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けろか
2024-11-08 20:38:17
2662文字
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わからせっくすのすすめ①
付き合って三ヶ月目な竹くくのお話。 📛が頑張って🎋にわからセするお話です!前にリクエストいただいてた話です☺︎
まだ🔞じゃないですが体位がどうとかの話があります。続きの②は甘々えろ🔞です。
忍たま長屋の不破雷蔵、鉢屋三郎の部屋の前まで来たところで、久々知兵助は足を止めた。聞き覚えのある声がしたからだ。
「俺だけが好きな気がするんだよ」
竹谷八左ヱ門
――
三ヶ月前から付き合い始めた恋人のものだ。少し掠れていた。
咄嗟に壁に身を寄せ、呼吸を殺す。体は勝手に動いた。あとから、胸の奥がぎゅうと掴まれる感覚がやってくる。鼓動が耳元で高鳴り、今にも漏れ出しそうな息が喉を灼く。背中越しに伝わる板壁の感触が、やけに生々しい。
「具体的には」
三郎の冷静な声が続く。
「付き合って三ヶ月目で三回セックスしてるんだけど」
「ほーお。順調なんじゃないか?お盛んじゃあないか」
「っ!」
思わず漏れそうになった声を慌てて押し殺す。他人に赤裸々に話されるような内容じゃない。回数まで三郎に、ていうか、順調なんだ
……
!(正確に言うと、付き合ってから八十七日目に三回目をした)
よかった。けど、それはそれとして。耳の奥が熱くなるのを感じながら、必死に気配を消した。
「体位がな、一回目は正常位で。まあこれは定石かなと思ってのことなんだけど」
「別におかしくないんじゃないか?」
そう、一回目は普通に、した。痛かったし苦しかったけど、八左ヱ門と繋がることができた喜びは今でも鮮明に覚えている。あのとき彼は、まるで壊れ物を扱うみたいに優しく、なのにどこか獣じみた声で何度も名前を呼んでくれて
――
って今それを思い出しちゃだめだ、二人の会話の内容を聞かないと
……
!
「二回目はバックでしたんだよ。兵助、すごく痛そうだったし苦しそうだったから、後背位のが楽だと思って」
「よくある話なんじゃないか?」
二回目は後背位だった。正直、ちょっとショックを受けたのだ。いくら恋人とはいえぐちゃぐちゃに乱れた顔なんて見られたくないのかなと、そう思い込んでいた。でも、今聞こえてくる言葉は違う。全然違う。八左ヱ門の優しさは、二つの意味で胸を締め付けた。
「で三回目は正常位だったんだけど」
「
……
」
「待って続き聞いて! これは兵助からだったんだけど、正常位の方が楽だったからって言ってて」
「いいじゃないか、恋人の要望通りセックスする。健全じゃないか。
……
不健全だけど」
「そうじゃなくて! やっぱり楽とか苦しいで考えてるんだよ兵助は」
八左ヱ門の顔が見たかっただけ、って素直に言えばよかった。でも、そんなこと言えるはずがなかった。二回目で、後ろ向きにしようと提案された時に彼は自分の顔を見たくないだろうと思ったからだ。そんな勝手な思い込みで、意地の張り合いみたいに「楽だから」なんて可愛げのない嘘をついた。
「セックスのお誘いは俺からばっかりだし。兵助の方が負担がでかいのはわかってるんだけど、するからにはやっぱりお互い気持ちよくなりたいし。無理しがちなところがあるから我慢してるんじゃないかと思っちゃうし
……
最中に好き好き言ってるのは俺の方ばっかだし
……
」
「それは私じゃなくて本人に言うべきでは?」
誘わなかったんじゃなくて、閨事の誘いの仕方がわからなかった。「八左ヱ門、その、あの、えっと」なんて言い淀んでるうちに真っ赤になって固まってしまうに決まってる。
気持ちいいとかはまだよくわからないけれど、八左ヱ門に抱かれるのは本当に嬉しかった。最中に好き好きなんて言ったら変な声が出ちゃうし、その乱れた声を聞かせたくなくて必死に堪えていただけなのに。全部、全部裏目に出ていた。壁に寄せた体が震える。
「
……
」
「あ、ど、どうしよう、雷蔵
……
」
声が詰まって、上手く言葉にならない。口元に当てた手の向こうで目の奥がじんとして、まずい、と思った途端に視界がぼやけた。
「うーん
……
僕もどうしようかな
……
」
どうしようとどうしようが重なった。こんなときに相談する相手が、悩み癖のある雷蔵で良かったのかと今更ながら不安になりつつ、でもいつもの雷蔵らしさに妙な安堵も覚えた。
「
……
僕も今自分の部屋入れないし、とりあえず図書室、行こうか」
「うん
……
」
教室棟の一番奥にある図書室は、図書委員の雷蔵にとっては庭のようなものらしい。兵助にとっての焔硝蔵みたいなものだろう。書架の間を縫うように歩きながら、その様子は手慣れていた。
「恋人関係の悩みねえ
……
うーん
……
あ、これとかいいかも。なんでも南蛮の方からの本らしいんだけど」
差し出された本の表紙には見慣れない文字が浮かぶ。その下に添えられた和訳を目で追って、
「わからせっくすのすすめ
……
?」
思わず声が裏返る。そんな本、学園の図書室に置いていていいものなのだろうか。おそるおそる表紙をめくる指先が、少し震える。
「ちょっと待った兵助!部屋で読んで!部屋で!」
***
自室に戻ると、勘右衛門は留守だった。
畳に正座した膝の上で、『わからせっくすのすすめ』は妙に重たかった。息を吸って、そろりと表紙をめくる。
『大切な彼に愛を伝えちゃおう♡』
露骨な文言に目が眩んで、思わず本を閉じかける。けれど、今この状況を打開できる糸口はこれしかないのだ。もう一度意を決して開く。指先が、わずかに震えた。
『彼氏の心をわしづかみ♡ おすすめの体位は「上から目線」で攻める騎乗位!』
再度、目の前の文字が霞んだ。頭の中で、見下ろした八左ヱ門の顔がちらりと浮かんで消える。彼の顔を消して目に入ったのは刺激的な言葉の数々でまた目が泳いだ。可愛らしい図解が添えられた妙に具体的な解説を頭に叩き込む。
『受け身の関係では伝わらない。あなたから積極的にアピールすることで、より深い愛を確かめ合えます』
的確な指摘に胸が締め付けられる。そうだ、今まで受け身すぎた。八左ヱ門の気持ちに甘えるばかりで、自分の想いを素直に伝えられずにいた。声を出すのが恥ずかしくて、顔を見られるのが怖くて。そんな言い訳ばかりだった。
『図解した①、②の体勢で跨り
……
』
「っ
……
」
あまりの直接的な描写に目を逸らしかけた。けれど、これしかない。好きという気持ちを、ちゃんと伝えるために。
顔から熱が逃げないまま、兵助は本に記された一字一字を、真剣に目に焼き付けていった。きっと勘右衛門が帰ってくるまであと数刻。それまでに全てを、暗記しなければ。
「八左ヱ門に、伝えなきゃ」
小さく零した言葉には、不思議と迷いがなかった。胸の奥で灯った決意が、羞恥も躊躇も溶かしていく。
②へ続きます
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