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supli12
2024-11-10 19:24:32
3350文字
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「お門違いじゃないかい?」
「あんたが挑発すっからだろ」
世間を騒がせている爆破テロの犯人は科学的知識が豊富なようで、爆弾の起爆装置は精巧かつ専門的だった。ゼノはFBIから装置の解明を依頼され、詳細を簡潔に提出した。ついでに標的の選別に規則性がある事を確認し次の標的を割り出して渡した事で次の爆破を防ぐ事が出来たのは警察とFBIの快挙である。それをマスコミが報道し、爆破犯は復讐を決めた。FBIと、解明した科学者に。
FBIは兎も角科学者はとんだ飛び火だと憤慨していたが、インタビューに「稚拙で安定性のない装置だね。僕だったら別の方法を採る」と答えたのが原因の殆どを占めるであろうというのが大方の味方だ。なので解明を依頼した側であるスタンリーの良心も傷まない。
名指しで標的として指定され護衛が必要と看做された科学者に指名された辺りでスタンリーは敬語の使用を取り止めた。
「大体何で俺なんだ。圧力かけてきやがって」
「君が断るからだよ」
大学の研究室の支援者である議員からの電話で上司は態度を変えた。にっこり笑ってスタンリーを見る科学者の名をゼノ・ヒューストン・ウィングフィールドという。
「君の射撃能力を高く評価してるんだ。FBIの前は軍にいたそうだね、素晴らしい技術だ。その技術を是非僕の実験に使って欲しい。先日見せたレーザーガン、魅了されただろう?反動を抑えて小型化が完成すれば合衆国宇宙軍に採用されるだろう!」
「腕目当てに圧力かけてんじゃねえよ。大体狙われてる自覚を持て。車にも大学にも爆弾仕掛けられてたじゃねえか」
「でも見当を付けて報告して全部回収したから問題ないじゃないか。いや、君の真摯な職務遂行の姿勢にも敬意を持っているよ、そんな身体目当てなんて人聞きの悪い」
スタンリーは口数が多いほうではない。要人警護に当たったのも初めてではないが、警護の対象と軽口を叩くことなど無かったのに。
あの日、爆破装置の解明後、ゼノは捜査本部へやってきた。
「次の標的が分かったよ」
若い科学者がそれなりに高名でなかったら摘み出されていただろう。現場の捜査官たちに鼻で笑われながら説明した内容を理解できた面々は数秒黙り込み、一斉に動きだした。時間が無かったからだ。
州を跨いだ大きな街の外れの時計塔に爆破装置は仕掛けられていた。四隅の一画、そこを爆破されたら塔は崩れ落ちると計算された場所だった。画像を拡大された爆破装置を見てゼノは言った。
「今までの爆破装置と同じ造りだ。爆破装置の指定の箇所を打ち抜けばカウントが止まる。だがその箇所を打ち抜くには同じ高度からの射撃が必要だが、ヘリで近付きすぎると犯人が次の爆弾を爆破させるだろう。そちらは今からSWATが出動だろう?被害が出る。同じ高度のビルからだと数キロある上に今からそこに行くには時間がない。犯人は報道されるのがお好きだ。報道ヘリならある程度近付けるだろう」
ゼノは振り向いて口を開いた。
「さて、安定しない報道ヘリから爆弾を打ち抜ける人材はいるかな?」
一瞬の沈黙の後に高い声が聞こえた。
「隊長、俺がヘリを操縦します。ホバリングなら得意です!」
「OK、シャーロット。ブロディ、報道ヘリの手配を。一番早く捕まるのでいい。本部長、スナイパーライフルを使うから武器庫の鍵を」
SWATの隊員と捜査官が走り出す。
「君、名前は?」
「スタンリー・スナイダー。失敗はしないが万一のことがある。このままここに詰めていてくれ」
「了解したよ。コーヒーは貰えるかな?」
「隣の部屋にサーバーがあるからセルフでどうぞ?ドクター」
出会いは悪くなかった、スタンリーはできる人間を認めるタイプだからだ。だが人間性に許容範囲はある。
その後2か所の爆発物を撤去された犯人の怒りは凄まじく、ミネソタの小山の形が変わる程の爆発を披露され、連日マスコミに報道され議員達に苦言を呈されて対応に駆けずり回った面々はぐったり椅子に座りこんでいた。
