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みすず
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創作
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ルネルイ
キス
湖も氷を張る季節、暖炉の火が揺れるのに合わせ、ルイゾンの横顔の陰影が変わるのをルネは見ていた。
ルイゾンの伏せ気味になる瞼や、捲るページの音が次第に緩慢になっていることには気づいており、そろそろ声をかけようかというところでルイゾンの首がかくん、と揺れる。落ちかけた本を後ろから掴めたのは、鍛えられた反射神経と単純に立ち位置がルイゾンのほぼ真後ろという近さだったからだ。
「わる
……
ぃ」
後ろから被さるように腕を伸ばしたルネと、はっとしたように上げられたルイゾンの顔は近い。語尾を弱々しくして頬を染めるルイゾンは、読書に勤しんでいた際の静謐な美しさとは異なる可愛らしさがあり、ルネは彼のうっすらと開いた唇を躊躇なく己の唇で塞いだ。
ルイゾンの痩躯がびく、と跳ねたところで離し、もう一度、二度、とキスを繰り返す。触れ合う面積でいえば腕を回して抱き合うほうが広いのに、一瞬触れ合う唇がもたらす多幸感は比にならない。
「
……
もう、終わりか?」
「もっとしてもいいんですか?」
やわこい唇を軽く喰み、惜しみながら身を起こしたルネを、ルイゾンが薄氷色の目をとろりとさせながら見つめてくる。諾があると分かっているのに訊き返してしまったのは意地の悪さも否定できないが、ほんの僅かなことでもルイゾンに自身が与える側という意識を持ってほしいという願いもあった。
「
……
ん」
恥ずかしそうに眉を寄せつつも頷くルイゾンに、ルネはいますぐこの殿下の全てを貪ってしまいたくなる。自覚する凶暴性を宥めるのには、いつも苦心していた。
掴んだままの本をサイドテーブルへ置く。
ルイゾンの前に立ち、ルネは掬い上げるように彼の頬を両手で包んだ。冬の美貌は当然ながら暖炉に火照った人肌の熱が通っている。どんな表情を浮かべてしまったのだろうか、一瞬見開かれたルイゾンの目がさっと横を向いたのと同時に、ルネは噛み付くも同然の勢いで愛しい殿下の唇を奪った。
舌を絡めることも息継ぎの仕方も自分が教えたのだと思うと、ルネはぞくぞくと不埒な喜びを抑えられない。
指先をルイゾンの耳に差し込んで「ん、ッ♡」と上がった声を呑みながら、ぬちぬちと絡めた舌を吸い上げる。脳髄が焼けそうなほど心地良くて、耳の中を優しく引っ掻きながら蹂躙にも似たキスを続ければ、ルイゾンの体はがくがくと震え出した。ソファへ掛けていなければ、彼はとっくに立っていられなかっただろう。
「
……
っは
……
はは、やりすぎました、ね
……
?」
ゆっくり首を振ったルイゾンは、ソファへ身を預け胸を激しく上下させている。力が抜けて投げ出された脚、その付け根に目をやってルネも下衣がきつくなった。
「
……
しない、のか」
もごもごと不明瞭な小声。
「
……
続き、は
…………
いや、なんでも」
「しますが」
「そうか
……
は?」
ルイゾンがぽかんとした顔をするので、ルネはもう一度「しますが?」と繰り返す。
ほんとうになにを仰っているのか。ここまでして、されて、はいおしまいと逃がすと思っているのだろうか。そうできるほどルネは行儀が良くない。
「寝室へお連れしても、よろしいですね」
「
……
頼む」
抱き上げれば自然に腕が回されて、ルネはルイゾンの「慣れ」に喜ぶ。どれだけささやかでもいいから、ルイゾンには尽くされることを当たり前に思ってほしい。ルネにできることなど、ルイゾンが本来受け取るべきだったものと比べれば砂ひと粒にも満たないけれど。ルイゾンから与えられる幸福に、とても報い切れやしないけれど。
ルネはルイゾンを寝室へ連れて行くために奥へ奥へと廊下を進む。このまま連れ去ってしまえたら、と思うのを否定できない。
どこかで雪の落ちる音がした。それさえ静かで、積もった雪は主人への不逞を隠すだろう。
春はまだ来なくていい。芽吹かせ咲かせるものはない。
ルネはどうか離さないでと願いごとルイゾンを抱きしめ、閉じた冬に憩う。
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