駆動マキナmk-2
2023-05-29 18:56:52
3362文字
Public 雑多
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404 NOT FOUND 3

岩男EXE/亡霊速/亡霊光

ネクロネクロネクロ《メットー!》
《メットメットー!》
《ラビー!》

「ハイハイどいてー」
………!!」

 大半のナビがプラグアウトをして静まり返った通りを走り抜ける中、この状況でも寄ってくるウイルスをソードで切り払い、クイックマンはブーメランを放って軽々と蹴散らしていく。そうして先ほど光が微かに瞬いた場所に辿り着くも、そこには今までの物よりも一際大きな炎が凄まじい熱を発しながら聳えていた。

「さっきの光、この炎の向こうから見えたはずなんだけど……!」

 この規模では恐らく水属性と言えどもバブルショットやアクアソードのような通常のチップの攻撃で消すのは厳しいだろう。ならばそれ以上の出力で消し飛ばすべく所持しているフォルダから望みのデータを素早く検索し始める。

(ソード……ワイドソード……ロングソード!)

「プログラムアドバンス! ドリームソードッッ!!」

 3種類のチップデータが融合したことで巨大な刃へと変形した右腕で眼前の灼熱を薙ぎ払うと────炎が消え去った先には背の高い青色のナビが力無く倒れていた。

「クイックマンお願い!」
「!」

 その言葉で何を求められているのかを瞬時に理解した彼は一瞬で倒れているナビの元へ接近してその背に負うや否やこちらへ直ぐ様戻ってきた。長時間炎に晒されていたであろう青いナビは全身が損傷している。

 炎から救出できたのは良いが問題はここからだ。普段通りにプラグアウトをしたらこのナビを置き去りにしてしまうだろう。クイックマンには申し訳ないのだがプラグインした場所までひとっ走り頑張ってもらうしかない、そう思った時だった。

……! し! もしもし! もしもーし!?》
「え、通信って、」
《ウワーよかった繋がった!》
「あ、ま、マスタァァァァー!!」

 地獄に仏ならぬ地獄にマスター。聴覚に飛び込んできた聞き慣れた声に張り詰めていた緊張が一気に緩む。

《なんか今科学省で火災が起きててさあ!!? 電脳世界もやべーことになってるんじゃないかって思ったら科学省エリアどころか色んなエリアが大炎上してるって! とにかく今すぐプラグアウトして帰ってきて!》
「すみませんプラグアウトは無理なんです! プラグインした場所まで帰らないとで!」
《え、無理って何!? なんで?!》

 どうやらこの炎上は秋原エリアだけの問題ではないらしい。もうこれ絶対WWW辺りがいらんことしたからなんじゃないだろうか。ほんとやめてほしい。壊滅したのなら復活なんてしないで永遠に黙っていてほしかった。

「あの……っ炎に巻かれたナビがいて、今すぐ修復しないと危険なんです! でもプラグアウトしたら置いてきぼりにしちゃいますよねこれって!?」
あ"ーーー事情は分かったとりあえず今どこいるの!?》
「秋原スクエアの近くです!」
《ほいりょーかい秋原スクエアの近くね!!? ………よっしゃ見つけたァ! こっちのパソコンに繋がるリンク貼るからクイックマンと一緒にその怪我人ナビ連れて通ってきて! そのリンクは即消すからダッシュでお願い!》

 通信が切れた直後、私たちの目の前に光の柱が現れた。きっとこれがマスターが貼ったリンクだろう。

「行こう。クイックマン」
………

 マスターが安全な帰り道を作ってくれた以上もうこんな場所に用はない。私たちは今も無数の炎が燃え立つ危険地帯を後にした。







 視界が潰れるほどの白い輝き。まっさらな記憶領域にすら焼き付いたアレはきっといつかの自分が残り僅かなイノチを振り絞って放ったものだったのだろう。

何のために?/覚えていない。
自分は何故ここにいる?/分からない。
自分は誰だ?/かつてフラッシュマンという名のネットナビだったモノ。

 少し離れた場所から賑わいが聞こえてくる。自分はあそこには行けない。行かない。行く意味がない。ここを動いて何になる? もうやめよう。思考を行ったところで何もかも無意味なだけだ。自分は此処に在り続けて、そして此処で消えるのだから。

