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萩月
2024-11-08 23:35:58
3700文字
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胸襟を開く(審議中)
新アニメ衣装あれこれ(pixiv)から再掲
※ミステリ小説にでてきた場所がでます(ネタバレ等はなし)
その日は日本でアイドル超人数名が参加したイベントがあった。その様子はテレビ等でも報じられ、中でもブロッケンJr.が衣装を新たにしていたのは大きな反響があった。
それは既存のファンから、他の超人のファン、初めてきちんと彼を見た──様々な層から、あらゆる声が出ていた。
かっこいい、若々しい、ばいんばいんしてる、雄っぱい、かわいい、セクシーなお兄さん、等々
……
さてそんな声など恐らく知らないブロッケンJr.は、徳島の別邸に帰ってきた。
数日後にまた日本でアイドル超人としての職務がある為、こちらの方が効率的であった。
ブロッケンは訓練時代の名残か、自分が使用する際は、自分自身で身の回りのこともすると決めている為、本日は使用人も誰もいない。
──筈なのだが、扉を開けると、なんとも聞き馴染みのある声が彼を呼んだ。
「ブロッケン、ちょっと座りなさい」
「えっ!?
隊長
キャプテン
?」
館の主に対し、まるで親が子の悪戯を咎めるように、ソファーを叩く。その男は親というほど離れてはいないが、年上のその人、キン肉アタルである。
「隊長!こっちに来てくれたのか?」
ぱぁっと笑顔を浮かべて走り寄るブロッケンに、アタルはぐ
……
と唇を噛む。
しかしそんなマスクの下の葛藤を知らないブロッケンはにこにこと上機嫌に言われた通り横に座り、そして無意識に体を寄せる。
おニューの紺色の開襟から、嘗ての軍服では見えなかった胸元がアタルの視界に入る。
「どうしたんだ?次ドイツに戻るまで会わないと思ってたから嬉し、ぐ、えッ?!」
ブロッケンの言葉は最後は呻き声に変わる。アタルがその襟元を掴み、ぐいっと引っ張りあげたからである。
「これはお前が望んだのか?」
「
……
えっ、あっ」
怒ってる?──、こともわかったが、その低く鼓膜を震わせる音にブロッケンの体はぞくりと粟立つ。そのトーンは、どうしても閨で聞いた声を思い出してしまう。
ドキドキと心臓が煩く鳴るが、賢いブロッケンはまず目の前の問題に対応する。
「
……
どっかヘン?この服」
「厶、察しがいいな」
アタルは打って変わって、優しく手を離す。ブロッケンはふぅと軽く深呼吸をして、話を続けた。
「ラーメンマンにも同じこと言われたから」
「ほーう?
……
で彼はなんと?」
他の男の名前を出されて、アタルは機嫌が傾きかけたが、保護者的存在のご意見、努めて冷静に聞くことにした。
「ん〜、なんか最初は今みたいなこと言われて、発案者をどうの〜とか言ってたけど、最後には『任せる』って言ってたな」
「
……
意外とブロッケンの意思を尊重する方向
……
」
ラーメンマンの方針を確認したアタルに、ブロッケンはおずおずと視線を向ける。
その不安気な様子に、アタルは最初の怒気は何処へやら、優しく宥めるように言う。
「変ではない。ただ、とても魅力的すぎるのもな、俺としては心配だし遺憾なんだ」
改めてその姿を見やる。可愛い、でもどうしてもその露わな胸元に目がいく。これは彼に焦がれる自分だけ
……
では済まないのだ、恐らく。
「お前が元々セクシー系で売ってるなら文句もないさ。いや多分あるか」
「せくしー系」
「お前は元より、きっちり襟を締めるだろう。真面目で、清廉な所が表れている」
「え、急に褒めてる?」
「それをよく知らない者に、やれ胸元がセクシーだとか、ばいんばいんがとか、言われると
……
」
(ばいんばいん
……
?)
