」と促す。海星は「うん」とか細く返事を返したと思えばフラフラとお風呂場へと消えていった。

海星がお風呂から上がってきたら髪の毛を乾かす間、心を休められないかと思いハーブティーの淹れる用意を進める良明くん。今日程長かったと思う日はなかった様な気がした。明日はどうしょうか海星は大丈夫なのかそんなことを悶々と考えているとやかんが鳴った。コンロを止めはぁと長いため息が口から漏れるのと同時に海星がリビングへと戻って来て真面目な顔でこう言った。「明日、天ちゃんと海ちゃんについて調べたい!手伝ってくれる?良明くん」と。それにぱっと顔をあげ少し驚いたのか間を開けてから良明くんは「はい」と出来るだけ柔らかな笑顔を浮かべて答えた。







▶︎ 第2話【真実と願望】
3月2日 am.7:45
どれだけのことがあろうとも朝は誰にでも変わりなくそして普段と同じようにやってくる。それは良明くん達にも同様に
こんなに浮かない顔をして食卓に並ぶごはんを食べる海星は昨年の3月以来か。そんなことを思いながら普段とは違いミルクたっぷりの紅茶をそっと海星に出しながら良明くんも机に着く。昨晩のうちに海星の両親のことを調べる為朝ご飯の後、2人で朝から図書館へと行くと予定が決まっている。確かに図書館なら新聞記事のバックナンバーを読むことは容易いだろうし、パソコンだってある。調べたい事は割と出てくるチャンスだってあるはずそんなことを考えながら良明くんは自分の作ったスクランブルエッグを口に運びつつ「お、我ながらうまい」と口に漏らした。海星はそんな良明くんの様子をチラッと見た後黙々とご飯を口に運んでいた。

am:10:05
3月とは言えまだ肌寒い季節ではあるが暖かな日差しを浴びつつ10時過ぎ辺りから図書館へとやって来た。どの程度まで掛かるかは分からないが下にちょっとしたカフェスペースがあるのでお昼ご飯には困らないだろうななんて思いつつ……2人で図書館にある検索機能が備わってる機械と睨めっこ。少々手こずり近くを通った図書館のスタッフさんに力を借りつつ、当時の碧夫婦についての記事が載る新聞は手に入れることができた。2人で食い入るように碧夫婦が亡くなった日から一週間にかけての新聞を眺める。………しかし、そこにはロザリーが口に出した"事実"どこにもなかった。【世界に色を残し続けてくれた1人の主がこの世をさった】【夫(28)と共に車で移動中との出来事。何故世界は彼女を奪ったのか】などなど思っていた内容は無くがっくしと肩を落とす海星の表情はしゅんとしてるのが見て分かるほど。気分転換にとお昼にしようかと思ったが、時間が微妙だった為パソコンスペースへ移動し検索をしてみたがヒットする情報は主である母、『碧 海』の死を嘆くものばかりだった。少しぐらい陰謀では?なんて言葉を期待してみたがそれも今となっては泡の様に儚く弾けた。そりゃ世界は主を"さま"付けで呼んだり神さまにしたり色々だからななんて思考がふわふわと過ぎるのを待ちふぅと小さなため息が漏らす良明くんだった。横でくぅぅと海星のお腹が鳴り始めた。良明くんはパッと切り替え「一旦ご飯にしましょうか!」と明るい声で海星を誘い先程のカフェへと行く事にした。道中多分もうここでやれることはないだろうなと思いも共に持ちながら。

pm:0:53
ご飯を終え、これからどうするのか海星と話した結果最後の綱としてやはりロザリーさんに確認するのが1番だと言う結論に至った。正直なところ電話に出てくれるとは期待ができたいと言うか……無理だろななんて思いが胸をよぎるが、それでも海星の瞳は真剣そのものだったので良明くんはロザリーの電話番号へコールする事にした。
プルルルル、プルルルルと聞き慣れたコール音が鳴り続ける。聞きながらやっぱり難しいかと諦めかけた瞬間だった、ガチャリと電話に出る音が聞こえる。しかし手前は一向に話そうとはしない。良明くんの携帯番号は登録済みのはず誰から掛かってきたのかはすぐに分かる上でそれでも出てくれている。長い沈黙に耐えかね良明くんが言葉を発しようとした瞬間だった、『要件は何かしら』と淡々としたロザリーの声が聞こえてきた。ごくりと唾を飲む良明くんの様子に海星も繋がったことを察したのか「私、知りたいよ」と良明くんの服を掴みながら海星が気持ちを訴えてくる。良明くんはそんな海星を横目に捉えながら「あの、本日お時間もらえますか?えーっと場所はこちらから指定します」と話し始めた。

pm:13:35
あれからロザリーへ電話をかて30分後の事良明くんと海星は森林公園へと足を運んでいた。ここでならゆっくり話ができると言うよりもし碧家に招いたら今度こそ海星が何をされるかわからないその点を考慮した上で程々に人目もある場を指定した。断られるかどうか少し不安だったがロザリーは思いのほかすんなりと分かったと答えた。
駐車場に車を止め、携帯類をお尻のポケットに突っ込み出す良明くんをじぃと見つめてくる海星。その視線に気付き「どうかした?」と良明くんが尋ねると海星はフルフルと顔を左右に振り「ついてきてくれるよね!そうだよね!だって良明くんは"家族"だもんね!」と言った。“家族"海星が度々言葉に出す単語、普段は割となぁなぁに返してきていたが流石にこの状況少し悩んだが「そりゃ、海星が望むのであればかな」と良明くんは返す。するとその言葉に海星は引っかかるものがあったのか「えでっでもさ、気になったりしないの?」と明らかに驚きが声色に乗るのを良明くんは感じながらも「まぁ、ここまで来たのであれば誼で気になりますから」と答えた。何か言いたげそうに海星は口をもごもごと動かしているのは分かっていた。だが今から待ってるだろうロザリーの元へと急がなければならないのもあり「ほら、行きますよ海星!おりておりて」と促す。海星はどこか納得がいかない様な表情を浮かべながら「そっか」とポソっと呟き車のドアを開け出たのを確認してから車に鍵を閉め、森林公園へと足を進める。
森林公園と言うだけありサワサワと葉が風に揺られる音、風が通り過ぎる心地よさは抜群だった。また人とすれ違う度にここで良かったと改めてホッと胸を撫で下ろしながら海星と離れないように気をつけつつ、良明くんは森林公園に設置されてるベンチへと急いだ。

