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ミズト
2015-02-21 02:55:04
908文字
Public
◆A
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愛しい人よ良い夢を
クリ御短文
こくりこくりと船を漕ぐ後頭部がソファー越しに見えた。
「御幸」
クリスが背後から声を掛けると、御幸は半分下りた瞼ではっと顔を上げる。
「眠いならもう寝室に行け」
眠気を飛ばすのが半分、否定の意思表示が半分だろう、頭を横にふるふる振って御幸はぽつぽつと返す。
「まだ‥‥」
「どうして?」
「まだ先輩と、‥久しぶりなのに‥‥‥」
二人の時間を終わらせたくないというなんともいじらしい努力に、クリスの頬も緩む。
「お前が寝ないなら俺が先に寝ようかな」
「えっ」
「おやすみ」
そう言って背を向け、寝室へと向かおうとすると、背中に視線が刺さる。振り返ると驚きと戸惑いが入り混じる顔がこちらを向いていた。
「そんな顔するな」
冗談だよ、とまたソファーへ歩み寄り、御幸の頭を撫でる。
「今日は早めに寝て明日早く起きよう。俺も一緒に寝るから。な?」
御幸の大好きな優しい笑顔と、甘すぎるほど甘い声音と、小首を傾げる仕草を駆使して説得すると、こくりと縦に首が振られた。
手首を掴んで寝室まで引っ張りベッドに横たわらせれば、意識が落ちてしまう前にとすぐに両手が伸びてきた。クリスがベッドに乗り上げ御幸の体をしっかり抱きしめると、それでもなお眠りを拒んでいるのか、肩に額を擦り寄せる。
「御幸」
「うー‥」
「‥‥ふふ」
御幸の必死さがいっそ可笑しくなり、クリスは笑みを零す。
「何をそんなに話したいんだ、それを話してから寝よう」
「何がとかじゃなくて‥‥」
「うん」
「先輩と‥もっと‥‥」
「うん。御幸、好きだよ」
「‥‥俺も‥‥‥‥先輩‥‥‥‥‥だいすき‥‥‥‥‥」
どんどん声が小さくなり、やがて聞こえるのはささやかな寝息のみとなった。よほど眠かったのだろう、頬をつついたり、前髪をかき分けたりする程度ではぴくりとも反応しない。それをいいことにクリスはしばらく御幸に触って遊んだ。
「御幸」
普段よりなお密やかに名を呼ぶ声は、慈しむようで、同時に切なさを帯びている。
「愛してるよ」
次はきっと、お前のその光る矢のような目がはっきりと開いている時に言うよ。
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