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siso_leonids
2017-01-26 21:15:17
3348文字
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つれづれなるままに
八代実豊の交流SSを置いていくだけ。
【注意】八代視点の地の文ですべて京都弁にするとややこしくなるので地の文は方言抜いてます。
【1】
現代文の上尾先生は148㎝だ。
古典の八代先生は182㎝だ。
同じ国語科である二人は何かと会話することが多いのだが、それゆえに、ある悩みを抱えていた。
二人の身長差は34㎝、見上げる形と見下ろす形。
首が、とても痛い。
それは今日も例外ではない。
「
…
何してるんですか?」
首筋に手を当て唸る上尾先生と僕に春夏冬先生と利木先生が声をかける。
どうやら僕らの様子を見かねて声をかけたらしい。
「いや、授業の進行度の話をしていたんですけれど
…
」
「立って話しとったら首痛ぁなってしまいましてん
…
」
「何してるんですか?」
「34㎝差ですもんねぇ
…
」
話を聞いていた利木先生が呆れたように僕を見る傍らで、春夏冬先生はしみじみとそう言った。
「前も同じこと言ってたじゃないですか
…
」
資料を取りに来ていた廣山先生の言葉にぐうの音も出ない。
「八代先生が座って話せばマシなんじゃ
…
?」
「私もそう言ったんですけど
…
」
「女性を立たたせたまんましゃべるなんてあきまへん」
千葉先生の案はすでに上尾先生から出ていたが、僕の矜持が許さなかったので申し訳ないが辞退する。
「えぇ
…
」
「そこらへんは譲らないんですね、八代先生」
利木先生の言葉に力強く頷く。これは譲れないのだ。
「なるほど、それで改善されてないんですね」
廣山先生の言葉が突き刺さる。
結局上尾先生に痛い想いをさせていたら変わらないかもしれないというのはわかっていて、僕自身も悩んでいる。
「ちょっと不便かもしれませんが
距離を取れば顔の角度がきつくにならずに済むのでは
…
?」
「「「「「あっ」」」」」
春夏冬先生の案でとりあえず解決した。
【2】
「む
…
」
先日出した課題プリントのところに先生の字が達筆すぎて読めない、という感想が書いてあった。
ちょっとショックだなぁっと思って顔を上げると春夏冬先生以外の前方に居る先生方が驚いた顔をしている。
まだ何もしてないはずなので僕がびっくりした。
「えっ」
「だって、今、八代先生が目を開いて
…
」
廣山先生の言葉に僕は困惑する。しかし春夏冬先生だけが驚いてないのは納得がいった。前に一緒に休憩していた時に驚かれたことがあった。
「えぇ
…
僕ずっと目ぇ開いてますよって
…
」
その言葉に千葉先生、廣山先生、春夏冬先生、上尾先生がさらに驚く。
「えっ」
「えっ」
「えぇ!」
「わからん
…
」
「あ、いや、あの、ごめんなさい
…
」
突き刺さる言葉にしょげていく僕を見て慌てて先生方がフォローを入れてくれるが、否定しようがないことは自分が一番よくわかっている。
「気ぃ使わんでよろしよ、わかってます。若いころからこんなんでしたし」
「そうなんですか
…
」
「あ、でも恋人いはったときはよぉ目ぇ開いてはるなーて」
前方にいた先生方全員がこの時間一番の驚きの声だった。
「えっ!?」
「えっ!?」
「常に目が開く!?」
「恋人いたんですか!?」
「今の最後言わはったんがいっちゃんよぉ傷つきますわぁ
……
」
予想しない言葉が一番刺さる、僕はこの日、文字通り痛い程感じた。
【3】
職員室に入った僕の姿を見て驚いた様子の先生方がいる。僕は式典、行事以外はほぼ和装である。だから驚くのも無理はない、それはよくわかる。
「式典以外で八代先生がスーツなんて珍しいですね」
鯨井先生の言葉にふふっと笑みで返す。
「せやろー今日お客さんが授業見にきはったからちゃんとフォーマルしてみてん」
「あぁ、なるほどそれで
…
」
本日最後の授業を終えたので髪を解きながら自分の席につく。
上尾先生が淹れてきたお茶を置いてくれる。
「お疲れさまです」
「おおきに、ありがとございますー」
温かいお茶が疲れた体に染みわたる。ほへー、と力の抜けた声が出る。
「八代先生スーツ着て髪おろすと雰囲気変わりますよね
…
