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ミイ
2024-11-07 07:11:43
2243文字
Public
静なつ
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ハロウィン③
静なつさんのハロウィン。みっつめです。
「なんなんだ今日は! 落ち着いて弁当も食べれないじゃないか!」
苛立ちから叫ぶなつきをどーどーとたしなめながら最近涼しくなってきたというのに、舞衣は汗をだらだらと流していた。これは
……
もはや今年に入って一番の異常事態である。
(奈緒ちゃんかなぁ、これ。でも一応お菓子は渡してたからいたずらはしないでくれてるだろうし
……
なつきの行動で、結果的にこうなっちゃったってこと?)
人気のない林の中でぶつぶつと文句を垂れながら、見た目にも麗しい弁当をもぐもぐと食べているなつき。あ、卵焼きおいしそう。
……
追いマヨなんて絶対しないほうがおいしいだろうに、にゅるにゅるといつもの倍はマヨネーズをかけて頬張っているから、さっきまでのことでだいぶストレスが溜まっていたのだろう。流石に可哀想だったし、今はなにも言うまい。
四限の終わりを告げるチャイムが鳴り、いつもの花園か教室で食べようとなつきが弁当を抱えた時には、すでに廊下には長蛇の列ができていた。授業が終わって数秒後のことなのだから、今までどこに隠れていたのやら、という始末。
先頭に立った、中等部の制服を着た生徒。まだ幼さの残る顔をした彼女は、耳の先まで顔を真っ赤にして。勇気を振り絞っているのだろう。小さな拳をギュッと握りしめ、なつきに向かってこう言ったのだ。
「く、玖我先輩っ。
……
と、トリックオア、トリート、です!」
「
…………
。ああ、ほら。
……
これでいいんだろ?」
「「「
————
っ!」」」
なつきは机の横にかけておいた紙袋から、お菓子の包みをとってぽん、と手渡した。この行動が、全ての始まりだった
……
。
まあ、それまでにもダメ元でぶつかってきた後輩たちにお菓子を配っていたなつきだが、この少女に、静留から言われていたしな。あ、結構美味しかったぞ。とお菓子を渡してしまったが最後。
「今日はあのクールビューティー玖我なつきにトリックオアトリートすると藤乃会長が用意してくれたお菓子をくれるらしい。お得すぎる」
と噂が流れて話題になり、後輩やら先輩やら果ては同級生までが休み時間になるたびに詰めかけてくる始末。なつきも突っぱねればいいのに、丸くなってきたからか「トリックオアトリート!」と叫ぶ生徒たちににまるでアイドルの握手会よろしく一つずつ包みを渡していた。(本人は全く楽しそうではなかったが)
昼休みに入ってもそんな調子で、流石になつきが空腹でイライラしてきたのと、お菓子が底をつきそうになったのを見計らって
「あーっ! お腹すいちゃったなぁあ? なつき、お昼行こ!」
「
————
っ、舞衣
……
」
これでもかと情けない顔をしたなつきを舞衣が教室から引き摺り出してやった、というところである。
「
……
静留のやつ、なんでこんなこと
……
これなら誰にもやらなかったほうが良かったんじゃないのか
……
?」
「お疲れ様。ほんとすごかったわねー、なつきの人気。てか静留さんがいた時はどうだったんだろ」
「さあ、どうだろうな」
「なつきも知らないんだ?」
「人が集まるところは苦手だ」
「そうだったっけ」
大方、イベントごとには執行部のあの人が目を光らせているから面倒だし、会長もそう表立ってイベントを企画する、ということもなかったように思う。見えない部分で彼女がどう動いていたかは知らないが、きっと、数年前の今日この日だって、なつきのことを思っていたはずだ。
……
この鈍感なわんこに聞いてみたら分かるだろうか。
今回の件だってそうだ。あの聡明な人ならば、こうなることくらい予想がついていたはず。事件といっても差し支えないくらいのこれは、彼女の中ではどう収束する算段がついているのだろうか。
頭のいい人の考えることはわかんないわ
……
と舞衣はため息をつく。その横で、木の根元に収まるようにして座り込んでもぐもぐと愛妻弁当を咀嚼しているなつき。最後の一口まで大事そうに食べて、弁当に蓋をしたらごちそうさま、と手を合わせる。菓子パンやコンビニ弁当を食べていた頃には見られなかったなつきの仕草に、舞衣は思わず、くすりと笑みをこぼした。
「なんだ舞衣。
……
あっ、おかしはもうないぞ。というかおまえにも渡しただろ」
「はいはい。わかってるわよ。
……
あ、これなつきにあげる」
「これは
……
静留のと似てるな。オレンジだけど。こういうのが最近は売られてるんだな。あまり気にしたことはなかったが」
「うん。ハロウィンのお菓子。命が喜ぶかと思ってさっき購買で買ったのよ。当日だからか安くなってたし。なつきにも一個あげる」
「カグツチはついてないんだな。
……
べつに私はおまえにいたずらするつもりもなかったが」
「カグツチって
……
。まあその
……
お疲れ様と、このあともがんばれってことで」
「ん。ありがたく受け取っておく」
舞衣にもらった、キラキラと陽光を反射して輝く小袋をジャケットのポケットに入れ、なつきはふかふかとした落ち葉の上にごろんと横になった。
「ちょっとなつき。今から寝るなんて午後はどうするの?」
「朝から出てきてるんだ。一時間くらいいいだろ」
「会長さんに叱られない?」
「
……
少し遅れていく」
「はいはい。先生には言っとくから。ちゃんと来なさいよ?」
これから不貞寝をするのだろう友人を目の端にとらえながら、舞衣は早足で教室棟へと戻った。このあとここに、誰も現れませんようにと祈りながら。
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