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orikoriko1125
2024-11-07 00:27:36
4419文字
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その他
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片棒をかつぐ
友達のために書いたアオカブ。
なんでも許せる人向けです。
カブさんのことアニメとポマスでしか知らないため、カブ←アオキ×モブのおっさんLと夢小説の悪魔合体です。
アオキの嫁の気持ちで読んで下さい。
平凡な男。それが私の夫の自称であった。
ついさっきまで私もそう思っていたのだ。
震える手で彼のスマホの写真フォルダをタップする。
何処かで見たことのある男性の写真がひっそりと、大切そうに並んでいた。
旅行先として訪れたパルデアはとても素晴らしく、まだまだポケモンバトルも盛んではない部分が、ポケモントレーナーではない自分も歓迎されているように感じた。
トレーナーでない者もポケモンリーグでは職員として受け入れている。
たまたま大学の就職課で見かけた求人票に飛びついた。
一体でもポケモンを持ったら? よく聞かれるけど私には彼らの賢さ、獰猛さが恐ろしかった。
営業部の人と見合いをしてみないか。
そう上司に呼び出されたのはパルデアに来て何年経った頃か。
数人の男性と交際経験はあるが、結婚には至らなかった。
願望も無かったのだが
……
。
上司の顔を立てる、という名目で引き受けることにした。
テーブルシティのホテルのティールーム、白髪混じりの朴訥とした男。
営業部のアオキさんが、いた。
数回仕事で会話はしたことがあるくらい、向こうは私の名前も顔もピンと来ていなそうであったが。
小さな声で喋るため、何度も聞き返してしまい、話題も弾まず、ここでこの話はおしまいかと思ったが、アオキさんが「ここ、うちの上司のおごりらしいです」と言ってケーキを一度に五つも頼み始めた。
なかなか大きいサイズのケーキを、二口で体に入れてしまう様子を見ていたらおかしくて思わず笑ってしまった。
不貞腐れたアオキさんがなんだか可愛らしくて、上司にまた会いたいと伝えた。
アオキさんはとにかく食事が好き、食べている時に幸せを感じる。
そして驚くべきことに、営業マンは仮の姿、実はチャンプルタウンのジムリーダーでパルデアリーグの四天王であることを教えてくれた。
「顔出しはしてないですが、アカデミーの生徒を始め、パルデアのトレーナーたちには周知の事実ですがね」なんてなんともない顔で言うのだ。
私はポケモントレーナーでないし、この先もなることはない。
ただアオキさんのトレーナーとしての人生を支えてみる、そんなことをどこかで考えるようになってきた。
「結婚、して下さい」
「
……
はい」
お見合いから半年後、ハッコウシティのホテルのレストラン。
コースの最後のデザートと共に、彼のポケモンの掲げるような大きな宝石の乗った指輪が嵌められた。
「私なんかでいいんですか」
「あなたがいいんです」
今まで聞いたことのないような大きな声、アオキさん基準ではあるけれども。
間違いなく、私の人生のハイライトであった。
新婚旅行はアローラ、彼の住むチャンプルタウンの大きな新居。
私は寿退社をして、彼と彼のポケモンたちをサポートすることに。
順風満帆な人生
……
でもない。
私たちはまだ夫婦らしいことを何一つしていないのだ。
手をつなぎキスをする。でもそれ以上の事は新婚旅行でも起きなかった。
酷く惨めな気持ちで、毎日この美しいお城で王子様を待つ。
どんな気持ちで寝顔を見つめているのか、穴が開くほど見つめても伝わることはなかった。
「アオキさん、私はあなたの妻として相応しくないですか?」
落ちた涙が揃いの寝巻きにシミを作る。
その日起きた出来事はあまりにもあっけなく、教科書に載るような味気ない行為だった。
まだ眠るアオキさんを起こさないよう、静かにキッチンへ向かう。
先ずするのは彼の手持ちたちの食事の用意。
大きな鳥ポケモンの射るような目線に気が付かないふりをして、静かに専用の皿に食事を盛る。
この大きな家はほとんど彼らのためだ。
猛禽類の赤い瞳は決して私を歓迎したりはしない。
「新婚さん、ええなあ!」
アオキさんと結婚して一番変わったのは、たまに彼のお使いでリーグに行くと、今までが関わりの無かった人々に話しかけられることだ。
今日は四天王の同僚のチリさんに「アオキさんの家、エンゲル係数ヤバそうやん」と問われた。
「でもアオキさん、嬉しそうだし、帰りも今まで以上に早く帰ってとるで。奥さん大好きなんやな〜」
早く帰ってきた事なんてほとんどない。
「最近外食で食べたアヒージョが美味かった、そんなの奥さんと一緒やからやん!!」
結婚してから外で食事なんてしていない。
体の中が一気に冷える。
アオキさんは一体誰の話をしているのか。チリさんの声がどんどん遠くになる。
昼間のチリさんの話がずっと響いたまま、今日は本当に家へ早く帰ってきたアオキさんと食事を囲む。
彼は食事中は会話もしない、テレビやスマホを見ることもない。
ひたすら目の前の食事を口に運ぶ。
私を抱く時にその情熱を向けて、そう言えたら良かったのか。
『ガラル地方のリーグ! 今一番盛り上がっているのではないでしょうか!』
ポケモンリーグの話は私の一番興味の遠いところだ、ハンバーグに箸を入れる。
その時、信じられ無いものを、見た。
あのアオキさんが箸を止めて、テレビの方を見た。
画面に映ったのはそれは見目のいい若い男性。