それを見てゼノが言った言葉を持ってして、チームの共通認識としてゼノの呼び名は「性悪ドクター」となったのだがスタンリーに異論はない。
「やはり爆破技術と調査能力を披露してきたね。これで犯人の傾向も分かり、君たちの得意なプロファイリングも捗るだろう。岩山も爆破する技術と被害者を出さない日時、最も適した場所を選んできた」
「
……
ちょっと待て。あんた爆破があるって分かってたのか⁈」
若い捜査官が聞き返す。
「予想位だよ。相手の爆破装置と標的の選別は規則性があった。だが性格までは分からない。僕はプロファイラーじゃないからね。でも僕が爆破テロをするような犯人だったら、装置を破壊されて爆破を披露できなかったら敢えて被害者を出さない個人的な大爆破を見せて自分の技術を見せつけると思って。でも今回の爆破で性格の見当がつくじゃないか」
にこりと笑ったゼノが余りにも自然体で、そこにいる全員が言葉を失った。笑う科学者の後ろに見える文字は全員一致だったろう。
そう、マッドサイエンティストと。
上層部もそう思ったのだろう、慇懃無礼にご退場を願い平和が戻ったかに見えた。
そんな時に爆破犯は標的の追加をマスコミ宛てに送ってきたのだ。
組織であるFBIは兎も角、高名ではあるが一般人であるゼノの名にマスコミは騒ぎ立てた。すぐに報道規制を敷き一旦は収まったが、狙われているのは変わらない。
FBIは保護プログラムを適用しようとしたが、当の本人がそれを断った。やるべき研究が滞るから、との返答にその場にいた全員が辟易したが仕方ないと護衛を付けることを打診した。
「では、スタンリー・スナイダーを。彼以外なら要らない」
スタンリーは抗議した。だが、今現在も狙われているであろう事、ゼノに被害が及んだらFBIの面目が潰れる事もあり、上層部からの有無を言わさぬ辞令によりスタンリーはゼノの研究室を訪れた。
「ようこそ、僕のマークスマン(射撃の名手)!さあさあどうぞ、奥の研究室へ!試射の前に銃の取り扱いを説明しよう!」
「
………
清々しい位の腕目当てだな」
そんな理由で、現在のスタンリーの配置先はこのマッドサイエンティストの要人警護なのだった。
交代要員がいない24時間警護なので夜もゼノの家に行く。泊まり込みになって初日はリビングの片隅で休んだが、翌日ゼノが客間を案内してきた。夜の交代要員が居ないのはスタンリーだけをと指名した自分のせいだと思い至り、少しは悪いと思ったらしい。最も日中ゼノが安全が確認された研究所にいるうちに仮眠は取っている。その旨を伝え、警護には侵入経路である一階にいた方が都合がいい、またはゼノの部屋の前だ。そう答えると翌日には日本式の布団を買ってきた。
「
……
これで少しは休息が取れるかな?」
尊大なくせに窺うように見つめられて思いがけない気遣いに思わず笑ってしまう。
「ありがとよ」
言うと驚いた顔をした。あどけないような表情に急速に印象が変わっていくのを自覚する。マッドではあるが案外良い奴かもしれない。
しつこく言われて手に取った小型化されたレーザーガンはしっくりきた。
精度と威力は説明されていた。実験場で試射の正確さにゼノは飛び上がって喜んだ。
次は野外での試射だ!と息巻いている。狙われてるのに野外に行く訳がない、ピクニックだって禁止だと答えると分かりやすくしょげていた。
君が好きなブリトーとコーヒーを持って行こうと思ったのに、と本当にピクニック気分だったことが分かり、科学者にとって武器の試射もピクニックも大差ないのかと遠くを見る。
でもピクニックは悪くないと、思った自分を不思議に思いながら。
それからの紆余曲折を経て、彼と付き合うことになった時、チームの隊員も捜査官も絶句した。
皆の顔に「あの性悪ドクターと
…
?」「あのマットサイエンティストと
…
?」という台詞が重なって見えるのをスルーしながらスタンリーは笑った。
美しく有能なSWATの隊長は、恋人の良いところを共有したくないタイプだったので。
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