駆動マキナmk-2
2023-06-17 00:42:48
6077文字
Public 雑多
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404 NOT FOUND 6

岩男EXE夢/亡霊速/亡霊光

ネクロネクロネクロネクロネクロネクロネクロネクロネクロネクロネクロネクロネクロ コサックの助力を得て先に進んだ熱斗たちを待ち構えていたのはあの無人戦車だった。

 戦車を内部で操っていたWWWのナビたちはどうにか撃破したものの、トラキチとデカオは無人戦車が再び動き出さないようにとそれぞれ一台目、二台目の近くで待機することに。

 そうしてWWW本拠地を進んでいった熱斗の眼前に在ったもの。それは────

「炎山!!」

 二台目の無人戦車の攻撃によって分断されるも先に進んでいたはずの炎山、彼が三台目の無人戦車が放ったであろう炎に囲まれている光景だった。

────オレに構うな、一刻も早くプロトをデリートしろ。

 炎山はその身を灼熱の炎に晒されながらも冷静に告げる。だが。

「バカヤロウ! 友達一人助けられないで世界が守れるかってんだ! オレは絶対にお前を見捨てたりしない!」

 迷うことなく熱斗は無人戦車へとプラグインした。







「よーお光熱斗、この間は助かったぜ。お前さんのお陰で科学省を一網打尽にできたんだからな!」
「ヒノケン!! お前のせいでどれだけの人が傷付いたのか分かってるのか!?」
「オレたちはオレたちに必要な仕事をこなしたまでよ。それで何人傷付こうがオレの知ったこっちゃねえな!」
「この野郎……!!」

 三台目の無人戦車の電脳でロックマンを待ち構えていたのはプラントマンとフレイムマン、そしてWWWのオペレーターであるアネッタとヒノケンこと火野ケンイチだった。自らが引き起こした科学省火災事件に対しても何てことないような言動のヒノケンに熱斗とロックマンは怒りを露にする。

「じゃあわたしも、わたしがやるべきことをする。それであんたらWWWがどんな目に遭おうがわたしの知ったことじゃない」

 するとこの場にそぐわない冷めた声が差し、無人戦車と相対していた熱斗が思わず振り返るとそこにはコサックの助手を名乗っていた女性が肩から羽織った白衣を風にはためかせながら立っていた。

「いくらN1に出場した強豪ネットバトラーとはいえ、子供四人でWWWに乗り込んだ挙げ句に戦車とバトるとかちょっと血気盛んすぎると思うんだわ」
「助手のお姉さん……!」
「だがまあ、コサック博士から未来ある若人を助けてやってくれと言われたからね。加勢するぞバンダナ少年。プラグイン! ネクロ.EXE、トランスミッション!」

 無人戦車の電脳の中でWWWの面々と相対していたロックマンの元に新たなネットナビが現れた。穏やかな顔立ちに反して隙と呼べるものは一切見受けられない。

「キミは?」
「うーんと………マスターからあなたの援護と、できればあの敵性ナビたちをデリートしてこいと言われただけのネットナビです」
ネクロ、奴らがプロトの復活を目論んでいる以上時間は掛けられない。わたしがオペレートするから“二人”への指示は頼む」
「了解しました」

 突然の乱入に一瞬戸惑うロックマンだったがそのナビが自分の味方であると理解して安堵と共にバスターを構え直す。だが更なる参戦者に熱斗とロックマンは驚愕することとなった。

「な……! こいつらは……!!」

 ネクロに続いて無人戦車の電脳にプラグインしてきた者たち。それは過去におくデン谷のダム爆破を阻止するためにロックマンが対峙した高速を誇るナビ。そして先ほど一台目の無人戦車の中で倒したはずの閃光と電撃を操るナビ。クイックマンとフラッシュマンだった。

「あ? フラッシュマン? あいつデリートされたんじゃねえのか? まあいい、生きてたんなら好都合だ! やっちまおうぜフラッシュマン!」

 自分と同じくプロト復活のために動いていた者のナビが目の前に現れたのだ。勘違いしてしまっても仕方がない。そして炎属性のナビであるフレイムマンを従えているヒノケンのこの発言は炎に嫌な経験を有しているフラッシュマンの神経を大きく逆撫でするものだった。

………………!!!」

 フラッシュマンの手のひらでバチバチと火花を放つプラズマボールが生成されていき、彼はそれをプロ野球選手顔負けの投球フォームでブン投げた。誰に向かって? ヒノケンに。豪速で飛んでいったプラズマボールはヒノケンの顔のギリギリを掠めた後そのまま遥か後方で眩い輝きを放ちながら爆発四散した。あまりにも突然すぎる蛮行にヒノケンは怒り心頭といった様子で怒鳴り散らす。