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チカっと日差しの光に目をくらませる良明くんとその後ろからついてきていたはずの海星が「ロザリー!!」と駆け出していく。良明くんも自然と海星の身の安全の為に小走りでその跡をついてゆく。ロザリーは海星の声にゆっくりと顔を上げた。なんだか昨日よりも顔色が悪い?様ないや、女性にそんなこと思うの失礼かと気持ちを改めてる。一方海星は「ねぇ!教えて!ロザリー!!教えてよ!」とロザリーの肩を掴み掛かろうとしている。良明くんはその瞬間を見逃さなかった。咄嗟に止めに入り「冷静、お互いに海星」と声をかける。海星もハッとなり申し訳なさそうにロザリーの顔を見ながら「ごめんなさい」と言葉を漏らし深呼吸をした後にロザリーの隣へ座り直した。「私の知らないこと、教えて欲しい」と今度は気持ちを言葉に変えた。
ロザリーはゆっくり瞬きをしそっとカバンから1通の手紙を出してきた。一目見て読み込まれたのが分かるくらいくたびれたものだった。「これは?」と良明くんが言うとロザリーはチラッと立ったまま話し続ける良明くんを睨みつけた後「海の遺書よ」と答えた。その横では海星が「………遺書」とママのと小さな声を絞り出すのを聞き逃さなかった良明くん。どうしていいのかソワソワする気持ちと戦ってるのがわかる。自分の知らぬ母親がそこにいるのだから当然だ。そんな海星の姿をロザリーはちらりと確認しつつ説明を始めた。

ロザリーさんが言うには、この"海の遺書"が書かれたのは海星を身ごもり暫くしてからのことだったと言う。普段と同じ様に家の掃除をしてる時に海さんに「話があるの」と呼び止められ2人でリビングにて話をした際に知ったらしい。「病院の先生は順調だと仰ってくれてるけれどでも何があるかはわからない……そう思ったら残して行くあなたや天ちゃん、この子の為に私が今できることをしたかったから!だから私なりに行動に移した結果なのよ」と柔らかな笑みを浮かべながらも優しい声で話す海さんの手をロザリーさんはずっと握っていた。なかなか温まらない手普段ではそんなことないのに顔にも声にも出てこないが相当考え緊張しながらだったのが十分ロザリーにはわかった。だからこそ掴んでいる海さんの手がもっと冷え込まない様にと今度は両手で包んだ。
その後、遺書は夫婦の寝室にあるベッドサイドの引き出しの中に入れておくと言われた。天さんもこの件は把握済みだと言う。海さんの心境を考えると正直心配でならなかったが、それを本人に悟られれば更に良くないと思ったロザリーさんは常に心を張っていたとの事……
海星は静かにロザリーの言葉を聞いていた。先程まで早く真相を知りたいと興奮してたはずなのにそんな彼女が今はきっと当時の母親に寄り添っていたロザリーがやるせなさと辛さを滲ませてるのを声色から感じ取ったのだろう海星の表情も心なしか苦しそうなのを良明くんはそっと見守っていた。ロザリーは話終わると「読みなさい」と海さんの遺書を海星へ手渡そうとした時、海星はそっとロザリーの手を取り「大丈夫だよ!私はここにいるからね」とフニャッと笑う。きっと海星なりにロザリーを励ましたかったのかもしれない。ロザリーはパッと顔を逸らした。自分が昨日したこともあり後ろめたさがあったのかもしれないと良明くんは思い「海星、ロザリーさんが折角渡してくれたんだ、読もう!もしかしたら知りたいこと書いてあるかもしれないよ」と促した。海星の手は少し震えていたけど封筒から手紙を出した。そっと隣から覗き込み内容を確認して行く。初めて見た碧 海本人の直筆。文字からそして内容からこの人の持つ暖かくて柔らかなオーラを感じた。遺書であるのは間違いないのだが、海星は亡き母の言葉を読めるこの時間がとても嬉しかったのか頬がほんのり緩むのがわかった。前半はロザリーさんとの思い出や家族ができた幸せについて触れている。そして後半になるにつれどうしてこの手紙を残そうと思ったのかの旨と共に残される家族についての件に触れていた。きっと何度も何度も考えて言葉を書き残したのだろう。最後は文字は少し揺れてる様に見えた。それだけ想いの込められた手紙。
………しかし何度読んでも何処かしらにロザリーさんが放った『自殺』と言うワードもそれを匂わせることも見当たらなかった。いや、よくよく考えてみれば寧ろこれは海星の母親が亡くなった後にロザリーさんだけでなくその親族または悪くても事故の処理に関わった警察が読んでるのではないか?その点を踏まえたら自殺と報道もされず、その疑いすらかからないのはおかしい過ぎる。良明くんは静かにロザリーの方へと顔を向けて「お手紙はこれだけでしたか?」と問う。その言葉に必死に自殺の真実のカケラを探していた海星がびくりと肩を振るわせ「ほ、他にもあるの?」とロザリーを見つめる。先程から黙って目を閉じ座ってきたロザリーはすぅと瞳を開け「えぇ、そうよ」と答える。その様子を真剣な眼差しで見つめていた海星。ただ一言「嘘はやめて私は家族のことを知る権利があるんだよ。ロザリーだけのものにしないで」と絞り出す様な声で問う。まさか海星からこんな声と言葉を聞くことが来るとは思ってなかったのだろうロザリーが少し揺らぐのを良明くんは気づいていた。「おれにこんなこと言われるの嫌なかもしれませんがロザリーさん、あなたが何を背負って隠してるかは分かりません。ですがここにいる海星の気持ちを裏切るのだけはやめて下さい。お願いします」と頭を下げた。海星も続いて頭を下げる。するとそんな2人を少し見つめた後ロザリーは深いため息をつき長い沈黙の後に「ここからは闇、それでも深入りするの?アレを開ければ地獄よ帰れないわ」と言う。そっと顔を上げロザリーの顔を見た良明くんは思う。正直自分の知る中であの表情はとても怖かったと。海星もゾクっとした様な顔をしているが「でも、私は知りたい」と言葉を放った。

