ミズト
2015-05-07 00:36:42
1524文字
Public ◆A
 

Purring and calling

クリ御短文 ほのぼのあまあま

「かわいいな‥‥」
 呟いたクリスの視線の先にはテレビ画面。そこにはまるでぬいぐるみのようにもふもふ、ころころとした、丸っこい子猫達が、ちょこちょこと走り、じゃれあい、愛らしい仕草を惜しげもなくお茶の間に送っている。
「クリス先輩は猫派ですか?」
 クリスは声のした方を見下ろした。御幸はソファに座ったクリスの膝の間に身を置いてカーペットの上に腰を下ろし、クリスの太腿に頭を凭せ掛けていた。
「そういうわけでもないが」
「クリス先輩は犬派っぽいイメージありますね」
「確かに犬も好きだぞ。大型犬を見ると少し飼いたくなるな」
 ゴールデンレトリーバーとか散歩させてるクリス先輩、すごく絵になりそう、と御幸は笑った。今二人で住んでいるマンションはペット禁止物件ではないが、互いに動物を飼えるような余裕のある生活リズムではないため、現実的には考えていなかったが。
「お前は?」
「はい?」
「猫派か?犬派か?」
「んー特にどっちってことも‥ないかな」
犬や猫を可愛いとは思うが、愛玩動物に大したこだわりや愛着もなかった。猫派か犬派かなんて、考えたこともない。
「犬派っぽいけどなお前」
「そうですか?」
「沢村や降谷に甘いところを見ると、犬のほうが好きなのかなぁって思った」
 む、と御幸はクリスを見上げた。
「それを言うならクリス先輩のほうでしょ、沢村大好きなくせに。ああいう犬っぽい奴が好きなんでしょー」
「おいおい、犬っぽい人間じゃなくて犬の話をしてるんだぞ」
「先輩が先に言い出したんじゃないですか!」
「俺は人間の好みから動物の好みを推測しただけだ」
 まったく、あなたの沢村に対する甘すぎる態度に俺が昔からどんな気持ちでいたか知りもしないで!拗ねてそっぽを向いた御幸に、クリスはくすくすと笑いながら、両手で頭をわしゃわしゃと撫で回した。
「でもお前は猫っぽいぞ」
「‥‥‥‥」
「だから俺はもしかしたら猫派かもな」
「‥‥‥‥‥」
 ずりぃ‥‥と御幸は顔を顰める。クリスは自分のことを猫っぽいと評したが、クリスの手にかかれば何もかも彼の思い通りになってしまう自分は非常に犬寄りなのではないか‥‥と御幸は考察した。
「俺のどこが猫っぽいんスか」
「んー‥‥‥。目?」
「見た目だけ⁉」
「俺にだけ甘えん坊なところとか」
「そっ‥‥‥‥れはむしろ犬なのでは」
「そうか?あとはー‥‥にゃあにゃあ鳴くところかな」
「鳴いたおぼえありませんけど⁉」
「鳴いてるだろう、いつもベッドで」
「なんでいきなりソッチの話になるんスか!」
 突然情事の話題を持ち出され、思わず頬が熱くなる。クリスはその様子に愉快そうに微笑んで、御幸の頬をむにむにと抓った。
「猫は可愛いけど、ウチにはもうでっかい猫がいるから十分だ」
 愛おしそうにそう言われれば、御幸も自分の顔がだらしなく緩むのを抑えきれなかった。クリスの下腹部を枕にするようにして見上げると、反った喉を爪先で擽られた。
「んっ」
「ほら、にゃーって言ってみろ」
「う‥‥」
「〝わん〟でもいいぞ」
「うーっ‥‥‥」
 喉を擽られ額を撫でられ、それが気持ちよくて、本当に猫にでもなったような気分だ。クリスの爪先が喉を掠めるたび、ぞわぞわと漣のようなものが皮膚の裏側をかけのぼる。
「ほら御幸、にゃー」
「っ‥‥」
「にゃー」
「‥‥‥ぅ‥‥、‥‥にゃ‥‥‥」
 満足げに笑うクリスの唇が下りてきて御幸の唇を塞いだ。整ったその笑顔には意地悪な色が濃く浮かんでいた。今夜もにゃあにゃあ泣かされるのかと思うと、クリスの発言を否定できる材料を自分は何一つ持っていないのだと御幸は呆れ気味に心でため息をついた。