てっ、てっ、テメェーーーー!!! 何しやがる殺す気かこの野郎!!」
「『敵の癖に偉そうに指図してんじゃねーぞ、次寝言抜かしたら顔面にブチ当てるからなクソヒューマン』だってよ。フラッシュマンもそうだそうだと言っている」
「えっ、ヒノケンが敵ってことはフラッシュマンはオレたちの………味方!? クイックマンも!!?」
「あれーバンダナ少年、この二人のこと知ってんの?」
「知ってるも何も……オレとロックマンが戦ったことがあるナビだよ! フラッシュマンに至ってはさっき倒したばっかりだし! どういうことぉ!? 」

 もう訳が分からないといった顔で叫ぶ熱斗だったが対するロックマンは彼らがどういった存在なのかを理解したようだった。

「待って熱斗くん! この二人のデータ形式………間違いない。彼らは亡霊ナビだ!」
「ぼぼぼぼ亡霊ナビぃ!? つまりえっと、敵なのか!? 味方!!?」
「味方! 味方だバンダナ少年! それだけ分かってくれればいい!」

 コサックの助手がそう言い切ると同時に彼女のナビとクイックマンとフラッシュマンが臨戦態勢に入る。先ほどまでは1対2だったが今は4対2。かつて敵対した厄介な者たちが亡霊ナビという厄介な存在となって自分たちの味方に回るという奇妙な状況だったが、熱斗もロックマンも彼らに心強いものを感じていた。

「お仲間が何人増えたところで同じことだ! ロックマンもろとも焼き尽くしてやるぜ! フレイムマン、フルシンクロだ!」
「誰だか知らないケドお前らもインターネット社会の味方するカ! 自然の敵メ!!」
「アネッタ、我々も一つに!」
「うん! わかったヨ! フルシンクロ!!」

 パルストランスミッションシステムで精神データとなったヒノケンとアネッタ、それぞれがフレイムマンとプラントマンと一体化していく。プロト復活が目前に迫る今、こちらも引く気など毛頭ない。

「マスターが私をオペレートするのは久しぶりですね。勘は鈍っていませんか?」
「鈍ってると思う?」
「まさか。……頼みますよ、マスター!」







 戦いはこの上なく優勢に進んでいた。

 灼熱の業火を吐き散らすべくフレイムマンが攻撃の態勢を取ろうとすればフラッシュマンは即座に両肩部の電球を掲げて強烈な閃光で以て阻止し、その隙を突いたロックマンがアクアソードによる一閃を叩き込む。

 プラントマンがこちらを射抜かんと鋭利な棘を放てば射線上に割り込んできたクイックマンが悠々と捌き、反撃と言わんばかりにネクロのチャージショットが正確に撃ち込まれる。麻痺や混乱の効果を有した花粉を撒き散らそうとフィールドに咲かせた色鮮やかな花々もクイックマンが投擲したブーメランが迅速に刈り取っていった。

「くっ……その亡霊ナビたち、さっきから実に鬱陶しいね……美しくない……!」
「ヴォォォォォッ! ヴォヴォヴォアァァァァァッッ!!!」

 徹底的なまでの妨害で怒りが頂点に達したフレイムマンの咆哮が電脳空間に轟き、大量のフレイムタワーが噴火のような勢いで噴き上がる。だがこれはこの上ない好機だった。冷静さを失った者がネットバトルで勝てるはずがないのだから。

「クイックマン、フラッシュマン! フレイムマンの方をお願い!」

 自分を捕らえようと襲い来るプラントマンの蔦を軽やかに躱しつつ声を張り上げるネクロ。彼女からの指示を果たすべく赤と青の亡霊が動き出した。

 灼熱の猛威を瞬時に掻い潜ったクイックマンが投じたブーメランが額のナビマークに命中してフレイムマンが怯み、それを見逃すことなくフラッシュマンは一気に接近を果たす。突き伸ばした右腕から激しく迸る電光がフレイムマンに襲い掛かった。

……ッッ!!!」
「ヴォオッ!? ヴォアァァッッッ!!」

 スパークアームの直撃による麻痺でその巨体が硬直したのを確認し素早く離脱したフラッシュマンはロックマンを一瞥して頷く。「仕留めろ」と。ロックマンはそう告げられているとしか思えなかった。

……! 熱斗くん、これで終わらせる! 水属性のチップを!!」
「ああ任せろ! バトルチップ、バブルショット、バブルブイ、バブルサイド!」
「プログラムアドバンス、バブルスプレッド!!」

 撃ち放たれた水弾が無防備なフレイムマンに命中し泡の爆発が巻き起こる。燃え盛る身体を持つ彼にとってその一撃はまさしく致命傷となった。

ネクロ、こっちも決めろ! 願いましてはインビジブル……フミコミザン、パラディンソード、フミコミクロス!」

 流れるように送られてきたチップデータ。姿も気配も当たり判定も消し去ったネクロは力の限り地を蹴ってプラントマンまで距離を全速力で詰めていく。


「プログラムアドバンス────」


 インビジブルが解けてプラントマンと視線が交差したがもう遅い。防御も回避も間に合わさせやしない。悪足掻きのように伸ばされた蔦がネクロの左脇腹を抉るもそのダメージは彼女を止めるまでには至らなかった。