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ーーーーーあの手紙が届いたのは、海星に呪いをかけた数日後のことだった。生きながらも死に直面してる海星をどう繋ぎ止めるのか……生活を共にする中で必死だった。唯一助かった事と言えば海星が自ら命を経とうとする様なことをしないこと。あまり思い出したくはないが、絶望の淵に立たされた人間は何もできなくなるかパニックになり命を投げ出そうとする事が多い。だから海そしてあの男を亡くした海星から目が離せなかった。が、幼き海星にとって自殺を行う知識を私は教えたことも聞かせたこともなかったのが功に繋がったらしい。それでも本当に、ほんとうにそれだけがロザリーにとって心の救いだった。
「海を亡くし、海が私へと託していった貴女までもとなったらもう……」と語るロザリーは重い重い顔をしてるいた。すぅ、と息を整えまた続きを話出す
日々を送りながらロザリーは張り裂けそうな心を周りに気取られまいといた。気を張り続ける毎日。あの日、千冴さんが訪ねてきて共に作ったうどんの味は今でも覚えてる。暖かくて柔らかくてまた食べたいなんて思うのは欲張りだろうか?とそんなことを思っていた矢先だった。1通の手紙が届く。それは亡き自身の契約主である“海“からだった。正直手が震えた、上の部屋を咄嗟に確認する。そこでは海星が海に潜っている最中だろう……あの子にはバレたくないそう思ってしまう。海への独占欲が体から漏れそうになる。私だけに送ってきてくれたというだけで頬が緩みそうになる。それを必死に抑えて玄関へ急ぎキッチンの隅っこでロザリーは丁寧に封筒を開き中を確認する。そこにはこう綴ってあった。


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ロザリーへ

突然お手紙が来たから驚いたかしら?
あなたを驚かす事には自信があるし、長い付き合いだもの手紙を読むあなたの表情が手に取るように分かるのよ?見えなくたって分かるわ。そう、この手紙があなたの元へと行く頃には色々と大変なことが起こってるかも知れない。それも私には分かるのよ。でもね、自分を責めたりはしないで欲しいのとあなたにはどうしても伝えたいことがあるの。聞いて欲しい。
どうか私のお気に入りの木の下を掘って欲しいの。ふふ、もっと書きたい事は沢山あるけれど短な手紙でごめんなさいねでも続きはそこでお話しさせて頂戴?
ではまた!

海より
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見覚えのある丸くて可愛い優しい字海からの手紙はそう綴られていた。お気に入りの木……海のお気に入りの木、銀木犀がこの家には植えてある。毎年毎年、花をつける度に海は愛おしそうに顔を近づけ匂いを楽しんでいたあの木下にーーーー
すぐにでもと思ったが、まだ日が高く周りの目もありそして海星もいる。ひとまず手紙は自分のカバンの中へと素早くしまい夜になるのを待った。その間胸から飛び出そうとする心臓の鼓動は大きく時間が過ぎるのが長くて長くて仕方なかった。

深夜2時、しぃんと静まり返った住宅地。家に住む人々を照らしていた光は消えて皆寝静まっている。空は月を隠し雲が張っている
もう時期雨が降るかもしれない。早めに済ませるように準備は万全に整えた。できるだけ音を立てずに恐らくそうであろう指定の木の下まで足を急ぐ。焦る気持ちを抑えつつ、どこから掘ろうか悩む。海がこの木をスケッチした事がある。一番この木が美しく見えるところがあると言っていた。その時の角度を必死に思い出しポイントをつけて掘る。間違っていたならばまた別のところを掘ればいい。……しかしどの程度の深さの穴を掘ればいいんだ?とそんな事を考えていると結構穴を掘り進めた辺りでガツンと鈍い音が鳴る。ザクザクと手際よく力を込めて掘ってきたのもありぶつかったものとスコップの音が大きくなってしまった。周りを一度見渡した後にそっと穴へ身体を近づけて嵐探の光を使い穴の中を確認する。海が大切にしていた可愛らしい缶が土に紛れて姿を現す。スコップの当たりどころが悪かったのか少しへこんでしまっている。ひとまず要らない土を払い退け中を確認する。そこにはまた1通の手紙が入っていた。海は何をしたいのだろうか、残していった私の悲しみを少しでも和らげようと生前のようにイタズラを図っているのかいろんな事が頭を巡るが手紙に全て書いてあるだろうと希望をもち、早まる動悸と共に手紙の封を開ける。

今思えば、見なければよかったと思うものが書いてあった。でもその時の私は知らぬ海のことが知れるような気がして読む手は止められなかった。


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拝啓、ロザリーへ

 この手紙が読まれると言うことは手前の短な手紙があなたの元へとやってきているのね。ロザリー読んでくれてるかしら?この手紙を読むのはあなただったらと思って今筆を動かしてるわ!
ふふ、聞いて?実はお手紙書くのなんて殆ど経験がなくて数えるくらいしかこうしたものって形に残したことがないの。私が世界に残せたものなんて絵と海星くらいなのかもしれないわ。あ、やだ違うわ!私こんなお話をあなたに聞かせたくてお手紙を書いてるわけじゃないの!あなたには話したいことが沢山あるからつい行数を埋めてしまうわね。
本題に入るけれど、このお手紙が届いたと言う事、つまり私はこの世にはもういないってことだと思うわ。あなたにも海星にも沢山悲しい思いや苦労をかけてしまうのは承知なのだけれど、私にはどうしても……いいえ、もうずっと前から決めていたことがあったから自分の終わりが来る前に行動に移すことにしたの。ロザリー、あなたは気づいていなかったと思うけれど、私は昔から自殺願望があったのよ。父が私の先を決めること、それが嫌で家を出たのはあなたもよく覚えているでしょ?でもその原点とも言える理由は私の寿命が神様によって決められているって事。私は先が望めない自分の未来すら閉ざされている。それが本当に嫌だったのよ。だからこそ私は……私の出来る形で神に争いたかった。それがきっと現在海星とあなたが置かれてる状況なのだと思う。身勝手なのも無責任なのも分かっているわ、承知の上よ。でもねでも……そんな私にあの人は、天ちゃんは認めてくれたの。小さな海星を抱きながら私は天ちゃんに私の胸のうちを打ち明けたわ。本当は誰にも言わないつもりだったのよ?だって私が自分の為に動いてしまったら海星の今後もあなたのことも残される天ちゃんに任せるしかなかったから。でも天ちゃんは「僕は、君と結婚したパートナーだよ。もし君が地獄へ行くこととなったとしても、その先がとても冷たかったとしても2人でなら寄り添える。熱かったとしても2人でなら耐えられるかもしれない。海さんだけを1人にはしないよ」って……言ってくれたの。それがね、私にとっては何よりも嬉しくて嬉しくて……ずっと1人だと思っていたのよ?あなたにも打ち明けられなかった。だから一緒に荷を背負ってくれる人がいるって本当に嬉しかったの。
残してゆくあなたと海星が今後に困らない様な用意は思いつく限りしたつもりよ。でも手が行き届いてなくて、そこから入り込む者もいるかもしれないけれどどうか、どうか海星のこと頼みます。あなたとなら笑っていけるでしょお願いね。
長くなったけれど、あなたが最後まで読んでくれてることを信じここにて終わりとします。沢山迷惑をかけてそれにこのお手紙だって一方的に綴っちゃったごめんなさい。でも私ね、ロザリーとそして海星と過ごした時間とても眩しくて大切だったわ。私に幸福と家族をくれて、大切にしてくれて、愛してくれてありがとう。さようなら。

