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丸め
2021-08-04 21:50:05
1696文字
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小説とか
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食べられないもの
先輩と後輩の平和な両片思い。肉倉視点。
私はイナサが好きである。
…
と、校舎隅の花壇のへりに座って思う。
奴は今隣で私が丁重に断った紙パックの野菜ジュースを飲んでいる。
良いところは挙げるときりがないが、とにかくこの様子を見てくれればわかると思う。可愛いのだ。
15歳に見えぬ体格の男らしさと年齢相応のあどけない振る舞いが入り混じって、どこか危険な香りのする美しさがある。
私の文章力では説明しきれないだけで、単に恋愛感情に振り回されて判断が鈍っているだけではないことに疑いはない。
イナサがどう思っているかは不明瞭だが、私のことを気にはしているようでこのように共に時間を過ごすこともよくある。
「肉倉先輩が好きだ!」
これだ。イナサはしょっちゅう好意を伝えてくる。直接的な言葉に初めは酷く動揺した。
イナサは様々なものを好きと言うのだ。
私への言葉と他に対してで違いはないかと、無意識に感覚を研ぎ澄ませてしまう。
今でも嬉しくは思う。しかし、その言葉の真意は分からなくなった。
「感謝する
…
」
「俺!決めたことがあるんです!」
「っ
……
何だ」
イナサが私をまっすぐ見つめ、黙っている。その表情は
…
逡巡?いつでも口角が上がっているので、イナサの表情は一見分かりにくい。見慣れればなんとなく判別できるようになる。
「俺はベジタリアンになる!」
「ベジ
……
それはなにかの隠語か?」
「いんご
……
?」
浅はかにも恋愛の話題だと思いこんでいた私は、すぐにはイナサの言うことが理解できなかった。
イナサは時に奇妙なジョークのセンスを見せるときもあるが、多くの場合率直にものを言う。この場合も、ただベジタリアンになりたいということを言っただけなのだ。
「なんでもない。肉食を避けるとは
…
貴様は環境問題に興味があるのか?良い心がけだな。試してみるのもいいだろう」
イナサは得てして長たらしくなりがちな私の弁舌を黙って聞いてから突拍子もないことを言い出した。
「俺、先輩のことが好きなんで」
「どういうことだ
…
?」
「肉
…
見てると先輩のこと思い出しちゃうんすよ」
「
……
」
「特にソーセージ!!」
「はぁ!?」
「ソーセージ見てると先輩に見えてきちゃって、噛めないんスよ」
私は自分の名前がソーセージと読めることは知っているし、私のことを蔑称として影でソーセージ呼ばわりしている痴れ者もいる。
しかし、イナサが私とソーセージを同一視するとは一体何があったのだ?おおむね誰かが私への嫌がらせで吹聴したのだろう。
前も「先輩の本名は眼球舐夫って本当っすか?」とか聞いてきたしな
…
それはそうと、私を思い浮かべるから傷つけられないとは、それほど私を大事に思っているのか?イナサは
…
私のことが
…
好きなのか?
焦っている。考えがまとまらない。
「何を言っているのだイナサ
…
!?どうしてこんなことに
…
私のせいか
…
?」
「先輩のせいではありません!俺が勝手にそう思うんです!俺は
…
だから
…
先輩のこと、好きだから
…
」
「
……
」
「ずっと先輩の事考えちゃって
…
食べ物の好みも変わっちゃいました
…
って、話です!」
「
……
!?」
これは愛の告白なのか?何を返せば良いのか迷う暇もなくイナサは言葉を継いだ。
「だから!野菜の好きな先輩に色々教えてほしいっす!野菜の食べ方
…
」
「
……
私はベジタリアンではなく魚は食べる。お前もそうしてみるか?」
「あっ!先輩といっしょ
…
になってみたいっすね!!」
イナサは、自分が告白したことを分かってすらいないのかもしれない。ただ思ったことを口にしただけ。
あるいは、私が肯定的な返事をしたら士傑生としてあるまじき行為になってしまうことを、分かってうやむやにするつもりなのかも。
分からない。とにかく、今は言えないが私はお前が好きだ、イナサ。側にいて欲しい。
後日
…
「先輩!腹減るんでやっぱりたまには肉食べます!」
「むしろ、よく続いてると思うぞ
…
。無理はするな、ちゃんと食べろ」
「俺の気持ちがそうさせるんです。肉を食べる時は頭の中で先輩にゴメンナサイしますね!」
「せんでいい!!」
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