バラ肉
2024-11-12 00:20:48
3422文字
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ゆめのつづき(スグ総愛され前提のブロ→スグ)

スグに思いを馳せるブロ目線のお話。
全体的にスグ総愛されです。

ナツコさんの雑誌の付録ポスターとしてアイドル超人を起用→集合して撮影する、という設定の1シーンです。

夢を見なかったわけじゃない。

超人オリンピックでの優勝。
夢の超人タッグでのタイトル取得。
王家争奪戦での華々しい活躍。

正直、どれもこれも、喉から手が出そうなほど、欲しくて欲しくてたまらなかった。

世間に名を轟かせたブロッケンマンの息子として、ブロッケン一族の現頭領として。
徽章の重みと共に、輝かしい冠を頭に戴く。
それはあの男と出会った時から、自分にとって夢だった。

だって、力がなくちゃ、強者ばかりが集うあいつの側に立つことすら許されやしない。



***



麗らかな午後。


——で、それで準備は良いのかい? キン肉マン」
「おう!写真映えするために、昨日から何回も歯磨きしたからな! くらえ、マウスフラッシュ!なんつって〜」
「なんだそれはっ!」
キン肉マンを中心に、その周りを囲むアイドル超人たちが、本人のくだらない冗談にドッと笑い声を上げる。普段はクールな相貌を崩さない連中が、ものの見事に破顔し、「あれ?間違えちった?なはは〜」と調子に乗る男を我先にと小突く姿は、ガキの集まりのように楽しそうだ。
そんな年上連中のやりとりを、オレは少し距離を置いていたところで見ていた。

今日は、テリーの恋人であるナツコさんが担当している雑誌の付録として、アイドル超人のポスターを付ける……ということで、その為の撮影日である。
わざわざ一介の雑誌記者のために、地球が誇る正義超人達が集まる。それは各国にとってもかなりの大事である。普通であれば政府からの要請レベルの事態だろう。
しかし、相手が彼女なら話は別だ。
ナツコさんの優しさや正義超人に対する態度はいつも真摯で、いくら日本贔屓と言われようと断る者はいなかった。むしろ、一二もなく了承したことだろう。

何より、自分を含め、遠い国に住む連中にとって、日本に来るための口実はなんであっても喜ばしいのだ。

現に、その“理由“である“男“を囲む仲間達の顔や眼差しは、リングの上で見せるのとは正反対の緩いものになっていた。
さぞかし久々に触れ合えることが嬉しいのだろう。
あれやこれやと撮影の為の世話を焼いたり、他愛無い戯言に付き合う姿は、傍目から見ているとあまりにも甲斐甲斐しい。

本当なら、自分もその輪に入りたかった。

しかし、彼等の『敵は一人でも少ない方が良い』という無意識の圧力に思わず後ずさったが最後。「あ」と思った時には時遅く。取り巻きの中に入り込む余地は一瞬でなくなっていた。
結果、こうして遠巻きに見ることしか出来ず——今に至る。

にしても、輪から外れてどれくらい経っただろうか。
良い加減、手持ち無沙汰に欠伸を一つしていたところ。

「こら、ブロッケンJr.! そんな呑気に何しとるんじゃー!」
「ふぁっ!?」

いきなりの大声と共に自分を指さすキン肉マンに、驚きで顎が外れかける。慌てて口を塞げば、どういうつもりか相手はズンズンと近づいてきて。

「折角アイドル超人のポスターをナツコさんが撮ってくれると言うのに……なぁにぼんやりしておる! 全く、色男だからって黄昏れおって。……まっ、いくらブロッケンが女性人気が高いっぽくても、私には敵わんし? センターはこの私、キン肉マンで決まりだけどな!」
フンッと小鼻を膨らませて自信たっぷりに胸を張る姿は、相変わらず自分が大スターだと信じてやまないようだ。
キラキラ輝く青い瞳はこの青空と同じ天色で、オレはその視界に映るのが自分だけだと気付いたとき、思わずドキリと心臓が跳ねた。

