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リース
2018-11-11 15:03:36
3480文字
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ドラゴンズドグマ
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初陣の日のお話
ゲーム内での覚者の初陣の話。流血表現あり
「お前もいよいよ初陣だなー。」
そう言ってしみじみと頷いているこの男は覚者である。幼い頃に両親を魔物に殺され、同じく殺されそうになっていた私を助けてくれた。がさつでぶっきらぼうだが、両親を失って絶望していた私を、ここまで育ててくれた恩人でもあり、家族だ。今日は覚者となってから初陣の日。私が覚者になったのは、ほとんどこのおっさんが決めたことだったけど、これでようやくおっさんの助けになれるのだと思った
今日の戦はおっさんも別の部隊として参加するらしい。私の活躍が見れないのは残念だと言っていたが、初陣で活躍できることなんてまずないだろうと冷静に返した。
「リース、せいぜい立派な覚者になれよ。これでもお前のこと誇りに思ってんだぞ」
いつもと違い、今日はやけに柄にもないことを言う。私が初陣だから鼓舞してくれていたのかと思った。
「おっさんもドジやって死なないようにね。」
私は冗談交じりに言う。おっさんは「はっ!言うようになったな」と言って頭を撫でてきた。もう子どもではないし、人前でやめてくれと照れながら手を払ったことを後悔した。
「各部隊、配置につけ!」
鬨の声があがる。私を含む覚者達は各々の武器を手に戦場へ赴く。待っていたと言わんばかりに高揚を感じる者、初めての戦に尻込みする者など様々だった。私はとにかく生き延びることを考えた。初めての戦なのだ。こんな一覚者にはじめから戦果など期待しないだろう。私はおっさんと同じように片手剣と盾を携えて後に続いた。
指示された場所へとリム転移した。これも白竜により竜力を与えられることによりできるらしい。これが白竜の力かとぼーっと考えながら転移先に着くのを待った。少しの間不思議な浮遊感に包まれた後、地に足がつく感覚がした。どうやら目的地に着いたようだ。
私は周囲を見回す。本来ならば同じ部隊の覚者達がいるはずなのだが、この場には私一人しかいない。場所を間違えてしまったのだろうかと思っていると、目の前に一体のオークが現れた。
突然のことに反応できない私に、血に濡れた剣を振り下ろしてくる。ほんの一瞬だけ、子どもの頃ゴブリンに殺されそうになった光景がフラッシュバックした。
目をそらさずにいると、突然オークが倒れたのだ。横からきた誰かの斬撃によって。
「
…
おっさん
…
?」
自分の目の前に一人の男が立っていて思わず声が出た。
男は片手剣と盾をもっていた。もしかしてまた助けてくれたのかと思ったが、そんなはずはなかった。
「新人覚者だな?」
オークを斬り捨てた男は私の前へ歩み寄る。おっさんとは違う金色の短髪が風に揺れていた。この人は
…
そうだ、レオ統率だ。何故ここにいるのだろう。
これは後から聞いた話だが、どうやら私だけが別の場所へ行ってしまい、そのことを聞いたレオ統率が追いかけてきてくれたそうだ。その後も統率の右腕であるイリスという女性も合流し、彼らと共にオーク達のいるグリッテン砦へと走った。
砦にはすでに人やオークの死体がいくつもうち捨てられていた。むせ返る程の血の匂いに混じってオーク達の強烈な匂いを感じ吐き気を覚える。次々と押し寄せるオーク相手に、レオ統率達は勇ましく戦っている。私達新人覚者は、今回に限り白竜の加護を得ていることにより戦闘能力が上がっているらしい。先程のような油断はしない。私は剣を抜いてオーク達にむかって駆け出した。
「ここで死ぬわけにはいかない
…
!!」
白竜の加護を信じて力の限り剣を振り下ろすと、魔物は断末魔をあげ倒れる。自分でも驚くほどに力が湧いていたのだ。肉を裂く感触が剣を通して手に伝わってきて、思わず顔をしかめる。こうしなければ自分が殺される。これが戦なのか、おっさんは何度もこんな経験をしてきたのかと感じながら私はただ剣を振るうことしかできなかった。
やがて最後のオークが倒れ、砦を奪い還すことに成功した。勝鬨があがり、生き残った覚者達は喜びを分かち合っていた。
