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108utata
2024-01-28 20:58:43
1723文字
Public
供養
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噂
中敦+太敦
2年前に製作したもの。未完。供養
”あの太宰が今或る少年に御執心らしい。”
或る日中也はそんな可笑しな話をどこかで耳にした。
…
あの太宰が?
こんなことで脳内を占領されるのは可成癪に来るが、それにしても何とも不可解な噂だと思った。どんな理由で流布されているのかは一先ずと置いておくとして、それが若し真実なのだとしたら、あんな太宰を虜にしてしまった少年は一体如何いう人間なのだろうと少しだけ気になるのだった。
そんなことを不意に思い出した。
一寸用事があった為に、今中也はぶらりと町へ繰り出していた。そういえばこの辺りは武装探偵社が近くにあったっけな、と思うと同時に、そんな噂が脳内に再浮上してきていたのだった。あれきり同様の噂を聞くことはないけれども
――
抑々此方から願い下げだが
――
あまりにも印象が強くて忘れることが出来なかった。別に太宰が執着していることに関しては割と如何でもいいのだが、問題は相手の少年だ。好意を向けられたとてあんな奴を受け入れようと思えるのだろうか。相も変わらず太宰が迷惑をかけていそうな話である。
「
…
」
後ろに何か違和感を覚えた。
…
誰かの視線のようだ。敵意は微塵も感じないがそれにしてもずっと此方を見ているようである。
「おい」
「ひゃっい!、御免なさい
…
態とじゃなくて、あの
…
」
中也がくるりと振り返りながら呼び掛けると、後ろで少年があたふたした様子で飛び上がった。この様子だと此奴が先程の視線の主なのだろう。
「俺に何の用だ? さっきからずっと見てただろ」
「あの
…
貴方はポートマフィアの人、ですよね
…
」
戦々恐々とした様子で目の前の少年はそう尋ねた。
「ああそうだが」
慥か、此奴は探偵社の社員だったか、と中也は記憶を辿って思い返す。名前までは知らないが一寸した有名人だったな、と思った。全身をぱっと見ると、白髪であったりベルトが不自然に長かったりと、一度見ただけでも思えられるほどに特徴的な見た目をしていた。そんな少年が何故こうやって見ていたのだろうか。
「
…
別に襲いに来た訳じゃねえよ。此処に来たのは別の用だからな」
「
…
!そんな事じゃないんですけど
…
えっと
…
」
その様子だと如何やら図星のようだ。誤魔化そうと慌てているが何処からどう見ても誰が見てもバレバレだった。
「
…
そんなに怖がらなくてもな」
彼のあまりの必死さに、中也は思わず噴き出した。少年はその表情を見て少し困惑顔を見せて、そして少し顔を赧らめた。
「
…
あの、すみませんでした」
「怒ってねえよ」
中也がそう云うと、少年は少し安堵した様子を見せた。
「
…
太宰さんに、若し小さくて帽子を被っている奴がゐたら危ないって、聞いたことがあったので
…
」
「は?
……
否、手前は悪くねえ、誰がそう云ったって?」
「
…
だ、太宰さんが
………
あの、もしかして太宰さんとお知り合いなんですか」
「誰があんな奴と
…
!」
忌々し気に吐き捨てた。少年はその言葉におろおろとしながら、中也を見た。
「済まねえ。一寸色々あってな」
「
…
はい」
中也が軽く溜息を吐くと、目の前の少年の表情から、少し怯えが消えて、代わりに苦笑いが混じった。
「
…
太宰さんはそういう所あって困りますよね」
「やっぱり解るか
…
」
「はい、毎日振り回されっぱなしです」
それから暫くその話で二人は盛り上がった。
少年の緊張も大分和らいだようで、話の途中で時折笑みを浮かべることもあった。ころころと表情が変わる様が中也には面白く思えた。
「嗚呼そういえば、手前の名前を訊いてもいいか。厭だったら云わなくてもいいけどな」
「大丈夫です。僕は中島敦です。貴方は
…
」
「中原中也だ」
「中也さん、ですね」
少年
――
敦はにこやかな笑みを浮かべて中也の名前を繰り返した。少しドキリとする。
そこで中也は再びあの噂を思いだした。太宰が或る少年に御執心の様子であるという噂。
「なあ、一つ質問いいか」
「はい、答えられる範囲なら」
「最近、太宰が或る少年に御執心だって噂を聞いてな、敦、心当たりは
…
」
中也が訊き終わる前に、既に敦の顔に答えは出て仕舞っていた。
「何処でそんな話を
…
!」
真赤だ。
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