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ミズト
2015-07-29 23:11:23
1400文字
Public
◆A
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愛情こっそり込めました。
クリ御文/彩○国物語のワンシーンを応用しました。
「御幸ーっ!」
食堂で一人スコアブックを開いていた御幸の耳を貫く威勢の良い声。その元気に半ば呆れながらも呼ばれた方を見ると、沢村が両手にクリスと降谷を引き連れてやってきた。
「クリス先輩、お疲れ様です。‥‥で、お前らは何だ」
まずクリスに挨拶をして、手のかかる後輩投手二人に仕方なさそうに問いかける。
「小腹すいたから何か作ってくれよ!」
「‥‥清々しいほど敬意のカケラもねぇな」
「僕も‥‥小腹がすきました‥‥」
「確かにお前はもっと食った方がいいけどな」
俺先輩な?といちいち突っ込むのも面倒なほど、気安いのか懐かれているのか。悪い気はしない時点で俺も甘ぇなと心の中で微笑みつつ、ちら、とクリスに目配せすると。
「沢村と出くわしてな。お前に夜食を作ってもらうというからついてきた。俺も何か食べたい」
そう笑い掛けられては御幸に否を唱える選択肢はない。「俺も何か食べたい」ちくしょークリス先輩どこでそんなの覚えてきたんですか最高いい夢見れそう今夜。ときめきが過ぎてわけのわからない質問を心で絶叫しつつ、ポーズだけため息をつきながら「‥‥しょうがねぇな」と零すと「御幸、クリス先輩相手だとチョロすぎるだろ!」と沢村が喚いたので頬をつねって黙らせた。
「ったく‥夜食ったって、おにぎりくらいしか作れねぇぞー」
全然オッケーっす!と了承する沢村と、黙って頷く降谷とクリスを見て、御幸は厨房に立った。
三人で茶を飲みながらああだこうだ話していると、できたぞー、と御幸が皿に盛った握り飯をテーブルに並べた。
「‥‥‥え?」
沢村がそれぞれの皿を確認して、
「なぁんで降谷のだけ一個多いんスか!!!!」
と抗議の声を上げた。
「降谷は一番沢山食って肉つけねぇとな」
「エコヒイキじゃねぇ!?ずりぃ!!」
「はっはっは。愛情の差ってヤツ?」
「認めねぇ!!俺は認めねぇぞ!!降谷そっちよこせ!!」
「沢村、お前には一番デカいやつやってるだろーが、ケンカすんな」
沢村に持っていかれそうになる皿を、じ~んとしながらも容赦なく引き戻す降谷を横目に、クリスは自分の握り飯をひとつ手に取った。
「いただきます」
「うっす」
道具を片付けるため、御幸は再び厨房へと戻る。まだ微笑ましい攻防戦を繰り広げている隣を眺めながら、クリスは握り飯を齧った。
(‥‥‥ん?)
あれ、と思いながら咀嚼しつつ、さすがに腹が減ってケンカする元気が失せたのか、握り飯にかぶりつく二人を見る。正確には、二人の食べている握り飯を。
「あー塩きいててうめぇー!やっぱ米はサイコーだな!」
「‥‥ん」
――
やっぱり。
クリスは自分の持つ握り飯を見ながら言った。
「‥‥ただの塩むすびでも作る人によって味が違うんだな。美味いよ」
手を洗っていた厨房の御幸が、えっ、と顔を上げた。じっと確かめるように見つめると、クリスの意図に気付いたのか「‥なら、よかったです」と水を浴び続ける手に視線を向けて俯く。そんなに念入りに洗わなくても、米のぬめりなどもう綺麗に流れ落ちているだろうに。
(愛情の差、か‥‥‥)
御幸の先程の発言を思い出して、思わず顔が熱くなる。胃よりも胸のほうが、何だかいっぱいに満たされるような感覚がした。沢村に取られないようにしないと、と、クリスは鮭フレークの入った握り飯を静かに味わうのだった。
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