リース
2018-11-11 14:59:41
2072文字
Public ドラゴンズドグマ
 

覚者のお話②

男覚者が過去を語る。

ここは覚者の自室。昼下がりの午後、俺がくつろぎながらメインポーンのオルグと談笑していると、彼は俺の子供の頃が知りたいと言ってきた。
そういえば話していなかったなと思い、ぽつりぽつりと話し始めた。その間オルグは黙って俺の話に耳を傾けていた。

てなことがあったわけだよ」

話を一区切りつけると、俺はオルグが淹れてくれたコーヒーを口に運ぶ。独特の香りと苦みが口の中に広がる。
やはり少し苦くないか。

「そうだったのね。
マスターはご自分のことをあまり話してくださらなかったからごめんなさい、聞かない方がよかったかしら」

踏み込んだことを聞いてしまったのではないかと、オルグは申し訳なさそうに見つめてきた。

「ああ、もういいんだ。子どもの頃のことだし
俺みたいな境遇の子どもなんて珍しくないだろう。

むしろ俺は運がいい方だったんだ。保護してもらってここまで育ててもらったんだからな。」

俺はコーヒーにミルクと砂糖を追加投入しながらオルグに笑いかけると、オルグは少し安堵した表情を見せる

「大変な経験をしてきたのね、マスター。」

「でもつらいことばかりじゃなかったぞ。
確かにおっさんと暮らすようになってからは大変な時もあったけど」



保護してくれた男覚者のもとで一緒に暮らすことになってからは、毎日があっという間に過ぎていった。
俺は世話になるばかりでは心苦しいと思い、何か返せるものがないか男に尋ねた。

「そしたらなんて言ったと思う。
"何もいらないから剣の稽古をつけさせろ"って言ったんだぞ?」

「あら、どうしてそうなったのかしら?」

オルグも疑問に思ったらしい。当時の自分も、何故そういう流れになったのかが理解できず、男にそう聞き返していた。


『俺が拾った命だからな、そう簡単に死なれちゃ困る。自分の身は自分で守れるようになれ』

と、男はすぐに返事をしてきた、なんともまぁ強引な理由だが、そのおかげで今の自分がいるのだと思うと、これでよかったのだろう

「普通はさ、戦いとは無縁の生活をしろとか言ってもいいだろ?
でもまぁおかげで余計なこと考えることもないくらい忙しなかったな」

それからは毎日男と剣の稽古をした。自分で言うのもなんだが、まだ幼気な少女だった自分は剣を持ちあげることすら困難だった。普段はぶっきらぼうだが優しかった男も、稽古となるとまるで違う気迫で臨んでいた。厳しい稽古が続き、よく怪我をしてはその度にやめてしまいたいと思った

それでも続けてきたのは、なによりこの男に対する感謝の気持ちがあり、同時に自分から家族を奪った魔物どもに対する心の奥の復讐心が原動力となっていた。

「でも剣の先生がいたなんて初耳だわ。
今その方はどうされてるの?」


それを聞いた俺の動きが一瞬止まったのをオルグは見逃さなかった。

死んだよ。俺の初陣だった日に。」

カップをソーサーに置く音が静かな部屋に響いた。
オルグはまた余計なことを聞いてしまったと言葉に詰まっていた。

「あ別に今は大丈夫だから!
俺こそなんかごめんな。」

オルグよりも逆に自分の方があたふたしていた。
俺は話を続ける。


自分の恩人である男は、"お前は筋がいいから絶対に覚者になれ"と言ってきた。しかもまた唐突に。正直白竜については何も思うことはなかったのだが、これで少しでも恩が返せるならと流されるまま覚者になっていた。



そして迎えた初陣の日。白竜によって加護を与えられ、レオ統率のもとオーク達と戦った。


無事に生き延びることができ、戦果を自慢しにいこうとした矢先に戦死者の報告を受けた。その中に自分の恩人の名前を聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。

オークに襲われそうになった部下を庇ったらしい。最期の瞬間まで、人のために戦った人だった。自分にも多くの大切なものを与えてくれた。なのに何も返せぬまま、また大事な人を喪ってしまった。

白竜のため人々のためとは言うけれど、本当に自分が守りたかったものを喪い、これからどうすればいいのかわからなくなっていた。

それでも、救われたこの命で少しでも長く生き残ることが、彼へのせめてもの手向けになると信じて今日まで戦ってきたのだ。

「おかげでお前達や大切な仲間とも出会えたし。」

「マスター

話を黙って聞いていたオルグは立ち上がって俺の前に歩み出た。すると正面から座っている俺の身体を包み込むように抱きしめた



「大丈夫よマスター。私は、私達はずっとお傍にいるわ」

こういう時、巨乳の女ポーンがいいなって思うよなぁ」

マスター、最近本当に中身まで男性っぽくなってないかしら」

男の胸板に顔を押し付けている体勢になりながらそう呟いた俺に、オルグは苦笑する。

しかしポーンはどこでこういうことを覚えてくるのだろうか。だが不思議と心地よいこの感覚にいつのまにか目を閉じて微睡んでいた。