碧 海

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今まで海のことならなんでも知ってると思っていたロザリーからしたらこの更に重なったショックの大きさは受け止めきれないことでもあった。
ぽつぽつと雨が降り出す手紙が濡れる様に咄嗟に庇う。雨が髪を、体を濡らしてゆく。足なんてもう跳ねた泥で汚れ始めている。それでも動けなかった。見てしまった、知ってしまった事が大きすぎてしかしこのままここにいたら怪しまれる上に手紙も読めなくなってしまう。渾身の力を振り絞りフラフラと碧家へと戻った。玄関を閉めながらこれからどうすればいい……と何度も自問自答をする。もう何度目だろうか?海が死んだあの日から何度も自分に問いかけた。やっと少しだけ小さな星を守ろうと思えたこん時になんで?と、どうしていいかわからない感情が駆け巡る。そして同時に『あの子を理想の海に育てればいいのでは?』と重たく先の見えぬ闇の様な思いが湧き上がる。そうだ……私はあの子を育てなければならない、守らなければならない。ならそれくらい許されるだろうと育てた先で今度は自分が選ばれるようにすればいい海、あなたは許してくれるでしょ?と

『この時私は海星を殺す事を決めたのよ』

ロザリーは言い終わると再度ふぅと静かに息を吐き「あとは知っての通りあなたと私の暮らしが始まった」とだけ言う。ロザリーの隣に座る海星は黙って聞いていたが俯いていて今の表情は良明くんの位置的には見えなかった。きっと受け止める上でとても苦しんでるに違いないのはわかる。スカートの上に乗せられた手がぎゅっと強く握りしめられすぎて真っ白になっていたから。さぁぁと流れる風はこのどよんとした空気は連れてってはくれない。海星の髪がゆらゆらと揺れるのを見てロザリーがそっと海星の髪を触ろうと手を伸ばした瞬間、良明くんはロザリーの手を掴み「すみません、部外者のおれですらロザリーさんの考えてることは分かりません。海星に傷の舐め合いも負担を持たせることもおれは許せません」と言い放つ。ロザリーはキッと強く良明くんを睨みつけながら「お前などに分かるわけないだろ」と大きな声をあげる。海星ばビクッと肩を揺らしたと思えばゆっくり顔を上げて「ごめんね、ロザリー……私は海ちゃんじゃないよ」と言った。その言葉がどれ程にロザリーの胸を刺したことか見開かれた目が物語っている。そして乱暴に良明くんの手を振り解いたと思えば「もういいでしょ、私は残り時間が少ないのよ」とだけ言い残し駅の方面へと歩いて行った。海星は何か言いたげそうだったが、そっとロザリーの後ろ姿を見送っていた。

ひとまず今日は別れるのが一番だと思った。ここでとやかく言ったところで冷静ではないこの脳みそでは何も今後の解決方法も見つけることなどできないから海星は良明くんに手を引かれ車へと歩いてゆく。夕焼け空はもう既に夜空へと色を変えてゆこうとしてる。車に向かう中、2人の間には沈黙が流れていた。ロザリーのところに行くまでがこんなに長かったなんて気づかなかった。足を進める中で海星はどう今の気持ちを整理しようか考えていた。
約15分程歩いた先で駐車場に着く。やっと着いたなんて思ってしまうほど沈黙の時間は海星にとっては長いものだった。ピピッと良明くんがドアを開けてくれて向かい側から「どうぞ」と声が聞こえてくる。海星は車のドアを開けて乗り込む。海星が乗り込んだのを確認後いつもの様に良明くんも運転席に乗り黙々と用意する。海星もシートベルトをつけようとしたその時だった、“着信が鳴った“これは知ってる海星がロザリーだけに鳴らすようにしてる着メロだったから。海星が恐る恐る携帯を出し確認している出るか出ないかは海星の判断に任せるつもりで静かに待機してる良明くんだったが、海星がちらりとこっちへ目を合わせてくるので「スピーカーにしてみるのはどう?」と提案する。海星はこくんと頷いたあと少しおぼつかない手で携帯の画面をタップした。さっきまで元気に鳴っていた着信音がぴたりと止みザワザワと人の気配のする音を拾い始める。ロザリーがきっと駅に着いた事は2人もその時点で察した。少し間を開けてから「どうしたの?」と海星が声を出す。するとロザリーは『……私、明日が誕生日なの。今日の12時を過ぎたら死ぬわ』『良かったわね、邪魔者がいなくなって』と投げやりの声が聞こえたと思えば『電車が来たからもう乗るわね』こちらの返答など聞かずに電話が切れる。








▶︎第3話【最終のベルが鳴り響く】
3月2日 pm.18:50頃
海星は電話が切れた直後「今すぐロザリーの家へ行きたい!」と胸に浮かんだ言葉をそのまま発した。それは電話を聞いていた良明くんもきっと海星ならそう言うだろうと思っていた。海星の思いへ答える様にこくりと頷く、もう乗りかかった船なのだから………でもここで問題が発生する。「つか、海星ロザリーさんの家知ってるっけ?」と言う点。海星はえ?!とあたふたし始め「え……あーーー、良明くん知らないの?」といつもの様な回答が返ってきた。これは予想外の事態、流石にこりゃ時間がかかるぞとたらりと汗が垂れる。いやいや冷静に、冷静に考えれば必ず道はあるはずと焦る鼓動を落ち着かせうーんと頭をひねる良明くんの隣で「一か八かでLINEとかでロザリーに聞いてみようか?」と騒ぎ出す海星。10分ほど車内でてんやわんやしてる中、良明くんが「あ!」と何か思い出したのか今日イチで大きな声を出す。そしてハンドルを握り「海星、おれ分かりましたよ!」と言った。

