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駆動マキナmk-2
2024-10-25 19:37:45
1969文字
Public
hrak
最果ての空席/#1 罪の味だよチーズソースとブリトーは
hrak/💥/名前変換なし
「それ、うめぇンか」
クラス1の辛いもの好きな彼が指差した先にあったのは主にコーヒー豆や輸入食品を取り扱うお店で私が購入した調味料。ハラペーニョ入りのメキシコ産
……
と思いきや実はアメリカ産のチーズソースである。今日は日曜のお昼時。購買で買ったブリトーに私はそれを使うところだったのだ。
「ん? うん。私は好きだよ。でも辛さは少しピリッとする程度だから爆豪くんには物足りないんじゃないかな」
「
……
ちょっと貸せや」
「うん。いいよ」
ここで「あんまり辛くないよ? いいの?」みたいに念押しすると爆豪くんの機嫌が急降下する様が容易に想像できる。生憎と私は怒鳴られて良い気分になる人間ではないのでそういうことは言わずに気前の良さを演出するのだった。
男性らしいゴツみのある手がチーズソースの容器を掴み、彼の昼食とおぼしき白ご飯に適量がかけられていく。爆豪くんは割と常識があるのでどこぞの漫画に登場するマヨラーな副長のような気の狂ったかけ方はしない。
ぱくり。もぐもぐ。ごくん。一口食べて思案して、
「
…………
」
あ、あっ、あー。おもむろに取り出された真っ赤なデスソースがチーズソースご飯にぶちまけられた。更に醤油を一垂らし。やっぱり物足りなかったようだ。
「あんまり美味しくなかった?」
「いや。嫌いじゃねえ」
「そっか」
まあクソまずいとか吐き捨てられなかっただけよしとしよう。めでたしめでたし。
◆
話は変わるが、私は爆豪勝己という人間を嫌っている訳ではない。それはそれとして好きの部類にも入っていない。表現としては苦手の十歩ほど手前「得意ではない」が最も適切だろう。
授業で彼とペアや同じチームになった時は良い結果を出せるように真面目に立ち回る。それだけだ。どういう性格か、どういう人間かの最低限の理解はした上で基本的に関わらないのである。
なので至極積極的に絡みに行ってる切島くん上鳴くん瀬呂くん芦戸さん、自分の意見を平然と言ってのける梅雨ちゃん、体育祭で真っ向からバトった麗日さん、そしてスナック感覚で怒鳴られようが爆破されようがあんまり気にしてなさそうな緑谷くんは本当に凄い。心の底から尊敬している。おわり。
さあ私も昼食タイムだ。500Wで一分間チンしたことで熱々になったハムとチーズのブリトーに包丁を入れる。一口サイズにカットしたそれを摘まみ、小皿へ出したチーズソースを付けて口に運べば───
「んん
……
はふ
…………
」
舌の上でトルティーヤとチーズとハムが奏でるハーモニー。ちょっぴりピリッとハラペーニョなチーズソース。堪らねェなこのジャンク感。戦闘訓練やら救助訓練やらでダイナミックに動き回るからこいつは実質カロリーゼロだ。夢みたいな話だね。人の夢は終わらねェ。ドン!!
………
ふと、隣に立つ爆豪くんから妙に熱のある視線を感じ取った。待ってほしい。それは流石に笑えないジョークと言わざるを得ない。
「なあ、」
「ダメ。イヤ。ムリ」
「まだ何も言ってねえだろうが!!」
「流石にこれ寄越せは面の皮が分厚すぎるよ爆豪くん。ライン超えてる。雪見だいふく二つ寄越せと同義。常識と道徳と倫理がない。恥というものを知ってほしい」
「!!
…
っンの
……
食い意地女
……
!!」
「そうです。私が食い意地女です。イェーイピースピース」
さらば掲げろピースサイン(ダブル)
爆豪くんの頭部からブチブチブチみたいな音の幻聴がしたが引く気はない。食べ物が関われば容易く修羅に堕ちるのが日本人だ。即ち徹底抗戦の構えである。
「こらこらこら爆豪何キレ散らかしてんだ! 喧嘩すんな喧嘩すんな!」
その者赤き頭髪を逆立てて寮のキッチンに降り立つべし。救世のぐう聖は来たれり。切島くんが間に入ってくれている内にチーズソース付きカットブリトーを全て胃に収め、迅速に食器と包丁を洗い、私はその場を後にした。
「じゃ、ごっつぁんです」
「テメェ待てやゴルァ!!」
「あーもう! やーめーろって!」
ああまったく。とんだランチタイムだ。やっぱり私は爆豪勝己という人間が得意じゃない。
なので。
「えーと、つまり? あんまりにも幸せそうな顔だったからつい食いたくなっちまって。すごい勢いで拒否られてショックだったんだな? なっ爆豪?」
「
…………
うるせぇ
……
」
「爆豪あんまりあいつと話さねえもんなー。二人で喋れて嬉しくて、つい距離感計り損ねちまったんだよな? な?」
「
……
うるせぇ
………
」
「美味いもんシェアしたいって気持ちは分かるぜ。でもちょっとだけグイグイ行きすぎちまったんだな? な?」
「うるせぇ
………
!」
こんな会話がされてたのは知るよしもない。
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