「えー、心操くん。本日11月11日は大変お日柄が良く雲一つない爽やかな秋晴れに恵まれた次第で御座いまして、こんな素晴らしい日にこそですね、」
「無理に変な前振りしなくていいよ。ポッキーゲームしたいんでしょ?」
「えっ、なんで、」
「したくないの?」
「………ポッキーしたいです」
(手首にぶら下げてるビニール袋……箱が見え見えなんだよなあ)
──背中に隠せばよかったのに。
そんなことを考えながらも俺は彼女が持つ袋をやんわりと取り上げた。
スーパーやコンビニのお菓子の陳列コーナーでよく見かける赤い箱を開封し、その中の包装を破くとチョコレートの甘い匂いがふわりと広がる。彼女のことだからもっとこう…アーモンドがくっついてたり、くちどけが云々の少し贅沢なチョコを使ってて普通のよりも微妙にお高いやつを買ったのではと思ったけどこれは何の変哲もないありふれたポッキーだ。まあチョコが付いてるならなんでもいいんだけど。
「チョコの部分咥えていいかな」
「えっ、ちょこ……」
「そこまで呆然とした顔する?べつにこの一本食べたらハイおしまいってわけじゃないんだし、最初は譲ってほしいなあって。……だめ?」
「えっ、あっはい、うん、いい…よ…?」
俺は彼女のワガママに弱いが彼女も俺のワガママに弱い。茶色くコーティングされてある先端を口に含み、反対側のビスケットの部分をそっと彼女へ差し出した。血色の良い唇がそれをぱくりと咥えたのを視認したや否やハイペースで食べ進めていく。
驚いたように見開かれた瞳と視線がぶつかるが止まってやる気は全く無い。ああもう、そっち全然食べてないじゃん。
ふにゅ、と柔らかい感覚がしたのを合図に俺は溶けきったチョコまみれの甘ったるい舌を彼女の口に捩じ込んだ。
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