」
近くにいた折神先生が僕の姿を見てしみじみとつぶやく。
「らしいですね、僕よぉわからんのですけど」
たまたま休憩時間に髪を縛り直す時にその場にいた生徒たちにも言われたのだが、いまいち僕はよくわからない。
「生徒に言われたんですか」
「えぇ
…
ちなみに目ぇ開けるとレアリティ高いらしいですね」
気持ち目を開けてみると僕の言葉に折神先生と鯨井先生が納得したような表情でいるのが見える。
「あぁ、確かに珍しいですね」
「おれ初めて見たかもしれない」
「僕も故意でこうやったん始めてですわ」
【鯨井先生と!】
「鯨井先生と二人で休憩って新鮮ですね」
「あぁ
…
そうですね
…
」
ある日の昼下がり、職員室内の給湯室でコーヒーを淹れる。
鯨井先生の分を渡すと帰ってきたお礼に笑みを浮かべる。
今の時間は授業中で、学校は静かだ。
あまりに穏やかな時間なのでコーヒーを飲みながらぽつりと。
「平和やねぇ」
そうぼやいて一息ついた時、隣から予想外の言葉が返ってきた。
「昔は銃が飛び交う戦地の軍人をしていたんですよ
…
」
「えぇ?」
振り向いた僕の顔を見た鯨井先生は
一足遅れて同じくらい驚いた顔をした。
「八代先生の目が開いてる
…
」
デジャヴを感じながら僕はお決まりのセリフを返した。
「僕かて目ぇ開くんですよ?」
「そこまでびっくりさせたのかと
…
」
「それは、そやけど
…
僕と同じくらいでも確か僕の方が年齢上やのに、
えらい経験してはってんなぁって思うて
…
」
コーヒーの水面が揺れているのを見ながらそういうと
鯨井先生はくっと小さな笑みをかみ殺しながら一言。
「冗談ですよ」
その言葉にふふっと笑みを返した
「えぇ、わかってました」
【春夏冬先生と!】
「春夏冬せん
……
」
用があるところには机に突っ伏したまんま震える先生の姿。
「何をしてはりますのん?」
耳を真っ赤にして突っ伏している春夏冬先生はがばりと体を起こした。
その顔は耳に負けず劣らず赤くなっており、僕は首を傾げる。
「顔真っ赤になってはりますえ、お熱図らはります?」
「い、いえ、大丈夫です
…
」
体を起こした勢いがしゅーんとしぼんでいくのを見守りながら机を見ると
「
…
あらまぁ」
「あぁ!!いや、ちが
…
!!!」
原因が知れた。なるほど春夏冬先生はとても初心な方なのだ。
慌てる春夏冬先生を尻目に自分の机に戻り、
枕草子の参考書を買った本屋でもらった紺色の袋を持ってくる。
春夏冬先生が押収した本を袋に入れて渡すと、
すみません
…
と小さい声が返ってくる。
「ぼっしゅーしてからどないするかは考えもんやねぇ」
「そうですね
…
まさかこんな本だなんて」
「まぁ、とりあえずそれあげるしそのまま机の中にいれときなはれ」
はい、と小さくなる先生を見て、苦笑いをする。
「そういえば、八代先生、僕に何か御用があったのでは?」
「そうそう」
春夏冬先生の言葉に僕は用があったのを思い出しぽんと手を合わせる。
「今日、飲みにいきましょ?」
【双良さんと!】
「新聞部の取材?」
「はい!」
どうやら新聞部で先生の特集が組まれているらしく、
号替わりで一人ずつ先生が取り上げられ、取材をしているらしい。
そうか、双良さんは新聞部かとぽんやり思いながら軽い気持ちで承諾する。
「ええよ、どないなことききたいん?」
「出身地は京都なんですか?」
「うん、京都」
「その、失礼ながら、実際の
…
年齢は?」
「34歳やよ、見えんらしけど」
双良さんの質問に雑談を交えながら答えを重ねる。
簡単なプロフィールから授業の話やテストの話、といった色々な質問は新聞部内や校内の生徒から質問を募っているらしい。
「古典のテストで万能な必勝法は
…
?」
「古典は日本語やから現代文にしたとき意味通じはるかよう見てみ。
後古典より現代文ようしときなはれ、現代文出来ひんかったら古典は難しならはる」
「あはは、手厳しいですね
…
」
そう言いながら双良さんはメモを取り、よしと小さく息を吐いた。
「ありがとうございます」
「はい、お疲れさんどす」
ほっとしたように双良さんは丁寧な動作で頭を下げると、職員室を出ていった。
廊下でこけそうになる後姿を見送り、今回の取材がどうなるんだろうなーとぼんやりと思った。
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