車に揺られ約50分程過ぎた頃、時刻は19:50を過ぎたところ。途中事故などがあって普通に向かうよりも時間が大幅にかかってはしまったが辿り着いたのは碧家だった。ここに来る前に良明くんが何処かへ電話をしていた。それも含め大まかな説明は向かう中で聞くこととなった。「海星!おれずっと海星が触れてこなかったから忘れてたんだけどさ、ロザリーさんと契約してるよね?」と単刀直入に何を言い出すかと思えばなんの話?と聞き直してしまった程。そうだったけ?とはてなを浮かべる海星に良明くんは続けて「おれが海星の契約の話貰った時に聞かされたよ?“相手の主さまはお母さまの契約から引き継ぎでもう1人女性の従の方を雇っておりますよ"って」良明くんは運転しながら海星に言葉を投げかける。海星はと言うと空いた口が塞がらないのかぽかーんとしてる。横目でそんな海星を確認しつつ「書類の説明とか諸々あったでしょうにもしかして新たな契約で頭がいっぱいで聞き流してたってところだったりして?」との問いに海星はえぇ〜っとと恥ずかしそうに俯いていた。当時の海星なら想像がつく。新しい出会いと自分で選び始めた事が楽しくて、待ち遠しくて、堪らなくていっぱいだっただろうから。「で、なんでこの話をしたのかって言うと契約紹介所だよ!そこにさ、ちゃんと手続きの為の書類もって行けば住所が割り出せるってわけ」と良明くんは力強く言う。すると海星はゆっくり顔を上げその目には光がぱぁぁと宿っている。希望が見えたと言う喜びの瞳。「海星は家に着き次第、契約時の用紙あるでしょ?ほらっ大切な物しまう棚に多分入ってると思うからそこからファイリングしてるのそのまま持ってきて!でおれはさっき電話で聞いたもの片っ端から集める!準備ができたら即出発!どう?完璧じゃない?」良明くんの声に海星は「うん!完璧!」と答えた!声からわかる海星やっと元気出たんだと。

お互い家に着き次第すぐさま必要なものをかき集め始める。良明くんは必要な書類類と身分証明書、海星は契約上に交わした書面。バタバタと2人の足音のみが碧家に響き渡る。するとファイルを手にしながら海星は一時停止する。



おそるおそる手を伸ばしオルゴールを自分の元へと手繰り寄せた辺りだった「海星ーー!!!いくぞ!!!」と良明くんの声が聞こえる。海星はビクッと肩をならしつつも咄嗟にオルゴールとファイルを胸に抱き「はーい!」と元気に返事をしながら階段を下っていった。お願いママ、パパ!ロザリーに合わせて!と思いを込めながら

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pm.20:52
前もって電話をしていたのもあり紹介所が閉まるギリギリに滑り込んだ。電話越しで海星が何度も何度もお願いをするものだから社員さんも『主さまのお願いです、こちらも精一杯お応え致します』と返してくれていた。時刻は既に21時を回ろうとしており海星の表情にも焦りから顔に汗が伝っている。
書類発行にはどうしても時間がかかってしまう為、早くても約20分もかかると言われてるのもあり良明くんと共に近くの椅子で待機してるが海星また自身の手を強く握りしめている。良明くんはそっと手を重ね「大丈夫すよ!海星が信じなきゃ始まらないでしょ?」と励ます。海星は少しだけ笑ったが真っ直ぐとカウンターを見つめていた。
なんとか諸々のことが済んでロザリーの住所を聞き出せたのは21時42分指す頃だった。なんだかんだで手間取ってしまい思ってたよりも時間が押してしまってる。コピー用紙に印刷されたロザリーの住所をカーナビに打ち込む良明くんの手も何処か急ぎ気味。そんな様子を海星は黙って見守っている。ずっと心の中でロザリー、ロザリーと名前を呼びながらこの声が届いてほしいと願いながら。車が動き出す、そろそろ22時へと針が進もうとしている。どうにか間に合ってほしいそんな思いを胸に2人はロザリーの元へと向かった。

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3月3日 pm.0:05
日付は過ぎてしまったがまだロザリーが生きていると願いながら辿り着いた住所の先は海が近くにある場だった。ちらほらと住宅も見受けられるしかしロザリーが住んでいる場所はポツンと一軒だけ。そして古い木造建築だった。しぃーんと静かなのにどこか潮の匂いとざぁんと波の音。「ここにロザリーが」と海星は緊張しながら車を降りる。その手にはオルゴールを持っている。合流後に紹介所へ向かう前から海星がオルゴールを持って来てるの事に良明くんは気づいていた。そして海星にとって家族の証であるオルゴールは何よりもお守りであり勇気を与えてくれるものなんだとも分かってたからこそ止めなかった。車を降りる前、事前に入れてあった懐中電灯を持ち周りを照らしながら海星と玄関へと足を進める。チャイムらしきものがあったので一応鳴らすが反応はない。「ロザリー、私だよ!海星!お願いドアを開けて!」と海星が声をかけ始める。が、またしても反応は返ってこなかった。暗闇に溶けてゆく海星の声しょんぼりする海星を確認しつつ、怒られる事を承知で何処か窓でも破るしかないか?と強行突破を図る考えで頭を巡らす良明くんの横で海星が「あ、忘れてた!」と言う。思わず驚いて海星の方へと光を当てると「良明くんライト!私にじゃなくてオルゴールに向けて!!」と騒ぎ出す。その声にハッとなりさっと海星の手元へ光を当てると海星はガチャガチャとオルゴールの中からある一つの鍵を出した。「良明くん!これ試したことなかったから!」と……



扉が開く音がした。パッと2人で顔を見合わせた後、すぐにでも入ろうとする海星を静止し「安全の為におれから入らせてください」と良明くんは一言挟む。焦る気持ちはわかるがロザリーさんは一度海星の首を絞めたという前科がある為の策だ。海星は少し悩みながらも「わかった」と良明くんの後をついてくる。
懐中電灯の小さな光で周りを照らし中へと進む。普通の家、お風呂もキッチンもトイレも居住スペースもしっかとあり住むには苦労しなさそうな所。ここの何処にロザリーさんがとキョロキョロする良明くんの後ろでふと海星が気づく。「ねぇ、奥に扉ない?」と指を刺している。少し豪勢に飾られてる扉があり小さな看板が吊るされている。そこには『海のアトリエ』と記載してあった。ゴクリと生唾を飲み良明くんはドアノブに手をかける。海星はそっと良明くんの服を掴み「なんとなくだけど、ロザリーここにいると思う」と言葉を漏らす。自分もそうに違いな気がしてならない。一呼吸置いてから「し、失礼しまーす」とドアノブを捻りキィィとドアが軋み開く音がする。中に人の気配は無いか警戒しながら足を進める。少し油絵の具の匂いがふわりと漂う。海星が転ばぬように床を照らしていて気づく、自分とも海星とも違う足が床にあることに「うぉぉ?!!」と思わず驚いた声をあげパッと先を照らすとそこには小さなキャンバスを抱えて倒れているロザリーの姿があった。海星はパッと良明くんの服から手を話しロザリーの元へと即座に駆け寄り「ロザリー!ロザリー!!起きて!ロザリー!」とガクガクと体を揺らす。「ちょいまち海星!ロザリーさんの脈見るから」と余裕のない海星を少し退かして良明くんはロザリーの手首を触る。海星はロザリーの手を握っている。まるで起きて欲しいと願う小さな少女のように……
しばらく沈黙が流れる。そして良明くんはそっとロザリーの口元へ手をかざし首を横に振りながら「海星……ロザリーさん、死んでると思う」と言った。海星は一目見てわかるほどに目を見開きただただ黙ってロザリーにしがみ付くように抱きつき動かなくなった。そんな様子に良明くんも何も言葉が出ずそっと海星の背中をさすることにした。

