三毛田
2024-11-10 15:04:58
1078文字
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07 007. どうせ嘘なら

7日目 よかったのに

 唇からこぼれ落ちた言葉が、嘘ならばよかったのに。
 なんて思っても、どうしようもない。
 雨の中、傘も差さずに佇む姿は美しく見えたものの、そのままにしては駄目だと雨宿り。
「丹恒、ほら」
「濡れている」
「拭かないよりはマシ」
「そうだな」
 一度ざっくり拭いて、タオルを絞ってからまた丁寧に拭いていく。
「ご、ごめん。目尻の赤取れちゃった」
「構わない。どうせ風呂に入れば落とす。タイミングが早いか遅いかの違いだ」
 左目の目尻に描かれている赤いラインが、そっと拭いたら消えてしまった。
 焦ったが、丹恒本人は気にしている様子はないので、ほっとする。
「丹恒」
「どうした」
 雨だから、周囲には誰もいない。
 答えるまでの沈黙が、耳鳴りを引き起こしている錯覚。
「さっきのは、本気?」
「どれのことだ」
 まさかの本人無自覚。
 自分が呟いた言葉すら忘れている。
 〝このまま雨に溶けてしまえば、楽になれたのだろうか〟
 そんな言葉。
「俺は、まだまだ丹恒と一緒に旅をしたい。だから、勝手にどこかに行ったりするなよ」
 冷えた指先を掴む。一瞬こわぼるように震えた気がした。
「俺も、まだまだ知らない土地に行って、知識を埋めたいと考えている。だから、どこかに行くつもりはない」
「本当か?」
「ああ。それに、俺は雇われた列車の護衛だ。不要だと言われるまでは、去る予定はない。それに」
「それに?」
「お前も三月も、目を離したらとんでもないことをしでかすからな。監視をしていないと、姫子さんやヴェルトさんだけじゃなく、パムにも迷惑がかかる」
「何それ~!」
 なのが聞いたら、同じことを叫ぶだろう。
 むっと頬を膨らませると、何がおかしかったのか丹恒はふっと笑みを浮かべ。
 多分だけど、いつもの彼に戻ったとは思われる。
「穹、雨が止んだ」
「え? 本当だ!」
 声につられてそちらを見ると、曇り空から日差しが。
「雨の後の晴れ間は、綺麗だな」
「そ、そうだな」
 濡れた前髪を軽く払い、空を見上げる姿の方が美しい。
 思わず見惚れていると、俺の視線に気づいてこちらへ向いて。
「穹?」
 笑みの残る目元のまま。
 胸がきゅっと締め付けられると同時に、苦しくて。でも、ドキドキが止まらない。
「丹恒、どうしよう。ドキドキが止まらない」
「心不全か?」
「そ、そういうのじゃないと思うんだけど……
「そうか。それなら安心だ」
 ほっと息を吐き、
「胸に触れていいか」
「ど、どうぞ」
 左手が、そっと胸に触れてきて。
「確かに、やけに鼓動が早いな」