みずあめ
2024-11-06 00:50:30
1567文字
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楓練

かえでくんが風邪っぴきの付き合ってる🍁🧱

ひやりと冷たい感覚に俺は薄く目を開けた。視界の真ん中に大好きな練牙くんがいて、夢か、と小さく呟く。ぱちぱちと瞬きをした練牙くんが優しく笑ったのがマスクをしている目元だけでも分かった。
「夢じゃねぇよ。体調、大丈夫か? や、大丈夫じゃないの分かってるけど」
……ほんもののれんがくん……?」
「ん、ほんもの。仕事終わっていま帰ってきたとこだよ。雪風がおかゆ作ってくれてたから、食べられそうなら持ってくるけど、どうする? もうちょい寝とくか?」
……ほんものの、れんがくんだぁ……
……いつもそんくらい油断した顔見せてくれてもいいのに」
練牙くんが小さく呟いた声はよく聞こえなくて、視線でなんて言ったの?と聞いてみたけれど、練牙くんは答えを教えてくれなかった。
ふぅと息を吐いた練牙くんは俺の寝ている布団にぽすんと頭を乗せた。近い距離で視線が絡んで心臓が跳ねる。お仕事が忙しい練牙くんに風邪を移したら大変だ。本当はこのまま、練牙くんに見守られながら寝ちゃいたかったけど、俺は力の入らない体をなんとか起こして壁に寄りかかった。はぁはぁと荒い呼吸をする俺を練牙くんが心配そうな目で見上げてた。
「無理しないでいいぞ」
「う、ううん、ぜんぜん、だいじょうぶ……
「おかゆ食べられそうか?」
……どう、だろう、……う、頭くらくらする」
「ああもう、無理に起き上がるから。ほら、体重こっちにかけていいから、まだ寝とけって」
頭を抱えた俺を見て練牙くんは素早く立ち上がり、優しく俺の体を支えてくれた。近づいちゃダメだって思うマトモな思考はぐるぐる目が回るような気持ち悪さに押されてしまい、俺は力強いその腕に身を任せた。
ゆっくり丁寧に俺をベッドに寝かせた後、練牙くんは俺の手を取りきゅっと優しく手を繋いだ。布団から出していても寒さは感じず、むしろ練牙くんの体温が心地良くて温かい。
「主任さ、なんでも一人でやんなくていいよ」
……?」
「頑張りたいのも分かるし、主任ならオレなんかよりいっぱいできることあると思うけど、一人で無茶してこうやって体調崩されたらオレだけじゃなくて、みんなもすげー後悔するから」
「こう、かい……
「うん。主任がちゃんと休んでるかもっと確認すれば良かったとか、オレが代われることもあったのにとか、いろいろ考えて悔しかった。倒れるくらい体調悪くなる前に気づいてやれなくてごめん。……もっとオレが頼れる人間だったら、主任は無茶しなかったのかな」
……ごめんね、れんがくん。おれ、みんなに、めいわくかけて」
情けなくて、涙がにじむ。うう……と泣き声を堪えて呻くと練牙くんが慌てて俺の頬に手のひらを添え、すこしからかうような笑みも混じった優しい顔で「泣くなよー」と言った。目尻から溢れた涙は、枕を濡らすより先に練牙くんが拭い取ってくれる。
練牙くんは涙でぼやけた視界の中で俺に顔を近づけ、マスク越しの唇を額に押し当てた。不織布の感触の向こうに確かに練牙くんの体温を感じる。心臓がとくんと甘く高鳴り、もっと練牙くんに触れたくなった。
「主任、オレたちさ、全然迷惑なんて思ってないからな。つーか、迷惑かけろよ。仲間だろ。……仲間だし、オレ、彼氏じゃん。頼ってよ」
……うん、……ふ、ふ、かれし。そっか、そうだね、かれしだ」
「そう、彼氏。だから、もっとオレにわがまま言うこと。彼氏の言うこと聞けるか?」
……うん、わかった。れんがくんに、もっと、わがままいうね?」
「ん、いいこ」
こつんと額を重ね合わせて、練牙くんは優しい瞳で俺を見つめた。いつもの、キスをする距離間。いつもは練牙くんが瞼を閉じて俺がキスをするけれど、ベッドに横になっている俺は動けないから、いつも練牙くんがするようにゆっくりと瞼を閉じた。