彼の趣味とは思えない無骨な指輪に飾られた手が黒豹を模した悪魔の頭を撫でる。撫でられた悪魔──シャドウは心地好さそうに目を細めて喉を鳴らすと、満足したのかソファに座るVの隣でその大きな身体を丸めた。
「…良いよなぁ」
デスクでピザを頬張る事務所の主が本音を溢す。思わず羨望の声が出てしまったのは多分、猛禽類を模した悪魔がいないからだろう。いれば即座にダンテの呟きを茶化したと思われる、お喋りな悪魔──グリフォンはその喧しさが読書の邪魔と見なされたのか、数十分前から刺青と化したまま沈黙を保っていた。
声に反応したVは目線を詩集からダンテへと向けた。問うようなVの視線に、ダンテは指に付いたピザの油分を舐めとりながら続ける。
「いや、ちょっとばかり羨ましくてな」
箱から新たなピザを一切れ取り出すと、ダンテは猫のように丸まっているシャドウを見つめた。
以前ダンテが先程のVと同じように頭を撫でると、黒豹を模した悪魔は尻尾を鋭く尖らせ容赦なくダンテに突き刺した。偶々機嫌が悪かったのだと思っていたが、その後も撫でては刺されるの繰り返しだった。しかし、主人であるVは当然刺されることなど無い。それどころか甘えるような動作さえ見せているのが、ダンテには羨ましかった。
詩集を閉じるとVはおもむろに立ち上がる。それと同時にシャドウの身体は融けて刺青に戻っていった。訝しげな表情を浮かべるダンテの前まで歩み寄ると、Vは無精髭に覆われたダンテの下顎を撫でる。
「…おい、V?」
まるで猫か何かにするようなVの行動にダンテは首を傾げた。目の前の男は何か勘違いしているのではないか。そんな予測はVの言葉で確信に変わる。
「羨ましかったのだろう?」
シャドウが、と付け加えられた一言にダンテは一瞬言葉を失う。力加減に気を配りながら、未だに自身を撫でる手を叩き落としてVの表情を窺うと、確信犯めいた笑みが浮かんでいた。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.