駆動マキナmk-2
2023-06-06 22:42:52
2827文字
Public 雑多
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404 NOT FOUND 4

岩男EXE/亡霊速/亡霊光

ネクロネクロネクロネクロネクロ 新たな亡霊ナビを探しに秋原エリアにやって来たネクロとクイックマン。しかし突如としてフレイムタワーが大量に生えてきて一帯は火の海に。

 周囲が大混乱に陥る中で謎の光を垣間見たネクロはクイックマンを連れてその場所へ向かう。行く手を塞ぐ巨大な火柱をドリームソードで消し飛ばした先には見知らぬナビが傷を負って倒れていたので共に帰還。

 わたしとプログラムくんたちの甲斐あって謎の怪我人ナビ、フラッシュマンは無事に回復したのだった。めでたしめでたし。


 ではここらで答え合わせと行こう。


 そもそもネクロは秋原スクエア付近で稀に起きるという怪光現象を亡霊ナビと仮定して秋原エリアを訪れていた。

 後から確かめたところ、その現象が起きるらしい場所とフラッシュマンが倒れていた場所は完全に一致。

 そして解析した彼の中にオペレーター情報が欠片も存在しなかったという事実。極めつけは一般ナビでも自立型ナビでもなく亡霊ナビであるクイックマンに酷似したデータ形式。流石にここまでくればもう分かるはずだ。





「ようするにフラッシュマンは亡霊ナビだったわけよ。いやースッゴい偶然だったねー」
…………………
「ソウデスネー……

 ここはマスターのパソコンの電脳の中。私の目の前にはすっかり修復されたフラッシュマンが立っている。

「あの、もう身体は大丈夫なの?」

 恐る恐る問えば無機質な赤い瞳の彼は静かに頷いた。ライトのような作りになっている両肩と頭部や眩い光を彷彿とさせるナビマーク、何よりフラッシュマンという名前。燃え盛る秋原エリアの中で見えた輝きはやはりその身から放たれたものだったのだろう。

「えっと、初めましてフラッシュマン。私はネクロ。対亡霊ナビ特化自立型ネットナビ。亡霊ナビの研究をしてるマスターのサポートをしています」
………(頷く)」
「それで、あの、もし亡霊ナビであるあなたに不都合がなければ……ここに身を置いてマスターの研究に協力してほしいなって私は思ってるんだけど、……どうかな
…………
「ぴっ、」

 唐突に手を取られた。助けて。







 火炎を薙ぎ裂いた手は意外なほどに柔かった。両手でそっと包み込むと相手は困り顔で見上げてくる。

 これでも目覚めた直後は様々な疑問が渦巻いていたのだ。何故生きているのかと。何故助けられたのかと。だがこうして彼女に触れたことでそれら全ては取るに足らない愚問でしかなかったと悟った。

 死にゆく己を救ったお前に報いたい。あの真白の輝きを放つ時がいつか訪れたのならそれはきっとお前の為だ。空白ばかりの胸の内にそんな思考が滲んでいく。

(じゃあな、フラッシュマンオリジナル)

 会ったこともない、そしてこの先会うこともない想像上の存在に別れを告げてしなやかな指先を自身の顔───より人間に近い外見のナビならば口があるであろう場所へ寄せた。

「ひえ、ぁ、はわ、わわ
「同意ってことでいいのかなこれ。にしてもすげえ王子様ムーブ。どっかの良いとこのナビだったのかねー」

 言葉を持たない身体での意思表示だったがマスターなる人間には伝わったようなので一先ずは良しとする………と思ったら先ほどから後方で静観していた赤いナビが足早で近付いてきたかと思うとネクロの腕を掴んで引っ張り寄せた。

「っうぇ、っあ、クイックマン、」
……………
……………
「おっ修羅場!? 修羅場か!? 愛と憎しみのインターネット!!?」
「バカ言わないでくださいマスター! 本当に二人が喧嘩始めたらどうするんですか!」

 相対して確信した。こいつは俺に極めて近しい存在だ。こちらを見据える緑眼に友好的なものは感じられないがそれと同時に敵意もない。「お前のことは気に入らないが守る対象は共通している。いがみ合うつもりはない」そう主張しているように思えた。







《インターネット国で暴走した軍事兵器が無差別に攻撃を
《ニホン全国に配備された無人戦車が
《市民の皆様は外出をしないように
《事件の元であるWWWを全力で調査し

「うーわどの局も同じような話題しかしてないわ。ツマンネ」
「インターネットも危険な状態みたいですね。活動していたナビがまともに動けなくなるそうだからプラグインしないようにと注意喚起のメールが来てましたし」

 科学省火災事件から数週間後。多分WWWがやらかした。外では昨日から多数の無人戦車が配備される厳戒態勢となっており物々しい雰囲気が漂っている。メトロもオフィシャル以外は使えないそうで、職場から急遽休みを言い渡されたマスターは自宅で缶詰状態になっていた。

「うあーひまー。退屈死するー」
……あ、そういえばマスターちょっと前にホットケーキミックス買ってましたよね? あれを作ってればいい時間潰しになると思いませんか?」
「おっナイス名案、流石わたしのナビ。よっしゃ今日のおやつはホットケーキだホットケーキ」

 良かれと思い何気なく口にしたこの発言。私はこれを直ぐ様後悔することとなった。

「牛乳がねえや、買いに行くべ」
「何言ってるんですか外出ダメって言われてるじゃないですか! 戦車出てンですよ戦車ァ!! 短時間ですけど暴走したって昨日のニュース忘れたんですか!?」
「いやでももうボウルに粉出しちゃったし。大丈夫大丈夫、買ったらすぐ帰ればオッケーっしょ」
「うわー! ホットケーキ作りなんて提案しなければよかったー! クイックマンフラッシュマン助けてー!」
………」「………

 そして今に至る。マスターはPET片手に町中を生気の失われた目でとぼとぼ歩いていた。牛乳を求めて外に繰り出したものの店はどこも臨時休業。スーパー、コンビニ、デパート、全滅である。

「牛乳どこ……? ここ……?」
「それは三角コーンですマスター。行った場所全部閉まってましたね。やっぱり相当な緊急事態なんですよ。もう諦めて帰りましょう」
「どうして……どうして……

 気付けばビーチストリートの方まで歩いてきてしまったようだった。空は鉛色の雲が立ち込め、海も波が大分荒れている。

「天気も良くありません……。一雨来そうですしもう早く帰るべきです」
「────」
「マスター? 聞いてますか? ………マスター……?」

 返事はない。マスターの歩みが止まる。その時になって私はようやく違和感を感じ取った。



「コサック博士、」



 電脳世界の異変。軍事兵器の暴走。秒読みの終末戦争。世界が滅ぶかどうかの瀬戸際。

 これは恐らく私にとってもマスターにとっても、クイックマンにとっても、フラッシュマンにとっても、一番長く波乱に満ちた一日だったのかもしれない。