後半はやや早口だったので、ブロッケンはよく意味を受け取れなかった。
アタルは眉を潜めるブロッケンの頭をそっと撫でた。
「すまん、ただの独占欲だ」
「えっ」
ブロッケンは存外の言葉に、驚き声を漏らす。いつも余裕な態度に見える、そんなアタルから独占欲という言葉が出るなんて。
ゆっくりと、彼の真意を探るように問いかける。
「えーと、つまり、隊長はこの格好が悪い、とは言ってねぇンだよな?」
「んん〜〜」
「悩むなよ」
アタルは格好自体は素晴らしいが、それを大衆にも晒すことにもなるとよろしくない
……
そんな二律背反をどう伝えたものか、と腕を組む。
そんな様子を見かねてか、ブロッケンはコホン、と喉を整える。
「
……
他には恥ずかしいから言わないで欲しいんだけど
……
つぅか、ある意味アンタに言うのが一番恥ずかしいけどよ
……
」
「なんだ?」
ブロッケンは一拍置いて、自分でその襟を掴んだ。 そして照れるように、でもどこか誇らしいように、口を開いた。
「これ着たとき、なんだかソルジャー隊長みたい、って思ったんだ
……
!」
へへ、と顔を赤くしながら、煌めく瞳を、長い睫毛が覆う。やはり恥ずかしかったのか、俯きかけた顔を、アタルは逃さなかった。
顎を鷲掴みながら、鼻と鼻がくっつきそうな程距離を詰めた。
「お前は、俺の機嫌を取るのが下手だな」
「えー、怒った?なんで?」
このシチュエーションなら「可愛い奴めハッハッハ」と笑われるくらいは覚悟していた。
それなのに、じりじりと焼け付くようなこの視線は何なのか。
「う〜、やっぱり子どもっぽかったか?もう言わないから機嫌直し」
「違う、逆だ」
アタルは手を緩めると、顎掴んでいた手で、今度はそっとブロッケンの頰を撫でた。
「そんなに喜ばされると、歯止めが効かなくなる。明日のお前に配慮してやれんぞ」
「──!」
その手がするりと頰からまた下へ、顎を過ぎて首筋まで差し掛かる。
その動きの意味を、もちろんブロッケンだってわかる。彼の理解者なのだから。
わかった上で、慌てて動きを止めるよう上から握り締める。
「明日は、何もないけど
……
」
「ほう」
アタルは何かいいように解釈したようで、マスクから見える目が妖しく光った。
「いやだから、その
……
ちょっと待って!」
ブロッケンとしては、事実を述べつつ時間はあるから、との意味で言ったつもりだった。
心の準備とか体の準備とか、ここ寝室じゃないし、帰ってまだシャワーも浴びてない──!
そんな内心が漏れ出るように、慌てふためくまだまだ初心な恋人の様子に、アタルはふ、と小さく笑った。
「まぁ、実際に触れていいのは
恋人
オレ
の特権だからな
……
」
「えっ、」
慣れた手付きでマスクを少しだけ上げる。
あまり灯りの下では目にしないその口元に、ブロッケンは目を丸くする。
そんな様子に構うことなくアタルはブロッケンの、衆目に晒されてきたであろうその白い首筋に口を寄せた。
そしてわざとらしく歯を立てて、少し乱暴に所有印を刻むのであった。
そのまた数日後。
アイドル超人達は、今日もお仕事である。
「ブロッケン」
「あっ、ラーメンマン、おはよう」
「你早」
ラーメンマンは挨拶もそこそこに、じっとその鋭い眼差しで愛弟子の姿を眺める。
「ソルジャーと会って話をしたか?」
「えっ、何でわかったんだ?」
「今のは純粋に質問したんだが
……
、 成程。では一応許しは出たわけか」
「?」
きょとん、としたままのブロッケンを気にせず、ラーメンマンは己が流れの儘に続ける。
「新しい衣装、強要されていたのなら、私は発案者や関係者を
……
する所だったが」
「え、何?」
「そうじゃないなら、後は彼の方に任せようかと
……
反対とかされなかったのか?」
ラーメンマンはなんとなく、この大胸筋強調スタイルの格好に、彼は難色を示すだろうと思っていた。意外と恋人がそういう格好するの平気なタイプ?と思案した所に、ブロッケンが口を開いた。
「んー、最初はラーメンマンと同じ様なこと言ってた、
……
ような?」
「ほうほう、では、どんな口説き文句を?」
「えーっと
……
」
ブロッケンは数日前のアタルとのやり取りを思い起こす。が、そもそも他では口にすまいとしていたこと、そして連鎖的にその後の事まで思い出してしまう。
みるみる顔を朱に染めながら、最終的にわぁっと声を上げた。
「な、ないしょ!」
「ふーん」
身を乗り出していた所を、ぴしゃりと閉められてしまった。行き場を失った好奇心に代わって、愛情混じりの嗜虐心が顔を覗かせる。
「お前、油断するなよ。今まで見えてなかった所が露出するようになったんだから」
「えっ!!!?」
ラーメンマンが己の鎖骨付近を指差す。ブロッケンも反射的に自分のそこを手で抑える。
「いやでも、朝ちゃんと確認して
…
っ?!」
「今のはカマかけだ」
「おい!!!」
ブロッケンが声を荒げる。しかしラーメンマンは動じることなく、じっと目を細める(当社比)
「ふーん、そういうことするんだ、へー」
「もう〜〜、何でもない!何でもないからッ!俺ちょっとトイレ!」
と、言い残すとブロッケンは足早に駆けていった。
「あいつ確認しにいったな
……
」
ふふ、とラーメンマンは髭を揺らした。
「あまり明け透けにすぎるのも考えものだな
……
胸の内も外も」
end
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