三毛田
2024-11-06 19:27:03
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03 003. 触れられない距離

3日目 まだまだ距離は埋まらない

 触れたいと思っても、すぐに離れていってしまう。
 身体的な距離も、心の距離も中々埋まらない。
「どうぞ」
 資料室へ、アーカイブ登録してもらう資料を持っていき、なかに入るための許可のためノックをすると、淡々とした返事。
「お前か。何の用だ」
「これ、街で集めてきた資料。丹恒なら、有効活用できるだろ」
「そうだな。助かる」
 そこはありがとうじゃないんだ。
 という言葉は飲み込む。
 指摘するのは間違っているとかそういうんじゃなくて。
 もしかしたら丹恒は、こういう時に何て言うのかを知らない。そんな気がしてしまう。
「何だ。用がないなら、部屋かラウンジに戻ればいい」
「どうやるのか、見ててもいい?」
「好きにしろ。ただ、邪魔をしたら追い出す。見るだけなら、そこに座ればいい」
「ありがとう」
 お礼を口にすると、なぜそこでその言葉を? という表情に。
 ああ、やはり。
 そんな言葉を飲み込んで、指示されたところへ座る。
 本人も、そんな表情を浮かべたことなど忘れたように、コンソールに触れ。
 他者との接触を最低限にしたい。そんな空気を常にまとっているから、よほど鈍感でもない限りは不必要にその領域に踏み込まない。
 記憶喪失でなかったら、俺の中にある知識を彼に提供できたのに。なんて、叶わぬ夢。
 テーブルを指先でコツコツ叩いてから、スマホを取り出す。
 この間見つけたゲーム、隙間時間にちまちまやってようやくチュートリアル後のガチャまでいったのだ。
 なのみたいな女の子もいるし、丹恒みたいなクールでかっこいい男の子もいる。
 その子たちはチュートリアルで仲間になってくれたので、もらった素材でコツコツレベルアップとスキルとかの強化中。
「ひぇっ」
「どうした?」
「だ、大丈夫」
「そうか」
 攻略サイトを見ていたら、広告の急なホラー演出。思わず悲鳴を上げると、丹恒は自然だけこちらへ向けて。慌てて大丈夫だと返せば、すぐに視線は元通り。
 本当に俺に興味がないんだなぁ。
 それから毎日のように突撃しては、静かな時間を過ごしている。彼は飽きもせずこの部屋から出ない。
 時々なのと二人で依頼に引っ張り出すと、渋々ついてきてくれる。
「丹恒、危ないっ」
 迷子の猫が丹恒に飛び乗った瞬間、目の前に裂界生物が。
 慌てて腕を引いて、顔の横を通り過ぎる氷の矢に少しヒヤヒヤして。
 猫が迷惑そうに鳴いたことで、勢いよく彼らを抱きしめていたことを思い出す。
「い、痛くない? 猫も、ごめん」
「んな〜」
 不服そうなだみ声。