この後、死体発見の第一者として一応警察を呼び事情聴取と共に現場に入ってもらう形となった。その間海星はロザリーから離れようとしなかった為、その場に来て下さった女性の警察官と良明くんとでなんとか引き離すことに成功した。若干暴れていた海星のメンタル面を心配し車の中にて話を聞きつつケアと言う形でこの日は幕を閉じた。海星は帰りの車の中で精神的に疲れたのかぐったりと目を閉じている。きっと寝落ちしたのだろう……そんな姿を見ながら明日、海星は大丈夫だろうかと良明くんは心配になりながら碧家へと急いだ。






▶︎第4話【純白の一等星】
3月3日 pm.18:23
やっと一息つけると胸のうちでホッとする良明くん。今日は朝から普段よりも忙しかった。昨晩、ロザリーさんが亡くなって死体の第一発見者となった為朝から海星と共に警察署へ書類を小脇に挟みながら向かった。昨晩から海星は家に着いても俯きつつ顔が暗かった。ご飯を食べても車の中でお気に入りの曲を流してもテンションは変わらず気分も切り替わらない。海星を担当してくれた女性警察官の方も「血の繋がる親族ではないにせよかなり近しい関係柄だったそうですねかなりメンタルが落ち込んでますので目を離さないであげてください」と言われた。よく見ている自分だけじゃなく周りから一目で気がつくくらいの落ち込み方なのがひしひしと感じていた。その後一旦家に戻りお昼ご飯を食べたのち15:00頃、警察署から電話がかかってきた。ロザリーさんの死亡確定と共に自分含め海星の潔白と結ばれていた契約証明が済み、身元引受人として呼ばれることとなった。署内の方に手伝ってもらう形でロザリーさんを引き取り一旦家へと向かった。海星は後部座席に乗り移動中ずっとロザリーさんの手を重ね続けていた。そこからは死亡診断書、埋火葬許可申請を発行するべくバタバタと忙しかった。書類処理の為何度も車を降りたり乗ったりを繰り返す良明くんに対して、車に残していた海星は身一つ動かさずじぃと冷たくなったロザリーを見続けていて……なんだか正直そんな姿が可哀想でもあり同時に怖さもあった。なんとか葬儀所へ連絡をし待機部屋を借りることができ今に至る。本当は早めに焼いたほうがいいと担当者の方に言われたが、海星が「やめて!!やだ!!!」とその場で地団駄を踏み暴れた為明日の朝へと話が伸びた。畳の上に布団が敷かされそっと寝かされているロザリーは普段とは想像もつかないくらい穏やかな顔で目を閉じており近くに座り続ける海星が声をかけたら起きるのではないかと思ってしまう程だった。しかしもう息もしてなく冷たい体だと言うことは良明くんは昨晩確認した側の為理解している。しかし絶賛ロザリーさんを見つめる海星は大丈夫だろうか?とそんなことをもやもや考えながらかける言葉がみつからず見守っていた。

事が起こったのはその十分後ぐらいだった。海星がふらりと立ち上がったと思ったらフラフラと窓辺の方へと歩いていく。ここは2階、窓から転落なんてしたら打ちどころによっては死に直結する。こんな状況で尚且つおぼつかない足取りの海星嫌な予感がして「海星?」と良明くんは素早く声をかけてるが返事がない。すぐさま海星に駆け寄る良明くんに気付いてないのか、海星は窓を開けよじ登ろうとしてる。「海星!!!!」と更に大きな声と共にその動きを止めさせようと良明くんは海星の体ごと掴み窓から引き離す。海星は「やめて!やだ!!離して!!!」と抵抗するが女子高生の力では成人男性には敵わずただブンブンと振り暴れる腕は空気を切るだけとなる。「いやだよ!こんな辛い気持ち!!!知りたくなかった!死の悲しみがこんなに辛いだなんて思ってなかった!!!」と悲鳴のような叫びで騒ぐ。海星の頬には涙がない。昨晩からそうだ、今泣けたらどれだけ良かっただろうか泣けないからこそ溢れる気持ちをどう整理していいのか、発散していいのか上手く出せなくて……こうして爆発させるしかなかったとしても飛び降りようとするのは見過ごせなかった。脳裏へ昨日ロザリーから聞いた言葉 "絶望に飲まれた人間は何をするかわからない" が何度も再生される。聞いていた時は実感が湧かず半信半疑だったが、今なら痛い程ロザリーの気持ちが分かる気がした良明くんは唇を噛み締める。そして「だからって、だからって死のうとするのは間違ってるよ海星!」と必死な声で言葉をかけるが暴れる事に意識が持ってかれてる海星には聞こえてなかった。ただ海星を押さえ込む事しか出来ないそうしてるうちに今度は幼い頃の記憶までもがチラチラと光が差し込む様に微かによぎる。こんな気持ちになるだなんて良明くんは海星を離すまいと必死に掴み続けた。
数十分暴れ叫んだ海星は疲れたのかくたっとしていた。出先だし心を落ち着かせる為にとハーブティーを出してあげれるわけでもなく部屋に備え付けてあったお茶を代用し一旦クールダウンすることとなった。海星がこんなに取り乱すなんて思いもせず良明くんも正直心臓がバクバクとしていた。ここへ向かう前に女性警察官の言葉が身に沁みた。

pm.22:12
ここから数時間、言葉をかけても海星からは返答がなく丁度昨年の3月にあった事件2人でホテルを行き来しながらの生活の中で自分が刺された後の心を閉ざす海星の様子に何処か似てるようで心がサワサワとする良明くん。どうやったら今の海星の気持ちをほんのちょっとでも切り替える方法はないかひたすら考えている中いきなり「良明くん、お願いがあるんだけどいいかな?」と長い長い沈黙を破ったのは海星だった。パッと顔を上げて「なに?」と答えると海星は自身の真っ白い髪をそっと持ち上げ「髪の毛をね……切って欲しいんだ!」とくしゃっとした笑顔を見せた。