すると身体が急激な疲労感に襲われた。今まで漲っていた力が抜けていくような感覚だった。レオ統率が歩み寄り声をかけてくる。
どうやら白竜の加護が初陣を終えたことで消えたらしい。これから先は自らの力で強くならなければならない。
「っはぁ
…
はぁ
……
ぁ、おっさんに、報告
…
」
加護があったとはいえ、よく自分でも戦ったと思う。倒した数は覚えていないが、レオ統率に声をかけてもらってるのだから、初陣にしては上々だったのだろう。
私は呼吸を整えておっさんの部隊と合流するのを待った。すると門の方から兵が走ってきた。伝令兵だろうか、レオ統率のもとへ近づきなにかを告げていた。
「
…
わかった。」
レオ統率の言葉に兵士は敬礼してから再び元の方向へ帰っていく。
「お前、リースと言ったか。伝えなくてはならないことがある。」
レオ統率は私に歩み寄り、手にしていた紙を広げてこう告げた。別部隊の隊長が、オークに襲われた部下をかばって戦死したのだと。それを何故私に言ってきたのかが理解できなかったが、レオ統率は続けた。
「別部隊の隊長は、お前を保護していた男だ。
…
これだけは先に伝えておかねばならないと思ってな
……
」
少しして、ようやく理解した。おっさんが、死んだのだと。頭を思いっきり殴られたような感覚に襲われ、前が見えなくなった。
紙を持つレオ統率の声は震えているように聞こえた。だがその時の私にはとてもそんなことを気にしている余裕などなかった。息をするのを忘れるほどに、なにも考えられなかった。
「
…
!?おい!大丈夫か!?」
レオ統率の声が遠くなる。視界かぐらりと歪んで私は地面に倒れこみ、そのまま意識を失ってしまったのだ。
それから私はレーゼに運ばれた。意識を取り戻してからおっさんのことをレオ統率に聞いた。せめて遺体だけでも会わせてほしいと思ったのだ。だがそれは叶わなかった。あの場は魔物の放った炎に焼かれ、遺品すらも回収できなかったのだと。もともと遺品になるようなものすら身につけていなかった男だったが、まさか本当になにも残らないとは思いもしなかった。
「
…
おっさん
…
私、これからどうすればいい。」
乾いた笑いが口から漏れ、どうしようもなくて空を見上げた。澄んだ空が目の前に広がり、やがて視界がぐにゃりと歪んだ。
正直、白竜を守るだとかはどうでもよかった。ただ、あの人の役に立てるのならそれだけでよかった。覚者となった私は、この永遠とも言える時間の中、あなたのいない世界で、なんのために戦えばいいのだろう。
*
「
…
おっさん
…
?」
視界には白い靄のようなものがかかっていてよく見えない。これはいつの記憶だろうか。表情こそ見えないが、おっさんが自分の横になるベッドに腰掛けている。そうだ、これはまだ自分がおっさんのところに世話になりはじめたばかりの頃だ。怖くて寝つけなかった自分に、なんやかんやいいながらも眠るまでそばにいてくれたことを覚えている。
「大丈夫だ、安心しておやすみ」
と言われた気がした。
「
……
ああ
……
おっさんも、ゆっくり休んで
………
。」
やがてゆっくりと消えていくその姿にむかって、無意識にそう呟いていた
*
「
…
っ
…
!!?」
身体が落ちたような感覚で目が覚めた。ゆっくりと身体を起こすと、周りには馴染みのない壁や天井が広がる。そうだ、ここは宿舎の中だ。俺は今回、ほかの覚者達と共に一週間ほどの長期に渡る作戦に参加したのだった。その間は用意された宿舎で寝泊まりする必要があるのだが、馴染みのない場所と、他の覚者達と泊まることに慣れていないせいなのか、久々に長い夢を見ていたようだ。自分がまだ女覚者だった頃の初陣の記憶。
ふとなにかが顔を伝っている気がして顔に触れる。水滴が手についていた。泣きながら寝てるなんていつぶりだろう。思わずため息が漏れた。こんなところを他の覚者に見られていないか心配になったが、どうやら他の者は皆熟睡しているようで安心する。
「
……
あれ、誰か起きてるのか?」
この部屋はベッドが全部埋まっていたはずだが、1つだけ空のベッドを見つけた。布団が足元に寄っているのが見える。時刻はおそらくまだ夜中だ。こんな時間に起きているなんて、と扉の方を見やるが、帰ってくる気配もない。窓の隙間から入ってくる風が濡れた頰を冷やした。
「
…
はぁ、寝よう。明日は多分もっと
…
疲れる。」
流石にもう一度同じ夢を見ることもないだろう。俺は再び布団に包まった。
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