てっきり、このまま自分を忘れ、他の面々と一緒に撮影会場に向かうものだとばかり思っていたのに。

チラリとその背後を覗けば、「やれやれ」と仲間たちが肩をすくめる姿が目に入った。どうやら彼の優しい気紛れだと思っているらしい。

「ほら、行くぞ!」
「っ!」

確かに、ぐいっと腕を引っ張る顔はまるで出来の悪い弟を世話するような、呆れと優越感を持ち合わせていた。
いつもはその立場が反対だからか。妙に嬉しそうな顔に、こちらとしては複雑な気持ちになる。
気にかけてくれた嬉しさと、「子供扱いするな!」という反発心が綯い交ぜになる。
それでも何かしら一言文句を言おうとしたところで「全くあいつらは」という声が聞こえ、声を発しかけた舌が止まる。
もう一度他の面々を見やれば、そこで漸く、彼らが揃ってこちらに注ぐ視線がやけに生温いことに気付いた。
きっと連中にとって、自分はいまだに青臭い若造で、決してこの男を奪い合う敵ではない……そんな高圧的な考えが透けて見えて、嫌になる。
思わず、不甲斐なさからギュッと下唇を噛んだ。

とはいえ、こちらとて黙って馬鹿にされるつもりはない。

「ッ……ふぅー」
気持ちを払拭するように息を吐いたのを合図に、オレは掴まれていた手を振り払うと、今度は逆に自分からキン肉マンの手を掴んでいた。

「なら、お前の隣はオレがもらうぞ!! いいな、キン肉マン!!」

「「「!?」」」

思いのほか大きな声となった宣言に、周りの空気がピシッと固まったのがわかった。
一体何を言っているんだ? 揃いも揃ってそんな脅しの目を向けてくる?しかし、大々的に言った手前、こちらとて自ら引き下がるつもりはない。そもそも覚悟なしに言った訳じゃない。

「えー、ブロッケンが横じゃと私のイケメン度がちょっと……
「ハッ! キン肉マン、そもそもお前が呼びに来たんだろ? 良いじゃねえか。ほら、行くぞ!」

渋るキン肉マンを尻目に、オレはブーツの踵をわざとらしく高鳴らした。
向かう先はもちろんナツコさんの待つ撮影会場だ。キン肉マンより先に行くわけには行かない、と佇む連中の前を横切る際、テリーとロビンから特に鋭い視線を受けても、知らぬふり。

オレにとって、まだまだ夢の自分に辿り着くための道のりは長い。
一人前の超人として、一人の男として、そして何より、この男と並び立つ存在として。まだまだ実力不足なのは否めない。
でも、だからってこのままで終わるつもりはないのだ。

「なあ、キン肉マン」
「ん? なんじゃ。ブロッケン」

名前を呼んで、それだけで通じ合える……そんな甘い関係になれるかどうか。ギャンブルと同じくらい危険なゲームだ。ましてやこの男のライバルなんてそれこそ出会った超人の数いるだろう。

けれど、夢は、諦めなければ。そこに向かって努力を惜しまなければ、いつか叶うもの。


「あのさ……全員で撮影したあと、二人だけの写真を撮ってもらわないか?」
「へ? い、いいが……なに、ブロッケンJr.ちゃん、そんなに私のことが大好きだったの?」

こそりと提案した内容にキョトンとする豚マスクが可愛いなんて、後戻りできない何よりもの証拠であろう。

………そうだぜ? オレはお前が好きだ。なんだ、知らなかったのか?」
「へっ!?」

気付かなかった罰の代わりに、パチンッと額を指で弾けば、本人ではない「おいッ!」という野太い声とドシンドシンという足音と怒声が飛んできた——が、構う気はなかった。

「ナツコさん、こっちの準備は大丈夫だぜ! 撮影頼んだ!」

「はーい。ブロッケンJr.さん、声かけありがとう! こっちの準備もバッチリよ! はいはい、センターはキンちゃんとして、隣はミートくんと……その反対隣はブロッケンJr.さんで良いのね? じゃあ、身長的に残りの人たちは後ろに回って〜」

会場に着くなり、間を置かずにナツコさんに指示を願えば、案の定素早く動く彼女に対し、不満を挙げるものが居るはずもなく。

……結局、お前さんが一番乗り気じゃのう?」
クックッと笑いながら見上げる青い眼差しに、オレは誤魔化すように鼻を擦った。

今はこんな形でしか立てなくても、いつか、いつか。
必ず、お前の隣に自分から立てるようになるから。


「ああ、だって『目標』は明確な方が良いだろ?」

後ろから突き刺さる殺意を無視して、オレはわざとにならないようギリギリのラインで相手に寄り添うのだった。


ラーメンマンが認めた男。
情けなくて、ドジで、なのに自信過剰なバカで。
なのに、泣きそうなくらい優しい男の、仮面の下で揺らぐ青い炎を知ったあの日から、ずっと——


オレは、君の隣に立つ夢をみてる。