 そんなことを思っていたのがいつのことだっただろうか。

……………………

 此処に在り続けて此処で消えるというのならば今の自分は何故身を焼く炎から逃げている? その疑問に対する答えは浮かんでこない。ただ赤々と燃える中を緩慢に進むしかなかった。そしてその覚束ない歩みも行く手を塞ぐようにいっそう激しく燃え上がる業火によって止まる。

 ああ、やはり炎から逃れようとしたこの行いは無駄だったのか。痛む全身から力が抜けてどさりとその場に倒れ込んだと同時に虚しさが押し寄せてきた。

 自分が焼け死ぬことを知る者はいない。粒子となったデータだけがこの電脳世界にひっそりと還るのだろう。

 居場所も行き場もない空虚な亡霊のような自分に相応しい終わり方だ────



「プログラムアドバンス! ドリームソードッッッ!!」



 鋭利な一閃が紅炎を裂いた。跡形もなく消し飛んだ熱の向こう側、見知らぬナビが霞む視界に映る。突然の事態に処理りかいが追い付かないまま、限界を迎えた意識が深く沈んでいった。







「確かパソコンの中の倉庫用フォルダにリカバリーのチップデータたくさんあったはずなんだよね、使わないからって雑に放り込んでたやつ! 効果高いやつから優先してありったけ持ってきて!」
《モッテキテクダサーイ!》
《クダサーイ!》
「了解です! クイックマンも手伝って!」
……!」

 マスターの指示に従い指定されたデータをネットナビ修復用プログラムくんたちに渡す。連れてきたナビのダメージは相当に酷く、もう少し遅れていたら跡形もなく消え去っていたそうだ。

「はーやれやれ……これで一先ずは安心かな。修復と同時に解析もしとこ。えーっと………個体名が……フラッシュマン……電気属性で……。は? オペレーター情報NO DATEなし……ん? んんん?? えーマジかこれ……
「マスター? どうしました?」

 青いナビの名はフラッシュマンというらしい。しかし彼の容態が安定してきたにも関わらずキーボードをカチャカチャと叩くマスターはどこか困惑した顔をしている。

「確か秋原スクエアの近くで怪光現象が起きるって噂があって、それが亡霊ナビかもーってことで探しに行ったんだっけ?」
「はい。でも突然エリア中に炎が湧いてきて捜索どころじゃなくなってしまって
「炎から逃げる中で変な光が見えて、ドリームソードで邪魔な火柱をふっ飛ばしたらこのナビ……フラッシュマンが倒れてたと」

(そんでもってオペレーター情報皆無。更に言うとデータ形式はネクロよりもクイックマンにかなり近い……)

………。まあいいか。とりあえず峠は越したからお大事にってことで。後はプログラムくんに任せるからネクロとクイックマンはPETに戻って。じゃ、ヨロシクー」
《オマカセクダサーイ!》
《クダサーイ!》

 少しずつ傷が癒えていくフラッシュマンをプログラムくんたちに任せて私たちはマスターのパソコンの電脳からプラグアウトし慣れ親しんだ場所へ戻った。

 一つのPETに複数のネットナビが存在するというのは本来なら有り得ない事態なのだが、どうやら亡霊ナビは通常のナビよりも容量がかなり軽いようでマスター曰く「ネクロ+亡霊ナビ4体くらいまでなら問題ない」とのこと。私もクイックマンがやって来てからのPETの中を狭苦しいと感じたことは一度もない。

「クイックマン、今日は色々ありがとう。私一人だけだったらフラッシュマンのこときっと助けられなかったかもしれない
………

 全体的に災難な一日だったがクイックマンが一緒にいてくれて本当に良かった。それにしても科学省と電脳世界の火災はやはりWWWの仕業だったのだろうか。

「じゃ、二人ともおやすみー」
「おやすみなさい、マスター」

 寝支度を終えてベッドに潜り込んだマスターがPETの電源を切ったことで少しずつ暗くなっていく世界の中、横たわって目を閉じた。