2019-06-08 13:08:12
2195文字
Public DMC
 

バジダン+Vダン

※5Dの手当てをする話。5VとVが共存しています。何でも許せる人向け。

事務所内に電話の呼び出し音が喧しく鳴り響く。普段その受話器を取る事務所の主は兄と共に合言葉付きの依頼に出掛けている真っ最中だ。一人、留守番を任されているVはソファから気怠げに立ち上がると、銀の杖のグリップを器用に受話器に引っ掛けて手に取った。
devil may cry」
「止血剤を用意しろ」
また合言葉付きの電話なら自分一人で赴くつもりだったが、合言葉どころか便利屋としての依頼ですらなかった。聞き慣れた自分だが自分ではない男の声に、Vが分かったとだけ告げると直ぐに電話は切られた。
依頼場所で怪我人でも出たかと一瞬思ったが、今回の依頼場所は街中だ。最寄りの病院にでも連れていく方が早いだろう。しかしバージルはわざわざ連絡を寄越し、自分たちには無用である筈の止血剤を求めてきた。
まさか、と自分にとって最悪の考えに辿り着いたVはシャドウを召喚すると、日が落ちて怪しく賑わい始めたスラム街を滑走する。事務所を出る前に適当に紙幣を懐に入れてきたが、足りなければ見知らぬ人間から奪い取る気でいた。人間に無償の愛を向ける弟は嫌がるだろうが、それは彼に知られなければ良いことだと思いながらVはスピードを上げた。

常に精錬された立ち振舞いをするバージルが扉を蹴り開ける。バージルの両腕には力無く横抱きにされているダンテの姿があった。腹部に残る真横に切り裂かれた傷が、群青色のシャツを血で赤黒く染めている。既に事務所に戻っていたVは痛々しいダンテの姿を一瞥すると顔をしかめた。バージルは何も言わずにダンテの部屋に足を進める。今は何を優先すべきか分かっているVは事情を聞かずにバージルの後に続いた。
バージルがダンテをベッドに横たえると、Vは調達した止血剤入りの包帯の封を開けてダンテのシャツを捲る。
酷いな」
露になった傷口見てVは思わず愚痴をこぼした。破れているとはいえ衣類の上からではよく分からなかったが、傷は左脇腹から右脇腹まで続いている。ダンテは未だに意識が戻っていないが、その顔には汗が滲んでいた。
バージルはダンテの背に腕を差し入れると、Vが包帯を巻きやすいように少しだけダンテの上半身を起こし、ベッドとの間に隙間を作る。
魔力を吸い取る輩がいてな」
正面からの方が巻きやすいのかベッドに上がり手当てを始めたVに、バージルが事の顛末を話し始める。
大体はVの予想通りだった。吸魔の悪魔は戦闘力こそ大したことは無かったが、魔力が枯渇したことによりダンテの治癒能力は著しく低下し、そこを他の悪魔に狙われたという訳だ。
今では冷静に話しているバージルだが、腹を切り裂かれ倒れこんだダンテを目にした時は動揺を隠しきれなかった。気付けば雑魚相手に必要ないと温存していた悪魔の引き金を引き、人ならざる姿に変貌していた。手始めにダンテを切りつけた悪魔の脳天を潰し、腸を引き摺り出した。ダンテの小さな呻き声が聴こえなければ、そのまま我を忘れて無益に暴れ狂っていただろう。
自身が暴走したことは伏せ、話し終えたバージルは未だにダンテに包帯を巻き付けるVに目を向けた。お世辞にも丁寧とは言えない拙い手当てにバージルは奥歯を噛み締める。何を言っても、全ては高い自然治癒力を有していたことに甘えていた自分に返ってくると思ったからだ。
下手くそ」
Vは顔を上げた。呟かれた言葉の内容ではなく声の主に驚いたからだった。
「ダンテ
Vと目が合ったダンテは二人を安心させる為かいつものように余裕そうな笑みを見せる。まだ間隔の短い呼吸を繰り返していたが、差し当たり意識が戻ったことにVは安堵の表情を浮かべた。バージルも同じような表情をしていたが、弟に見られたく無いのか顔を背けてため息を溢す。
ダンテは背をバージルに支えられたまま、視線だけで辺りを見回した。ここが自分の部屋であることを確認すると、悪魔相手に遅れをとってしまった自分をここまで連れてきてくれた兄に皮肉を言う。
「置き去りにされなくて良かったぜ」
「黙れ。傷に障るぞ」
暗にダンテの身体を気遣っているのだと分かったVは相変わらず素直じゃない、と呆れたように息を吐いた。大人しく黙ると思われたダンテは何かを思い出したらしく再び口を開く。
「それで、今回は何ヵ月寝てた?」
「数時間程度だ。安心しろ、眠り姫」
Vの眠り姫という言葉に、ダンテはわざとらしく嘔吐する真似をした。
漸く包帯を巻き終えたVは包帯の端と端をきつく結び、ベッドから身を退かす。それを見届けたバージルはゆっくりとダンテの頭をベッドに倒していった。治療が終わったのだから当然のことなのだが、離れていく二人にダンテは首だけを動かして視線を向けた。
「少し眠れ」
止血剤により血液は凝固し始めているため、一先ず命に別状はない筈だ。適切な休息をとれば魔力も回復し、傷痕も癒えるだろうとバージルは弟に眠るよう促した。夜更かしをしていた幼少期のようにまだ眠くない、と強がることもなくダンテは目を閉じた。やがて先程よりも穏やかな寝息が聞こえてくる。Vは近くにあった椅子を引き寄せて腰掛けると、何をするでもなくダンテの寝顔を見つめていた。
コイツが起きるまでここにいるつもりか?」
「それはお前もだろう?」
鼻で笑いつつもバージルは倒れていた椅子を蹴り起こしてそこに座った。