「悪、」
ワイドソード。右腕を落とす。

「裂、」
パラディンソード。左腕を落とす。

「───斬」
クロスソード。相手のナビマークを中心に引き裂いた。


「がはッッッ……可憐な花に見せかけて、随分と鋭い葉を潜めていたようだ……

 両腕を失ったプラントマンは温度のない眼差しに見下ろされながら膝から崩れ落ちる。しかしアクレツザンによる三連の剣閃を受けたその身が粒子状のデータへ分解されていく中でも彼の表情は不敵なものだった。

「フ、フフ………だが貴様らが幾ら強くとも………プロトの前では………!!」

 遺されたのは不吉な言葉。プラントマンという存在の名残とも思える一片の花弁がネクロの眼前でひらりと舞い、そして音もなく消え失せた。ソードに変形していた右腕を通常のアームに戻しつつネクロは己の主人へ告げる。

………敵性ナビ、プラントマン及びフレイムマンのデリートを確認。制圧完了ですマスター。ではロックマン、共闘ありがとうございました。お先に失礼します」
「うん! 助けてくれてありがとう、ネクロ! クイックマンとフラッシュマンも!」

 無人戦車を操っていたプラントマンとフレイムマンを撃破した以上、もうこの電脳に長居は無用だ。ロックマンへぱたぱたと手を振ってからネクロは亡霊ナビたちと共にプラグアウトした。


────そして。


 全てが終わった。フォルテが防衛プログラム・ガーディアンを破壊したことでプロトは遂に復活を果たすも、パルストランスミッションシステムによって電脳世界にダイブした熱斗とフルシンクロをしたロックマンとの死闘の果てに完全にデリートされ、終末戦争を引き起こさんとしていたワイリーの野望は潰えることとなった。

 崩れゆくWWW本拠地から脱出し、デモンズ海域を無事に越えてビーチストリートに帰還した若きネットバトラーたち。自分たちを迎える多くの人々へ熱斗は涙をこらえて「ただいま」と微笑む。

 ロックマンのいないPETを持つ彼の心は深い悲しみに満ちていた。







「さてと……コサック博士は病院に送ったし、わたしたちも帰るか!」
「マスター、あれで良かったんですか? 病院の人にあんな……『自分は彼と無関係です』なんて言っちゃって……
「いーのいーの、後のことはオフィシャルに丸投げすれば。まあ嘘でもあの人の助手って名乗れたのは嬉しかったけどね」

 PET片手にゆっくりと帰路を歩む一つの影。彼女が一歩進む度に肩から羽織った白衣が揺れた。

「フォルテのことは……
「それもオフィシャルが伝えるでしょ。もうわたしができることはないよ」

 反対側の道路に配置されていた無人戦車が撤収の準備を始めていて、物々しかった景色は見慣れた日常的なものへ少しずつ戻っていく。

「話は変わりますが、プロトに飲み込まれたデータは復元できるものなんでしょうか?」
「あんま言いたくないけど……厳しいかな。プロトの反乱の時はひどいものだったんだよ。ガーディアンをブチ込むのに手一杯で、奴に喰われたデータをサルベージする余裕なんて皆無だったから」
「そうですか……

【ネットワーク上に蔓延していた正体不明のバグ、急激に消滅!】そんな臨時ニュースが流れる大型ビジョンを道行く人々が見上げていた。

……クイックマン、フラッシュマン、今日は本当にお疲れ様。WWWとの戦いでは何度も助けてくれてありがとう。それと……これからも……よろしくね」
………!」「………

 電脳空間の中で一人のナビが小さく笑む。こんなにも穏やかな心地は初めてかもしれない。そう思いながら赤と青、二人の亡霊は静かに頷いた。



「あ、そうだマスター。牛乳は買わなくていいんですか?」
「やっべ忘れてた。どっか店開いてるかな」







ところで熱斗。WWWの本拠地でコサック博士と一緒にいた人のことなんだが。本当に助手と言ってたのか?


うん。肩から白衣を羽織った女の人。その人のナビ物凄く強かったんだよ。ネクロって名前で、一人じゃなくて亡霊ナビと一緒に戦ってて……ああでも助手さんの名前は聞きそびれちゃったんだ。


亡霊ナビと共に戦うナビ……パパも初耳だな。それにしても、あの人に助手……しかも女性? いや、まさか……


パパ? 何か知ってるの?


……………パパの昔の同僚にね、コサック博士のことをとても尊敬している人がいたんだ。だからこそ、世界初の自動プログラムナビであるフォルテが電子機器異常の原因と見なされて彼のデリートが決定し、それに猛反対したフォルテ製作者のコサック博士が拘束された時……その人は荒れに荒れた。


…………


そして電子機器異常の原因がフォルテではなくプロトだと分かった時、彼女は科学省を完全に見限った。「わたしはもう二度と世のため人のための研究なんてしない」……プロトの反乱が終息した後、そう言い残して科学省を去ったんだ。


……その人はなんて名前だったの?


─────巫道 御霊ふどう みたま。次世代ネットナビ開発チームのメンバーだった。…………今は、何処で何をしているんだろうな……