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駆動マキナmk-2
2024-10-26 12:09:37
1947文字
Public
hrak
最果ての空席/#5 続・おやつかつまみかスライスチーズ
hrak夢/💥/名前変換なし
(あーあこりゃ失敗したな。おやつ我慢するべきだったか)
爆豪くんにフミコミザンくらい踏み込まれた。プライドクソ高・キレたナイフ・凶暴・獰猛・暴言。そういう人間だから波風立てないように関わらないでいたのにそのツケが回ってくるとかフツー思わない。助けてください切島くん。
それはさておき、ここからどんなカードを切るべきか。「入りたいの?」や「入ってどうするの?」と返すのは彼の自尊心を大いに傷付ける愚行だ。「ノーコメントで」これもどうかと思う。
「
……………
」「しないでしょ。馴れ合い」「嫌。入れたくない。私の世界に爆豪勝己という人間はいらない」「また日を改めて話そう」「ア"ーーーーーッ!!(逃走)」
うわっ
……
私の手札、事故すぎ
……
!? つかえねー紙束だな。ストラク3つ買え。あーやだ、おーやだ。無理にでも話を切り上げたい。ビーバーのように絶叫して走り去りたい。さっさと自室に戻りたい。どこか寂しげな声をした彼の目を見たくない。
ああいけない、このままでは爆豪勝己という人間の属するカテゴリが「得意ではない相手」から「苦手な相手」に悪化する。それは大変よろしくない。共同生活では人間関係が何より重要だ。私は可能な限りストレスフリーで毎日を過ごしたいのだから。
「おい
……
なんか言えよ
……
!」
アッアッアッこれは不味いお相手さんがそろそろ限界になる。まさに時限爆弾。ADVゲームなら選択肢をじっくり考えられるのに。
「
………
わからないや。『ごめんね』」
そうして出したのはテンプレじみた濁した返答と、大して詫びの気持ちなど込めていない謝罪。いや謝罪というかこれは「ご」と「め」と「ん」と「ね」を繋げただけの発音だろう。
「分かんねえって、ンだよ。お前
……
なんで
……
。っ避けんな! 逃げんな! 向き合えよテメェ!」
「えぁっ」
抱き締められた。誰が誰に? 私が爆豪くんに。
(うーわうわうわうわうわうわ、)
Q.対戦相手が物理的に盤面をグシャグシャにしてこちらへ直接攻撃をしてきました。この場合の裁定はどうなりますか?
A.調整中
「ちょ
……
離っ
……
ばくごっ、く、」
「うるせえんだよ
……
!」
(ぐぇぇぇぇ
……
やばいやばいやばい力強すぎ! 飛び出る飛び出るモツが飛び出る! わしゃ飛び出す絵本か! とびだすなかみする!)
*雄英スラング*。この人衝動が理性を上回ってる。上級理性回復剤を飲めドクターバクゴー。押し退けようとしても全身がっちりホールドされてて無理。ふざけるでねえこん馬鹿力。筋力Aか? おっと心は硝子だぞ。
「
……
なんでっ俺がっ。俺だけだ。俺ばっかり考えて、クソずりィ。テメェは俺のことっ、見向きもしねえッッ、っっ何一つ考えねえ
…
!!」
「─────」
平静とは程遠い上擦った震え声。超至近距離の赤眼は潤んでいる。知る気なんてなかった。爆豪勝己という人間がそういう顔をすることなど。そんな乙女ゲーのスチルみたいな光景が見えたのは一瞬だった。視界が暗くなって唇に柔らかい感触。ふに、って感じのやつ。
……
こちとらヒーローを目指す身だがこればっかりは言わせてほしい。助けてヒーロー。
◆
何秒経ったのか。ひょっとしたら一分以上かもしれない。爆豪くん体温高いなとか男子特有の匂いがするとか考えてる内に身体を檻のように閉じ込めていた彼の腕の力が少しずつ緩んでいった。
唇が離れていく。とっさに胸板を軽く押すと爆豪くんは驚くほど大人しく離れた。
彼は何も言わない。表情は正直私が見たくない。まじで勘弁してほしい。こういう雰囲気ガチで無理。
「
……
私部屋戻るんで」
返事を待たずに回れ右。本当におやつ食べなきゃよかった。処方薬として気分転換が必要だ。マンガかゲームかスマホか、もしくは予習。
◆
静かになったキッチンには俺だけが残された。不意に冷蔵庫から製氷をする音が虚しく響く。
(あいつが食ってたやつ
……
)
誘われるように冷蔵庫を開ければスライスチーズはあと3枚残っていた。その内の一枚を取り出してフィルムを剥がす。薄黄色の表面にブラックペッパーを軽く振って海苔巻きのように巻いたそれを口に運んだ。
「
………
ん
……
」
チーズの塩味と旨味、そしてブラックペッパーの香りと辛さの組み合わせは悪くねえ。ババアとクソ親父が好きそうなやつだこれは。
「何がおやつだよ、やっぱ酒のつまみじゃねえか」
それでも俺としては辛さが足りない。普段なら迷いなくデスソースを塗りたくる。だが今の俺はそんな気にはなれなかった。あいつが美味そうに食ってたのと同じモンを食いたかったから。それだけだ。
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