葬儀屋の担当さんにあれこれ物を借り突発ではあるがひとまず断髪式の用意はできた。大きなビニール袋に頭程の穴を開け、それを被った海星が椅子に座ったのを見届けてから良明くんも貸し出されたハサミを持つ「本当にいいんだね?」と海星へ一言かける。海星は迷わず「うん」と頷いてみせた。よし、と掛け声を自分にかけて事前にしっかりとキツめに結われた海星の三つ編みの根元部分からジョキジョキと切り進めていく。するとそんな中、ぽつりと海星が口から言葉を漏らし始めた。「あのね、なんでこんなこと頼もうかって思ったかお話ししてもいい?」と。切る手を進めながら「聞かせて」と良明くん優しく尋ねる。



海星の声を一つ一つ溢さぬようにうんうんと頷きながら話を聞いていた良明くん。そして海星が大切にする髪をそっと撫でながら「これ届くといいっすね、ロザリーさんの元にさ」と最後の束を眺めながらシャキンとハサミを入れた。初めて見る海星の短髪姿。スーパーロングだったのもあり肩より上のボブでも十分短く見える。なんだか自然と海星も「なんだろう?言葉にするの難しいけど、楽になった気がする」と言いながらこっちを向いてきた。あぁ、やっと海星と目があった気がするなんて思う良明くんは、大きな袋を脱ぎ畳みながらハサミの横に置いている海星へ長い三つ編みの束を渡す。すると海星は少し眺めた後静かに立ち上がりロザリーの元へゆっくり近寄って行く。そしてそっと横にしゃがみ丁寧に髪の毛の束を置いていた。その顔はとても優しかった。出会った当初なら袋も畳まないだろうし、笑いながら走って持って行くだろうに……なんて過去に当てはめて想像すると今の海星の様子に成長を感じた。ふふ、と良明くんが笑ってるのを見た海星も「あはは、なに?どうしたの?」と柔らかく笑う。やっと笑顔が戻ってきたんだなーと感じた。
この後は明日に備えて仮眠することとなった。珍しく電気はつけっぱなしだった。「この3人で寝るだなんて初めてだよね!ふふ、ソワソワするけど……なんだか眠いや」と言葉を残し海星はすやりと寝息を立て始める。良明くんも睡魔に身を任せようと思いながらも海星が飛び降りようとした事が気がかりであまり寝付けなかった。明日に響かなければいいなと思う。


3月4日 am.9:20



海星がぽつりと言葉を吐く「昨日はその……ごめんなさい、良明くん」となんのことか心当たりがあったが「なにが?」と問う。海星は少しもごもごしながらも「飛び降りようとしたこと」と言葉を続け「色々なことが怖くなって、胸の中にある痛みがどんどん大きく強くなって、逃げたくなって分からなくなって……」俯きながら下唇を噛み締めてる海星へ「逃げることは悪いことじゃないっておれは思うよ。でも自分や周りを傷つける方法はよくない」と真面目にでも海星が怖がらないように優しく言葉を返す。「うん、私この痛みを知りたくてずっと探してた。昔は海に潜って遠ざけてたけど、今なら少しずつでもいいからこの痛みに向き合いたい。沢山の時間がかかるかもしれないけどロザリーの事これからも大切にしたい」そう言うと海星は胸の前に手を置き「きっとあの時落ちてたらロザリーも海ちゃんううん、ママもパパも怒ってたと思う。止めてくれてありがとう良明くん、そしてごめんなさい」と再度謝りながら良明くんへ向けて頭を下げる海星。そんな様子を見つめながら「もうあんな事しないって、辛い時は辛いって言っていいし、分からなくなったらいつもみたいに頼ってください!約束してくる?海星」と小指をそっと立てて海星の前へ出す。海星は先程までしんなりしていた表情を少しだけパァッと輝かせ「うん」と小指を絡めてきた。1人だったらきっと迷って躓いて道を外してたかもしれないけど、2人でなら助け合える。そんなことを改めて感じた始まりの朝。

あれこれのことが終わり、小さくなったロザリーが入ってる真っ白な箱を海星が大事そうに抱えてながら向かった先は碧家ではなくロザリーが滞在していた木造のお家……本当は互いに疲労もきてることだし一旦家へ向かうべきだとは思っていたが、葬儀屋を出るところで海星が「私たちのお家へ帰る前にロザリーのお家へ寄ろうきっと魂はまだあそこにいるよ!寒いところに1人は寂しいと思うの」と、自分達にも住所を明かさずずっとあの家で暮らしていたロザリーさんの大切な場所そう思ったら海星の言葉は頷けた。
事故らぬようにゆっくり運転しつつ、眠気覚ましに窓を開けながらだった為か2人とも髪が乱れてしまったが、まぁ大丈夫だろう。良明くんは車を降り鍵をしめつつ、ロザリー宅の鍵を開く海星へ「海星のお母さんがもしかしたらおれ達にロザリーさんを合わせてくれたのかもしれないっすね」と言った。海星は少し目を見開いたがふわっと笑い「そうだと嬉しいな」と答え扉を開けた。2人で歩く廊下はあの日以来キシキシと音を鳴らしながらロザリーが息を引き取っていたあの部屋まで行く。海星はすぅと息を吸い「ロザリー、こんにちは!迎えにきたよ」と言った。後ろ姿しか見えなかったが部屋に差し込む柔らかな午後の光が海星の髪をキラキラと輝かす。満足したのか海星はクルンっとこちらの方へ勢いよく回って見せたが骨壷を持ってるのもありふらつく。すぐさま手を出したが海星はイーゼルにかかっていた絵にぶつかってしまった。がたん!!!と大きな音を立てて落ちる絵、海星はと言うと変なポーズをしながら骨壷だけは死守していた。「えへ、締まらなくてごめん」とフニャッと申し訳なさそうに笑うので、良明くんもホッとと同時に力が抜けるのを感じながら「気をつけてって」と返す。海星の手を取りながらふと気づいた。落ちてる絵の裏に何かある?……海星を起き上がらせた後、良明くんは絵を戻すついでに落ちてたそれを拾う。海星は「どうしたの?」ときょとんとしてる。良明くんは静かに振り向き「これは海星宛だよ」と渡してきた。一通の手紙。薔薇の手紙がそこにはあった。