アオキさんは再び食事を始めた。
本当に一瞬、もしかしたら誰にも分からない。でも私は気がついてしまった。
今、何かを期待していた、と。
「数日、イッシュ地方へ出張へ行きます」
何でもパルデアアカデミーと交流のある学校があるらしく、アカデミー生であるパルデアチャンピオンの学生が交換留学に行ってることで四天王、ジムリーダーが呼ばれるようだ。
「
……
出張が多いとは聞いていますが、今まで行った地域で一番思い出深い所はありますか?」
準備をしながら、違和感のヒントになればと平静を装い、聞いてみた。
「そうですね
……
。パシオ、でしょうか」
「パシオ」
初めて聞いた場所だ。何でも遠い地域にある人工島で、ポケモントレーナーしか入れない場所らしい。
「普段過ごしている地域も、トレーナーとしての考え方も違う人々と交流する。必要のないことだと思っていました。
……
まだ知らない自分に気が付かされたんです」
アオキさんが自分のことを話すのは本当に珍しい。
少し嬉しそうな顔をすると、いつもの表情の読めないアオキさんになり、それ以上話すことは無かった。
手が震えた。
目の前にアオキさんの忘れたスマホが、置かれている。
これを見れば、積み重なった出来事の答え合わせができるのかもしれない。
その代わり私たちの生活は終わるのかもしれない。
このまま見て見ぬふりを続けていく、選択肢。私には選べなかった。
トレーナーのスマホにはロトムというポケモンが入っている、私が扱ってもただのスマホと同じだ。
ロック解除のパターンは実は知っていた。
何度も盗み見したから。
慌てたせいか一度失敗したが、二度目は呆気なく解除された。
デフォルトの壁紙。同じメッセージアプリを開く。
一覧には私の知っている名前ばかりで、数人の女性のトークルームを順に見ていったが、親密な関係の人はいなかった。
安堵しつつ、写真のギャラリーも。
ほとんど食事や彼の手持ちポケモンの写真、一緒に行ったアローラの風景に私が映ってるのが、こんなときでも嬉しかった。
これ以上詮索するのは、もうよそう。
もしかしたらいつか、真実を教えてくれる日があるのかもしれない。
フォルダをスクロールするのを止めよう
……
指が止まる。
ゴミ箱の下の隠しフォルダ。
止めなさい、と心が叫ぶ前にタップしていた。
子供の頃、道具箱の奥に宝物を隠していたようにアオキさんの多分、宝が並んでいた。
アオキさんよりも年上の男性の写真。
それも撮らせて貰ったようなものではなく、こっそりと撮ったようなショットばかり。
彼の写真と混ざるような食事の写真はチリさんの言ってたアヒージョ、他にも私とは行ったことのないレストランの食事。
『温泉、めっちゃ良かったって言ってたで』
浴衣姿の男性の隠し撮り。
家でたった一人の私は大きな声で、叫んだ。
「
……
どうしましたか?」
息を切らせた夫が帰宅していた。
「見ましたか」
「
……
はい」
床のスマホを拾い、アオキさんが「ロトム」と声を掛けてロックを解除する。
「先ずあなたに謝らないといけないことがあります。私はあなたを利用しました」
「上司からお見合いの話を持って来られた直後、パシオへの出張を命じられました。この写真の方はカブさん、と言ってガラル地方のジムリーダーを務めている方です」
隠し撮りされた写真を指さす。
何処かで見たことがある気がしたのは、そうだったのか。
「はじめは考え方も相容れず、冷たく感じるような態度を取ってしまいました。でもそんな私を責める事なく、認め理解しようとしてくれました」
「カブさんの姿勢に触れるうちに、自分の世界や考え方がまだ変われる、進化できると思うようになりました」
アオキさんと一緒に窓の外を向くと、小さな鳥ポケモンがちょうど空へ飛び立つ所だった。
「そうしているうちに、尊敬が恋愛としての好きという感情へと変わっていきました。平凡な自分が、輝かしい、ましてや男性に惹かれるなんて信じられなくて」
「お見合いをしたあなたと平凡な家庭を作り、平凡な幸せを享受すれば忘れられる、そう考えた。
……
あまりに浅慮でしたが」
ここまで正直に伝えられると、涙も落ち着いてくる。
「あなたを利用したことは本当に許されません。どんな償いもします。ただ誤解してほしくないのは、カブさんへの想いは自分の片思いで向こうはただの友人、と思っています」
寂しそうな表情、この夫にここまでの顔をさせるカブさんはどんな人なのか。
同じコートで戦う事は、私には叶わない。
「
……
分かりました。アオキさんが私のこと好きでないのくらい気がついてましたよ」
せめて最後に言わせて、あなたの心に少しでも残させて欲しかった。
あれからアオキさんから上司に伝え、すぐに離婚となった。
「ラブラブやったやん!!」とチリさんに言われたが、彼女あんなに美人でモテるのに恋愛偏差値低いのかもしれない、と妙におかしくなる。
十数年ぶりの故郷は案外居心地が良くて、もっと早く帰れば良かったかも。
『先日行われたガラルとパルデア両リーグの交流試合の様子をお伝えします!』
テレビから聞こえる声に捕まえたばかりの私の鳥ポケモンがびっくりして、肩に乗る。
怖くないよ、と伝えてしっぽを撫でると「ぴち」と小さく鳴いた。
『ガラルいちの熱い男! カブ! 迎え撃つのは冷静な男、アオキ! どちらも引かない熱い戦いです!』
昔の男が新しい恋人と、愛を囁やき合うシーンなんて全く面白くない。
でもテレビを消す直前に見た、二人の視線は熱くて、やっぱり私にはトレーナーなんてなれないなと、肩の相棒に囁いた。
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