はくう
2024-11-10 18:46:35
2812文字
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mhyk元相棒パロの极と刺

魔法使いの約束第1部 第20章 3話の元相棒パロです。CPなしのつもり
「てめえは右で俺は左」のところです。
詳しく設定を説明してないのでまほやく知らない人にはなんのこっちゃかもしれません。雰囲気で読んでください

「うわ、この館、話に聞いてたよりもずっと酷いね。どこも老朽化して崩れかかってる。ブラザー、あと一歩右にズレて。天井が崩れかかってる」
「わかった」
 エリジウムの助言通りソーンズが右に移動すると、先ほどまでソーンズが立っていた場所に瓦礫が降ってくる。間一髪で危機を免れた男はそれを一瞥しただけで、忠告した優秀な友人に感謝の言葉もないまま館の奥へ進んでいく。エリジウムはため息を吐きながら厄介な友人の背中を追いかける。
「ちょっと、ブラザー? 気乗りしないのに君の無茶に付き合って、忠告までした僕に何か言うことないわけ?」
「頼りにしている」
「どうも。建物もボロボロだし、君の探し物が見つかるよりも先に僕たちがぺちゃんこになっちゃうよ。戻った方が賢明だと思うんだけど、どう?」
「お前のナビゲートを信頼している」
「信頼してるなら忠告も聞けよ」
 ソーンズを小突くと不服そうに睨んでくる。そんな顔をしたいのは、エリジウムの方だ。
 街外れの館に、最近奇妙な気配があると噂になっている。そこは管理人がいなくなってから随分経つため廃墟のようになっている。悪党の根城になっているのではないかと地元の警備団がパトロールをしたが、ボロボロの室内は人が住める状況ではなく、生き物の気配はしなかったという。しかし、どこからか羽獣の鳴き声が聞こえるらしい。
 エリジウムが耳にした噂をソーンズに話したのは、他愛無い雑談だった。この手の噂話に興味のないソーンズは珍しくエリジウムの話を熱心に聞いたあとに「昔、その館に物を預けたままだった。取りに行くから着いてこい」と宣った。もちろんエリジウムは断ったが、無駄に行動力のあるソーンズが一人で館に行くことは想像に難くない。このトラブルメーカーのウニが一人で何かやらかさないかを監視するために、結局エリジウムも同行するはめになった。
「君の馬鹿げた提案に付き合うのはこれで最後だからね」
「わかったわかった」
「本当かな……
 呆れながら館の探索をしていると、エリジウムの目の端に何かの影が映る。ソーンズもそれに気づいたらしく、二人は同時に臨戦体制に入った。
「気をつけて。何かいる」
「ああ。……下だ!」
「うわ、何これ!?」
 ソーンズが床に向かって剣を振おうとして、途中で動きを止める。床に映る影を渡り歩くように、巨大な羽獣の影が移動している。実体を持たない影に攻撃したところで、床が壊れるだけだ。不気味な鳴き声をあげながら、羽獣の影は素早く壁へと移動していく。
「実体がないままだと攻撃しようがないな。出てこい、*イベリアスラング*野郎。鳴き声を上げることしか出来ない能無しのお前だが、出てきたら俺の試薬の実験台にしてやる」
 ソーンズの挑発を理解したのか、羽獣の影はこちらを睨むように動きを止め、ゆっくりと壁から這い出してきた。まず初めに出てきた巨大な嘴に、ソーンズの目がわずかに開かれる。
……馬鹿でかい」
「はは、よかったじゃない。君の相手をしてくれるってよ」
 エリジウムの口から乾いた笑いが出る。かなりまずい状況だ。エリジウムの背中を冷たい汗が伝った。
「まずいな。このままあれが出てきたら館が壊れるよ。ブラザー、策はあるんだよね?」
…………逃げろ!」
「は!?」
 ソーンズは叫ぶなり、巨大な羽獣に背を向けて駆け出した。一拍遅れてエリジウムもそれに続く。エリジウム自慢の長い脚のおかげで、すぐにソーンズに追いついた。
「ソーンズ、君はまた後先考えずに行動して! 君の誘いにはもう二度と乗らないからね! 逃げるって言ったってこの方向出口と逆なんだけど、まさかとは思うけど、君の目指してる出口って」
「あの窓から飛び出すぞ。お前は右で俺は左。いくぞ。……せーの!」
 館からの脱出方法にエリジウムが文句を言う暇もなく、目の前に窓が近づく。ソーンズの掛け声に合わせて、窓を蹴るようにして飛び出す。男性二人分の勢いに、窓が砕け散る。着地した二人は、取り決め通りにソーンズが左、エリジウムが右に分かれて館から距離を取る。館を壊しながら、巨大な羽獣が実体を持って飛び出してくる。羽獣はソーンズを追って左に飛んでいった。
「くそ、こっちに来るな。お前の同類はあっちだろう」
「やった、右で当たりだ! 僕はこれからずっと右を選ぶ!」
「おい、馬鹿なこと言ってないで、支援しろ」
「もちろんいいよ。君がその馬鹿でかい羽獣を仕留めたら羽獣肉パーティーを開いてあげる。会場の準備もシェフのスカウトも僕に任せて」
「こんな時にふざけるな」
 珍しく焦った様子のソーンズに、エリジウムは笑い声をあげる。人の不幸を笑う趣味はないけど、馬鹿なことをして痛い目にあっているソーンズを見るのは面白い。立場が逆なら、ソーンズも追いかけられるエリジウムを見て笑っただろう。そういう仲なのだ。互いに軽視しているわけではなく、むしろ信頼しているからこんなやり取りをしている……と、エリジウムは思っている。
「自業自得だろ。これで少しは懲りた?」
 そう言いながら、エリジウムは羽獣に減速のアーツを放つ。ソーンズはエリジウムの言葉には答えず、羽獣を切りつける。羽獣は耳をつんざくような鳴き声をあげて、飛び去っていく。
「チッ、仕留め損なったが、逃げたな。ざまあみろ」
……
……
……ねえ、羽獣が飛び去ったのって、街の方角じゃない?」
 エリジウムは方向感覚に優れている。確認しなくてもわかっていたが、それを受け入れたくなかった。ソーンズも同じようで、バツが悪そうに目を逸らしている。
…………そうだな」
「あんなものが街で暴れたら大惨事になる! 早く止めないと」
「なんだ、着いてくるのか。俺の誘いにはもう二度と乗らないんじゃなかったのか」
「それとこれは話が別でしょ。それとも、僕の支援じゃ不満?」
「まさか。頼りにしている。ブラザー」
 これは完全におちょくっている。にやにやしながら、エリジウムがソーンズにしか使わない呼び名を使うソーンズの背中を強めに叩く。ソーンズ計算通りに乗せられている気がして、少し面白くない。
 本当に不味いのは、エリジウムがソーンズの馬鹿みたいな思いつきを、楽しんでいることだ。厄介ごとに巻き込まれることを知りながら、それさえスリルとして楽しんでいる。きっとこの先何度痛い目にあっても、エリジウムの近くにソーンズがいる限り、ソーンズの提案に乗ってしまうだろう。本当に、面倒な友人を作ってしまった。
 エリジウムは首を横に振って気分を切り替えた。街に被害が出る前に、あの馬鹿でかい羽獣を仕留めないといけない。心配はしていない。先ほどは仕留め損なったが、エリジウムの支援とソーンズの殲滅力が合わされば、大抵のものは敵ではない。エリジウムはソーンズを信頼している。