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海星へ
あなたへ手紙を書くのは初めてね。いえ、正確に言えばこれで最後になるわ。この手紙をあなたが読んでどう感じるのか正直分からない。でも筆を取ろうと私が思ったのは私が先日あなたの首を絞めたのにも関わらず怖がらずに手を握ってくれたからよ。それが本当に嬉しかったから。ふとね、あなたの小さな頃を思い出すの柔らかくて温かい手。海とは違った小さな手。私は握り返してしまったら壊してしまうんじゃないか、傷めてしまうんじゃないかと思ってなかなか握れなかったけれど、あなたが心を閉ざしてしまった間覚えてないかもしれないけれど何度もあなたの手を握って引いて歩いてた。そうせざる得なかったから。時が経つにつれてあなたの手は大きくなったわね。それでもどこを見てるのか分からない目でただ数学を解き続けるあなたと、私の寿命にて共に死ねるのであればそれでいいと思ってた。でも……海星、あなたがつれてきた従の存在は私を狂わせた。あの男を彷彿とさせて私の中の怒りを何度も何度も燃やして激らせた。それと同時に本当はずっと生きてほしいと願い続けていたあの時の微かな願望は消えずにチカチカと光続けていた。もしかしたらあの男が海星を生かしてくれるかもしれないと、私を止めてくれるのでは?としかしそんな淡い願いを持ってしまったら自分が何年も海に向けてきた思いも信念も全てを無に帰してしまう。それは自分自身の気持ちを裏切ってしまう気がして受け止められたかった。あなたと死にたいと思うのと同時に生きて欲しいと願う私はとても恐ろしい存在になっていたと思うわ。私はあなたに嫌われる覚悟だった、けれど同時にあなたのことも大切だった。自分の胸の内にある行く場を失った気持ちを抱えながらも気付かないふりをしてあなたを大切にし愛を注げればよかった。でも海しか見れなかった私はそれができなかった。私はただ、あなたに押し付けるしかできなかった。私を恨んでもいい。その方がお互い楽な道のはず。……だめね、またあなたに押し付けてしまう。それが正しいと私はすぐに決めつけてしまう。染み付いてしまってるのかもしれないわ。でも、今のあなたなら私の言葉で判断するのではなく自分で答えを導き出せるはず。そうでしょ?見てきたから私にだってあなたの変化には気づいていたわ。答えを聞くことができないのは残念だけれど
あなたと過ごした時間は私にとって海と同じくらい大切だったわ。歪んだ気持ちを抱え顔を合わせれば暗い気持ちばかりを押し付けてしまっていたけれど、それでも笑う海星の側にいれたこと私は嬉しかった。本当よ。ありがとう、小さな純白の星。

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と驚きながらも涙を流し続けている。そっと海星の肩へと良明くんが触れると海星は近くに立っていた良明くんへガバッと抱きつき泣き出した。「ねぇ、良明くん!ロザリー私のこと嫌いじゃなかったって!ずっと、ずっと心配だったもうお話もできない触れることもできないロザリーを目の前にして何度も何度も問いかけても返ってこないから、分からないからずっと私」と我慢してたものが溢れてきているのもそうだが、本当に海星は自分の元から死という形で別れる事となったロザリーさんの事を心から悲しんでいるからこそやっと流せた涙なんだと分かる。「海星、前から言っていたことやっと分かったんじゃない?」と良明くんは返しながら海星を抱きしめ返す。その言葉に答えるかのように更に海星はその後暫く泣き続けた。ロザリーの名前を何度も何度もと呼びながら……


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3月9日 7時45分

ロザリーとのお別れから6日経った朝。太陽は上り光が眩しい。今年の桜前線は到来が早いとのことで毎年5月に開催されている青花の祭典にてお目にかかれる縹桜ではない薄ピンクの通常とされる桜達は、丁度この日に満開になる所が多いとの事をニュースキャスター達も嬉しそうに伝えている。ネクタイを締めながらその楽しげな声を聞きつつ良明くんは海星に声をかける。「海星ーー!ロザリーさん達に行ってきます言った?」と、海星は「まだーー!!」と自室から声が聞こえバタバタ元気に降りてくる。一階のリビングにある棚の上にはあの日から夫婦の写真とロザリーさんの写真が大切に写真立て中に収めまれ飾られている。その横には庭から摘んできた鮮やかな花が咲き誇っていた。海星はその前に来るとピシッと身支度を整えて「今日ね、卒業式なんだ!だからちゃーんと最後まで頑張るよ!」と声をかける。その様子を後ろで微笑ましく良明くんは見守っている。海星はくるん!と元気よくこちらへターン!白い制服のスカートがひらりと舞う。そして「良明くん!行こう!」とニッカリ笑い玄関の方へと急ぐ。いつもと同じ光景、ロザリーとのお別れ後良明くんは昨年の3月のように海星が自分の海へ籠ってしまう事があるのではないかと少し心配していたがその様子は一切なかった。代わりに家族の写真を飾り毎日挨拶する習慣が増えた。海星の大切な時間、その一瞬に家族を愛する時間に使っているようだ。ささっと靴を履き扉を開けようとする海星がピタリと止まる。「どうした?」と気づいた良明くんが声をかけると海星はふるふると首を振った後「なんだかみんなに"行ってらっしゃい"って言われた気がしたの!……ロザリーやママ、パパそして今まで出会ってきた人達みんなに!」と言い、変かな?と海星は困ったように笑う。良明くんはそんな海星に「いいえ、変じゃないよ」と返す。海星はほっとしたのか「良明くんも言ってくれる?」と悪戯っぽく言ったと思えば勢いよくガチャリ!とドアを開ける。すると光と共に爽やかな風が吹き込んでくる。良明くんは眩しい光のなかへと向かう海星に向かってニッ!と最高な笑顔で「行ってらっしゃい」と気持ちのいい声をかけた。海星はそんな良明くんに答えるようににぱっと笑い



と元気な声で返事をした。

end

4話構成という長い旅にお付き合い頂きありがとうございましたm(_ _)m
本日から未来へ向けて歩んで参ります。これからも色々な事に頑張る海星の事見守っていただけると幸いです。私も同じく海星の眩しい姿を見失わぬ様着いて行きます。