夜食のオムライスを作るために何気なく卵を割っていると、カウンターの向こうからこちらを眺めていたロナルドくんが何故か私の手元にジッと視線を注いだまま「すげえ…」呟いた。なんか知らんがこちらを見たまま目を輝かせている。おや何だやっとこの私の素晴らしさに気付いたのか、と彼からの珍しい畏怖の念に僅かに満足感を覚えたが、別に私のやったことといえば普段と何ら変わらない。はて一体今の何がそんなに君の琴線に触れたのかと聞くと、ロナルドくんは先程私に向かって「すごい」と言ったことに自分で気付いていなかったのか、ややバツが悪そうに「……卵片手で割れるのすごいなと思って」と白状した。
…………なるほどね。
君の握力じゃ卵なんて片手じゃ握り潰しそうだもんなそりゃ無理だろうな、なんなら両手で割っても握り潰しそうだ。珍しくストレートな彼からの褒め言葉(?)に私も少々バツが悪く、誤魔化すようにそう言うとすぐさま拳が飛んできた。その風圧でいつもの通り砂になる、ここ数ヶ月ですっかり慣れてしまったテンポ感。しかしまあ何かにつけてよく手の出る5歳児だ。私は溜息を吐きつつ体を元に戻し、卵をもう一つ手に取った。ロナルドくんは拗ねてしまったのかさっきより少しカウンターから離れて、でもやっぱり興味はあるのか視線はちらちらと私の手元に注がれていた。ジョンがうちに来たばかりの頃にもこういうことがあったなと思い出す。最もジョンはもっと素直だったが。共に生活し始めてはや数カ月、未だ懐き切らないが、けれども視線だけはやたらに素直だった。
その後出来上がったオムライスは、私としたことがうっかり卵を割りすぎてなんと5つ分も使ったため少しばかりチキンライスとのバランスが悪かった。
…けして珍しく彼から素直に褒められてちょっと嬉しかったとかではない。断じて。
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